やりきれない
ボク達が帰ってきたお祝いのご飯でお腹がいっぱいになって……。
「はわぁ、こうやってアタシの部屋で寝るの、久しぶりだねぇ」
「……うん、そうだね」
今、ボクたちは一つのベッドで寝ている。
「「──今日の午前中のこと……」」
「はわっ、被っちゃった!」
「ふふ、それじゃあボクから先に言わせてくれる? ……ごめんね、ボク、ナナナの気持ちを考えてなかった。ナナナだってちゃんと勝負したいよね」
「アタシも、子どもみたいに怒っちゃってごめんね。ベルハちゃんのこと、嫌いじゃないよ。大好き……でもね、アタシはベルハちゃんと競い合う、隣で並べるような関係でいたかったから」
「ナナナ……」
隣で、並べるような……。
けれど、ボク自身がソレを許せない。
「……ねぇ、ベルハちゃん。アタシはね、友達として好き、じゃなくてもいいよ?」
ナナナがやけに艶やかな表情で微笑む。
「え……そ、それって、どういう」
「……脈アリってこと!」
そう言って、ナナナはボクの腕を掴んで、手首にキスをした。
諸説あるけれど手首へのキスの意味は相手への強い好意を……。
……って。え? え? なになになに!? これって夢?
ああ、そうだ。そうに違いない。ボクたちはとっくに寝ていて、これはボクが見ている都合の良い夢……。
「……痛いっ!」
「……ベルハちゃん?」
自分の頬を摘まんでみたけれど、しっかり痛い。これは……夢じゃないっ!?
「や、はは……あまりにもボクに都合が良すぎて、夢かと思って」
「あははっ、夢じゃないよぉー? ……ね、返事、ほしいなぁ」
そう言ってナナナは目を閉じる。
これは……任意の箇所にキスをしろってこと?
「ぁ……」
でも、ごめん、ナナナ。ボクは。ボクは──
「あああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!」
村中に響く誰かの叫び声。
誰だよこんなときにっ!!
「行こうっ! ベルハちゃん!」
先ほどとは打って変わってキリッとした表情でボクの手を掴むナナナ。
「……うんっ!」
ボクたちは立ち上がって外に出た。
するともう人だかりが出来ており……その場所はゲストハウスだった。
「アルマ隊長に何か!?」
「はわっ!? どいてくださーいっ!」
村人を掻き分けて進んでいくと、やっと何が起こっているのかわかったと同時に目を疑った。
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
顔と両肩が見える鎧を纏ったレオナマインおばさんがアルマ隊長を何度も何度も剣で斬りつけていたのだ。
一方で斬られている隊長は直立不動のままで。その肌には傷一つない。
「貴女がああぁぁぁぁぁ! ヒイロを殺したのよッ! 返してッ! 私の娘を返してよおおぉぉぉッ!」
「返す言葉もありません。ですが、退団者の鎧の着装と剣の装備は原則禁ぜられています。現在は特例の要件を満たしていないため早急に武装の解除を」
「うるさいッ! うるさぁぁぁぁぁぁぁいッ!」
──パァンッ!
音と共に強い衝撃が走る。
これは、パージ……!
訓練生でも岩をも砕く力、新兵と普通の剣であってもドラゴンの頭をかち割ることが出来るほどの力。
……それでも、振り下ろした剣でアルマ隊長が傷つくことはなかった。
「なに、よ……そんなに強いのに、どうして、護れなかったのよッ! どうしてえええええええええええええぇぇぇえええッッ!!」
「……強くなんて、ないからです」
「うっ、うううぅぅうぅぅうぅぅぅぅっ! ヒイロ! ヒイロおぉぉぉ……っ!」
泣き崩れるレオナマインおばさんをただただ見つめるアルマ隊長。
「……申し訳ありません」
ボクたちは、ただ、その光景を眺めることしかできなかった。
「ビキニアーマーじゃなかったら心が揺らいで傷を負っていただろうなぁ」
「……ラミルちゃん」
「何があっても揺るがない心……正直、思うところはあるぜ。こんなとき、傷の一つでもつけてやれりゃ、少しは気分も晴れるのかもしれねぇ」
「……それは、どうだろうね」
アルマ隊長を傷つけたところで何かが変わる訳でもない。もしこの状況で彼女の心が揺らいでたとしても……。
……アルマ隊長本人は、どう思ってるんだろうな。心が揺らがないことについて。
「……ねえ、ナナナ。さっきの返事、保留でいいかな?」
「……うん、こんな状況だもんね。アタシ、待ってるよ」
ボクはボクで、保留なんて、煮え切らない返事をしてしまうし。
……なんだか、やりきれないなぁ。




