表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/152

第八十七話「妻たちの絆」

 

―クロエ視点―


 女子会が終わった翌日、ボクたちはエリカさんが提案してくれたサプライズの具体的な計画を立てることになりました。


 三人でタクヤくんを喜ばせるための作戦会議です。

 ルナさんの家の居間で、ボクたち三人が膝を突き合わせて座っています。


「それで、具体的にはどんなサプライズにしようか」


 エリカさんが提案します。


「何か形に残るものがいいわよね」

「そうですね」


 ルナさんが頷きます。


「タクヤさんの喜ぶ顔が見たいです」


 ボクは緊張しながら、でも嬉しい気持ちでいっぱいでした。

 エリカさんとルナさんと一緒に、タクヤくんのためにサプライズを考えるなんて。


 ボクみたいなインキャ底辺ゴミ女でも、こんな素敵な体験ができるなんて。

 夢みたい。


 でも、同時に不安もありました。

 ボク、本当に役に立てるかな。

 二人の足を引っ張らないかな。

 失敗して、嫌われたりしないかな。


 アホ毛が不安そうに揺れているのを自分でも感じます。


「あの、それでは」


 ボクが恐る恐る提案します。

 声が小さすぎて、二人に聞こえていないかもしれません。


「ん?クロエちゃん、何か言った?」


 エリカさんが優しく聞いてくれます。


「あ、あの、その」


 ボクが慌てて言い直します。


「プレゼントを渡すというのはどうでしょうか」

「でも、もし変なアイデアだったらごめんなさい」

「やっぱり今のなしで」

「クロエちゃん」


 エリカさんがボクの手を取ります。


「そんなに謝らなくていいのよ」

「いいアイデアだと思うわ」

「本当ですか?」


 ボクが目を輝かせます。


「もちろんよ」


 エリカさんが微笑みます。


「私、タクヤに何かあげたかったのよ」

「イニシャルの入ったハンカチなんてどうかしら」

「素敵ですね」


 ルナさんも賛成してくれます。


「でも、それだけじゃ寂しいかもしれません」

「食事でも用意しましょうか」

「タクヤさんの好物を作って、胃袋を掴むんです」

「胃袋を掴むって」


 エリカさんが笑います。


「ルナちゃん、時々面白いこと言うのね」


 ルナさんが少し照れています。

 その様子がとても可愛くて、ボクも自然と笑顔になりました。


 この二人と一緒にいると、なんだか温かい気持ちになる。

 大学では、こんな風に笑い合える人なんていなかったのに。


「あの」


 ボクがさらに提案します。

 でも、また声が小さくなってしまいます。


「造形魔法で何か作ってみるのはどうでしょうか」

「ゴーレムのペットとか」

「でも、やっぱり変ですよね」

「そんな提案、迷惑ですよね」

「ごめんなさい、今のなしで」

「クロエちゃん」


 ルナさんが優しくボクを見つめます。


「謝るのをやめてください」

「あなたのアイデアは、とても素晴らしいです」

「本当に?」


 ボクが不安そうに聞きます。


「本当よ」


 エリカさんも強く頷きます。


「クロエちゃんの造形魔法、タクヤが自慢してたのよ」

「すごく上手だって」

「そ、そんなことないです」


 ボクが首を振ります。


「ボクの魔法なんて、たいしたことなくて」

「いつも失敗ばかりで」

「教授にも呆れられて」

「クロエさん」


 ルナさんが少し強い口調で言います。


「もっと自分を認めてあげてください」

「タクヤさんが認めているんですから」


「私たちも、あなたの才能を信じています」


 その言葉に、ボクの目が潤んできました。


「ありがとうございます」


 小さな声で言います。


「お二人とも、優しくて」

「ボクなんかに、こんなに」

「クロエちゃん」


 エリカさんがボクを抱きしめてくれます。


「『ボクなんか』って言うの、禁止」

「これから、私たちは家族なんだから」

