気まずい
……翌日の午前。
監視の目がある中で普段通りに過ごせるかー! なんて思ったけれど、普通に第一隊のお二方とトランプ遊びをしている。
「くっ、また負けたぁっ!」
「いつもナナナから先に抜けるなぁ」
「へへー、ナナナとはずっとババ抜きをやってましたからねー。勝たせるくらい余裕ですよー」
「はわぁ、そんなことしなくても大丈夫だってベルハちゃーん!」
ナナナの表情はブラフ込みで完全に読める。これはジョーカーを持ってる顔だなとか、今は持ってないなとか、ジョーカーはこれだな、とか。
ナナナがジョーカーを持ってるときはボクがわざとに引いて次の人に渡さないようにする。
それだけでナナナは確実に最下位にはならない……今回は運良くナナナが一抜けしまくってる。
「あーっ、ずるいっ! 順番入れ替えよっ!」
「そしたらナナナが抜けるまでボクがずーっとジョーカーを持ってますけどー」
「過保護だなっ!?」
「もはやベルハちゃんからジョーカーを取るゲームになってないソレ!?」
「はわぁ、だからそんなことしなくても大丈夫だってー! アタシはベルハちゃんにも一抜けしてほしいよぉ!」
ナナナからすれば全力で楽しめないかもしれないが、それでもボクは『ナナナに負けてほしくない』。
本当なら訓練生時代の成績でナナナが三位なのも納得いってないくらいだ。
ナナナはボクにとっての光で、だからこそボクの上で輝いててほしいから。
「……ねっ、二人って付き合ってるのー?」
「はわっ!?」
「ああ、私も気になっていたところだ。ベルハはナナナのことを好いているようだからな」
「あ、あははー。たしかにボクはナナナの事が好きですよー? でも、ソレは友達としての好きでー……ねー、ナナナー?」
「…………」
苦笑いを浮かべてナナナの方を向くけれど、その表情はムッとしていて。
「おっ、友達として好きって言葉にこの反応……脈アリなんじゃないっ!? ねっ」
「ああ、そうだな」
向き合って笑い合う第一隊員ズ。
いや、だって、ナナナは鎧と筋肉のことが好きで。
ボクは鍛えてもあまり筋肉がつかなくて、鎧だって、食いつきがそんなに良くなくて……。
……え、もしかしてナナナはボクとそういう関係になりたくて?
「……無理やり勝たせようとしてくるベルハちゃんは嫌いっ!!」
あっ、違うや! さっきのを根に持ってるだけだコレ!
わー! 勘違いしてしまったのが恥ずかしいやっ!!
……なんて考えてる場合じゃないっ!!
「ごめんってナナナー! 機嫌を直してよーっ! 次からはちゃんとやるからさー!」
「……ふんだっ、ホントかなー?」
プイッとそっぽを向くナナナ。
「……あーし達、余計なことを言っちゃったかなー?」
「ああ、申し訳ないな……だが、これからの勝負をベルハが全力ですれば機嫌を直してくれるだろう」
申し訳なさそうな顔をする第一隊員ズ。ちなみに二人は恋人同士らしい……くっそー。
まあ、気を取り直して、ボクも全力で勝負を……。
「……お取込み中のところ申し訳ありませんが、お二人を迎えに来ました」
「おわっ、アルマセイカ隊長!」
「お疲れ様です!」
「はわっ! お疲れ様です!」
「お疲れ様です!……思ってたよりも早かったですねー?」
「ええ、喜ばしい事かは定かではありませんが……二人とも、準備はできていますか?」
四人でビシッと敬礼……アルマ隊長、少しだけ不機嫌? やっぱり謝罪先で何か言われたのかな?
「はわっ、バッチリですよぅ!」
「いつでも行けます!」
「よろしい。では、出発します」
ボクたちは第一隊員ズに敬礼をして、アルマ隊長を追う。
「……待機中でもトレーニングに励んでいてほしいというのは古い考えなのでしょうか」
扉を閉めると、アルマ隊長がポツリとそんなことを呟いた。
……あっ、少し不機嫌だった理由これか! ボク達がトランプで遊んでいたからだ!
「はわっ、ごめんなさいっ!」
「申し訳ありません。今も勤務時間中ですもんね」
「……いえ。ですが、二十四時間騎士であることは忘れないでいただきたいところです」
……出たー! 三カ月の訓練中に耳が腐るほどに聞いた言葉だー!!
二十四時間騎士たる自覚……言ってることはわからないでもないけど、少し息苦しい。
「はわ……そうですよね、ごめんなさい」
ただ、ナナナの心には響いているようで。
うんうん、やっぱりアンタ、騎士に向いてるよー。
「落ち込ませたいわけではないのですが……すみません、心の中に納めておくべきでした」
「いやいやー、言ってくれる方がありがたいですよー」
「皆が皆そう思ってくれていればいいのですが……後輩育成というのは難しいものです」
フォローの言葉を述べてみるが重苦しい雰囲気は変わらない。
ナナナとも今ちょっと気まずい感じだし……
ああ、もう! どうしてこうなったー!?