「家族は、お互いを認め合うものよ」


 ボクは、エリカさんの温かさに包まれて、涙をこらえるのに必死でした。


「ペットの詳しい話を聞かせて」


 エリカさんが興味深そうに聞きます。


「どんなの?」

「小さな動物の形をしたゴーレムです」


 ボクが説明します。


「動き回って、タクヤくんと遊んでくれるような」

「手のひらサイズの小鳥さんを考えています」

「でも、うまく作れるか分からなくて」

「失敗したらどうしようって」

「夜も眠れないくらい不安で」

「大丈夫よ」


 エリカさんが励ましてくれます。


「クロエちゃんなら、きっと素敵なものが作れるわ」

「私たちが信じてるから」


「それは面白そうですね」


 ルナさんが感心してくれます。


「クロエさんの造形魔法なら、きっと素敵なものが作れますよ」

「私たちも、全力でサポートします」


 二人がボクのアイデアに興味を持ってくれて、とても嬉しかったです。

 ボクみたいな人間の提案でも、受け入れてもらえるなんて。


「それじゃあ、全部やりましょう」


 エリカさんが決断します。


「プレゼント、食事、ペット」

「三人で分担して準備するのよ」

「は、はい」


 ボクが緊張しながら答えます。


「でも、ボク、本当に役に立てるでしょうか」

「二人の邪魔になったりしないでしょうか」

「クロエちゃん」


 ルナさんがボクの両手を握ります。


「あなたがいてくれるから、このサプライズは特別なんです」

「三人だからこそ、意味があるんですよ」

「そうよ」


 エリカさんも続けます。


「クロエちゃんは、もう私たちの大切な仲間なんだから」


 ボクは、二人の温かさに触れて、決意を固めました。


 頑張ろう。

 二人のためにも、タクヤくんのためにも。

 ボクにできる精一杯を尽くそう。


 こうして、ボクたちの共同プロジェクトが始まりました。


 エリカさんは、タクヤくんのイニシャル「Ʈ」が刺繍されたハンカチを作ることになりました。

 彼女は手芸が得意で、美しい刺繍ができるんです。


 ルナさんは、タクヤくんの好物であるカイレーンという魔獣の魚の砂糖漬けを作ることになりました。

 甘くて美味しい、この世界の高級な料理です。


 そしてボクは、小鳥の形をしたゴーレムペットを作ることになりました。

 造形魔法で作る、生きているような小さな鳥さんです。


「準備期間は三日間よ」


 エリカさんが宣言します。


「それぞれ、最高の作品を作りましょう」


 ボクは、身が引き締まる思いでした。

 エリカさんとルナさんの期待に応えなければいけません。


 失敗したら、二人をがっかりさせてしまう。

 タクヤくんにも迷惑をかけてしまう。

 絶対に、成功させないと。


 不安と期待が入り混じった気持ちで、準備を始めました。




 ◇ ◇ ◇




 三日間、ボクは必死に小鳥のゴーレムを作りました。

 大学の研究室に泊まり込んで、ほとんど眠らずに取り組みました。


 タクヤくんにプレゼントした自分の銅像を作った時以上に、集中して取り組みました。

 小鳥の形を作るのは、人間の銅像よりも難しかったです。

 羽の一枚一枚、嘴の形、足の指の細部まで、すべてを精密に作り上げなければいけません。

 そして、ただの置物ではなく、動き回れるゴーレムにする必要があります。


 一日目、ボクは失敗しました。

 小鳥の体のバランスが悪くて、うまく立つことができません。


 ダメだ。

 やっぱりボクには無理なのかも。

 エリカさんとルナさんに迷惑をかけてしまう。


 涙がこぼれそうになりました。

 でも、そこでエリカさんからの伝言を思い出しました。


「私たちが信じてるから」


 そうだ。

 二人が信じてくれてるんだ。

 諦めちゃいけない。

 ボクは気持ちを立て直して、もう一度挑戦しました。


 二日目、少し形が整ってきました。

 でも、まだ動きがぎこちなくて、本物の鳥には見えません。


 もっと、もっと頑張らないと。

 タクヤくんを喜ばせるためには。

 ボクは夜通し作業を続けました。


 三日目、ついに完成の兆しが見えてきました。


「『土の精霊よ、我が意志に従い生命ある形を創造せよ。造形魔法: 変遷躍動』」


 ボクが魔法を込めながら詠唱します。

 小鳥の体に、微細な魔法回路を組み込んでいきます。

 これが、ゴーレムに生命のような動きを与える仕組みです。


 三日目の夕方、ついに完成しました。

 手のひらサイズの小さな鳥のゴーレムです。

 淡い茶色の体に、黒い目をした可愛らしい小鳥さん。


「動いて」


 ボクが願いを込めて呼びかけると、小鳥のゴーレムがぴょんぴょんと跳ね回り始めました。

 そして、小さく「ちゅんちゅん」と鳴きました。


「成功」


 ボクが小さくガッツポーズをします。

 アホ毛がぴょこぴょこと元気に跳ねているのを自分でも感じました。


 できた。

 ボク、できたんだ。

 エリカさんとルナさんに、報告しないと。

 でも、すぐに不安が押し寄せてきます。


 でも、これで本当に喜んでもらえるかな。

 もっと上手に作れたんじゃないかな。

 失敗作じゃないかな。


 ボクは完成した小鳥さんを見つめながら、期待と不安でドキドキしていました。




 ◇ ◇ ◇




 サプライズ当日の朝、ボクたちは最終的な打ち合わせをしました。


「準備はできた?」


 エリカさんが確認します。


「私のハンカチは完璧よ」


 エリカさんが見せてくれたハンカチは、本当に美しかったです。

 白い布に、金色の糸で「Ʈ」の文字が刺繍されています。

 とても上品で、タクヤくんにぴったりです。


「すごいです、エリカさん」


 ボクが感嘆の声を上げます。


「こんなに綺麗な刺繍、見たことないです」

「ありがとう、クロエちゃん」


 エリカさんが嬉しそうに微笑みます。


「でも、三日間ずっと刺繍してたから、指が痛いのよ」

「それでも、タクヤのためなら頑張れたわ」

「私のカイレーンの砂糖漬けも、うまくできました」


 ルナさんが自信を持って言います。

 甘い香りが部屋に漂っています。

 タクヤくんの好物を、愛情を込めて作ってくれたんです。


「美味しそうです」


 ボクが香りに引き寄せられます。


「ルナさん、料理上手なんですね」

「いえいえ」


 ルナさんが謙遜します。


「何度も失敗して、ようやくできたんです」

「でも、タクヤさんのためなら、何度でも挑戦できます」


 二人とも、タクヤくんのために全力で頑張ってくれたんだ。

 ボクも、負けられません。


「ボクの小鳥さんも、準備万端です」


 ボクが小さなゴーレムを見せます。

 でも、手が震えています。


「で、でも、これで本当に喜んでもらえるか分からなくて」

「もっと上手に作れたんじゃないかって」

「失敗作だったらどうしようって」


 小鳥はボクの手のひらの上で、小さくさえずっています。


「可愛い」


 エリカさんが感動してくれます。


「本物みたい」


 エリカさんが小鳥に触れようとすると、小鳥は少し逃げて、でもまた戻ってきました。

 まるで本物の鳥のような動きです。


「素晴らしい出来栄えですね」


 ルナさんも褒めてくれます。


「クロエさん、本当にすごいです」

「こんな精巧なゴーレム、見たことがありません」

「本当ですか?」


 ボクが不安そうに聞きます。


「本当に喜んでもらえますか?」

「もちろんよ」


 エリカさんが断言します。


「タクヤ、絶対喜ぶわ」

「クロエちゃんの作品、最高よ」

「そうです」


 ルナさんも続けます。


「私たち三人の力を合わせたプレゼント」

「きっと、タクヤさんを幸せにできます」


 二人に認めてもらえて、ボクは嬉しくてたまりませんでした。

 涙が出そうになるのを、必死にこらえます。


「ありがとうございます」


 ボクが小さく言います。


「お二人がいてくれて、本当に良かった」

「ボク、頑張れました」

「クロエちゃん」


 エリカさんがボクを抱きしめます。


「ボクたちも、クロエちゃんがいてくれて嬉しいわ」

「これから、ずっと仲良くしましょうね」

「はい」


 ボクが頷きます。


「ずっと、ずっと仲良くしたいです」


 ルナさんも、ボクたちの輪に加わってくれました。

 三人で抱き合って、温かい時間を過ごしました。


「それじゃあ、作戦開始よ」


 エリカさんが宣言します。

 まず、フェリス先生に頼んで、タクヤくんを村から離してもらいます。

 グロムさんの工房に用事があるという理由で、少し遠くまで行ってもらうんです。


 その間に、ボクたちは家の中を飾り付けて、サプライズの準備をします。


「フェリス先生、お疲れさまです」


 フェリス先生が戻ってきました。


「タクヤを連れ出したニャ」

「一時間くらいは時間があるニャン」


「ありがとうございます」


 ボクたちが感謝します。

 急いで、サプライズの準備を始めました。


「クロエちゃん、そのテーブルクロスを敷いて」


 エリカさんが指示してくれます。


「は、はい」


 ボクが慌ててテーブルクロスを手に取ります。

 でも、緊張して手が震えてしまいます。


「大丈夫、ゆっくりでいいから」


 ルナさんが優しく声をかけてくれます。


「私も手伝いますね」


 二人の助けを借りながら、少しずつ準備を進めていきます。

 テーブルにプレゼントを並べて、カイレーンの砂糖漬けを美しく盛り付けます。


 小鳥のゴーレムは、部屋の中を自由に飛び回らせます。

 まるで本物の鳥がいるみたいで、とても賑やかです。


「クロエちゃん、この飾りつけどう思う?」


 エリカさんが聞いてくれます。


「す、素敵です」


 ボクが答えます。


「でも、もう少しこっちに寄せた方が」

「おお、いいアイデアね」


 エリカさんがボクの提案を採用してくれます。


「クロエちゃん、センスあるわ」

「本当ですか?」


 ボクが嬉しそうに聞きます。


「もちろんよ」


 エリカさんが微笑みます。

 ボクたち三人で協力して、部屋はどんどん華やかになっていきます。


 楽しい。

 こんなに楽しいこと、初めてかもしれない。

 みんなで何かを作り上げるって、こんなに幸せなことなんだ。


「もうすぐタクヤが帰ってくるわ」


 エリカさんが窓から外を見ます。


「みんな、準備はいい?」

「はい」


 ボクとルナさんが答えます。

 でも、ボクの心臓はバクバクと鳴っています。


 ドキドキする。

 タクヤくん、喜んでくれるかな。

 ボクのプレゼント、気に入ってくれるかな。

 扉が開く音が聞こえました。


「ただいま」


 タクヤくんの声です。


「おかえりなさい」


 ボクたちが同時に答えます。

 タクヤくんが居間に入ってきて、サプライズの飾り付けを見て驚いています。


「これは?」

「サプライズよ」


 エリカさんが嬉しそうに言います。


「私たち三人で、タクヤのために準備したの」

「三人で?」


 タクヤくんが感動したような顔をします。


「まず、私からのプレゼント」


 エリカさんがハンカチを差し出します。


「タクヤのイニシャル入りよ」


「三日間かけて、丁寧に刺繍したの」

「ありがとう、エリカ」


 タクヤくんがハンカチを受け取って、大切そうに眺めます。


「すごく綺麗だ」

「大切にするよ」

「次は私からです」


 ルナさんがカイレーンの砂糖漬けを差し出します。


「タクヤさんの好物を作りました」

「何度も試作して、完璧な味に仕上げました」

「これは、美味しそうだ」


 タクヤくんが嬉しそうに言います。


「ルナの料理、いつも最高だよ」


 そして、ボクの番です。

 ボクは緊張で手が震えています。


「そして」


 ボクが小鳥のゴーレムを差し出そうとしますが、手が震えて落としそうになります。


「あ、あの」


 ボクが慌てます。


「ご、ごめんなさい」

「ボクからは、小鳥さんです」

「造形魔法で作ったペットです」

「で、でも、うまく作れたか分からなくて」

「失敗作かもしれなくて」

「気に入らなかったら、捨ててもらっても」


 小鳥がタクヤくんの手のひらに飛び移って、小さくさえずりました。

 タクヤくんの顔が、驚きと感動で輝きます。


「すごい」


 タクヤくんが驚きます。


「本物みたいだ」


 小鳥がタクヤくんの指に止まって、小さく鳴いています。

 まるで本物の鳥のように、首を傾げたり、羽を整えたりしています。


「クロエ、これは本当にすごいよ」


 タクヤくんがボクを見つめます。


「こんな精巧なゴーレム、見たことない」

「君の才能は、本物だ」


 その言葉に、ボクの目から涙がこぼれました。


「本当ですか?」


 ボクが震える声で聞きます。


「喜んでもらえましたか?」

「もちろんだ」


 タクヤくんがボクに近づいてきます。


「ありがとう、クロエ」

「君の作った小鳥、大切にするよ」

「ありがとう、みんな」


 タクヤくんがボクたち三人を見回します。


「君たちが協力してくれて、こんな素敵なサプライズを」

「本当に嬉しい」


 タクヤくんの目から、涙がこぼれ落ちました。

 ボクも、もらい泣きしそうになります。


 ボクみたいな人間でも、タクヤくんをこんなに喜ばせることができたなんて。

 エリカさんとルナさんと一緒だったから、できたんだ。


「私たちも嬉しいわ」


 エリカさんが言います。


「タクヤが喜んでくれて」

「これから、もっと仲良くなりましょうね」


 ルナさんも微笑みます。


「はい」


 ボクも答えます。


「ボクも、この家族の一員になれて幸せです」


 タクヤくんがボクたちを抱きしめてくれました。

 温かくて、安心できる抱擁でした。

 ボクは、本当の家族を見つけることができたんだと実感しました。


 エリカさんとルナさんの温もりも感じます。

 四人で抱き合って、幸せな時間を過ごしました。


「ボクたち、最高のチームね」


 エリカさんが言います。


「そうですね」


 ルナさんが同意します。


「これからも、三人で協力していきましょう」

「はい」


 ボクも強く頷きます。


「ボク、お二人と出会えて本当に良かったです」

「これからも、ずっと仲良くしてください」

「もちろんよ」


 エリカさんがボクの頭を撫でてくれます。


「私たち、もう家族なんだから」


 その言葉が、ボクの心に深く染み込みました。




 ◇ ◇ ◇




 その夜、ボクたちはお風呂に入ることになりました。

 エリカさん、ルナさん、ボク、そしてミミちゃんの四人です。


 この世界では、家族や親しい女性同士でお風呂に入るのは普通のことです。

 でも、ボクは緊張していました。


 他の人と一緒にお風呂に入る経験が、あまりないからです。

 大学の寮でも、いつも一人で入っていました。

 みんなと一緒に入るのが怖くて。


「クロエちゃん、遠慮しないで」


 エリカさんが優しく言ってくれます。


「私たち、これから家族なんだから」

「は、はい」


 ボクが小さく答えます。


 でも、服を脱ぐのはやっぱり恥ずかしいです。

 ボクは隅の方で、できるだけ目立たないように着替えました。

 背中を向けて、小さくなって。


「クロエちゃん、そんなに恥ずかしがらなくていいのよ」


 エリカさんが笑います。


「女同士なんだから」

「で、でも」


 ボクが小さく言います。


 そして、湯船に入ろうとした時。

 エリカさんの体を見て、ボクは驚きました。


 胸が、すごく大きいんです。

 妊娠の影響もあるのかもしれませんが、それにしても立派な体型です。

 スタイルも良くて、まさに理想的な女性の体。


 それに比べて、ボクはとても貧相です。

 胸なんて、ほとんど膨らんでいません。

 ガリガリで、女性らしいラインもありません。


 やっぱりボク、ダメだ。

 こんな体じゃ、女性として魅力がない。

 タクヤくん、本当にボクのこと愛してくれてるのかな。


 ボクは自分の体を見て、落ち込んでしまいました。


「ボク、体型がコンプレックスなんです」


 ボクが正直に言います。

 声が震えています。


「胸も小さくて、ガリガリで」

「女性らしくなくて」

「エリカさんみたいな体型に憧れます」


 すると、ルナさんが意外なことを言いました。


「私も同じ気持ちです」


 ルナさんが苦笑いします。


「見た目が10歳ですから、体型も子供のままで」

「エリカさんが羨ましいです」


 ルナさんも、ボクと同じように感じていたんですね。

 少し安心しました。


「あら、そんなこと気にしなくていいのに」


 エリカさんが照れたように言います。


「私だって、コンプレックスあるわよ」

「例えば、肌の色とか」

「もっと白くて透明感のある肌に憧れるの」

「ルナちゃんみたいな」

「私もですか?」


 ルナさんが驚きます。


「もちろんよ」


 エリカさんが言います。


「ルナちゃんの肌、すごく綺麗じゃない」

「エルフ特有の透明感があって」

「それに、クロエちゃんも」


 エリカさんがボクを見ます。


「華奢で可憐な雰囲気があって、すごく魅力的よ」

「本当ですか?」


 ボクが不安そうに聞きます。


「こんな貧相な体でも?」

「貧相なんかじゃないわ」


 エリカさんが強く言います。


「クロエちゃんは、守ってあげたくなるような可愛らしさがあるの」

「タクヤが惹かれるのも分かるわ」

「そうです」


 ルナさんも続けます。


「ボクたち、みんな違う魅力があるんです」

「それぞれの良さがあります」

「でも」


 ボクが小さく言います。


「タクヤくん、本当にボクのこと愛してくれてるんでしょうか」

「こんな体で」


「エリカさんやルナさんと比べて、ボクなんて」

「クロエちゃん」


 エリカさんがボクの肩を抱きます。


「タクヤは、見た目だけで人を愛する人じゃないわ」

「君の心を見てくれてるのよ」


「そうです」


 ルナさんもボクの手を握ります。


「タクヤさんは、とても純粋な方です」

「外見よりも、心を見てくださいます」

「だから、クロエさんを選んだんです」


 二人の言葉に、ボクの心が少し軽くなりました。

 でも、まだ不安は完全には消えません。


「あの、お二人に聞いてもいいですか」


 ボクが恐る恐る聞きます。


「タクヤくんと初めての時、どうでしたか?」

「緊張しませんでしたか?」


 エリカさんとルナさんが顔を見合わせて、少し照れています。


「そうね、私は緊張したわ」


 エリカさんが答えます。


「でも、タクヤが優しくリードしてくれたから」

「安心できたの」

「私も同じです」


 ルナさんが続けます。


「最初は不安でしたが、タクヤさんがボクのペースに合わせてくれました」

「クロエさんはどうでしたか?」

「ボクも、すごく緊張しました」


 ボクが正直に答えます。


「自分の体に自信がなくて」

「嫌われるんじゃないかって」

「でも、タクヤくんは優しくて」

「ボクのこと、綺麗だって言ってくれて」


 その記憶を思い出して、顔が赤くなります。


「タクヤって、本当に優しいのよね」


 エリカさんが微笑みます。


「ボクたち全員を、平等に愛してくれる」

「そうですね」


 ルナさんも同意します。


「だから、ボクたちも仲良くできるんです」


 ミミちゃんは、ボクたちの会話をよく理解していないようでした。


「お姉ちゃんたち、何の話?」


 ミミちゃんが無邪気に聞きます。


「大人の話よ」


 エリカさんが苦笑いします。


「ミミちゃんが大きくなったら、分かるわ」

「ふーん」


 ミミちゃんが不思議そうな顔をしています。

 その姿が可愛くて、ボクたちは笑いました。


「それにしても」


 エリカさんが湯船に浸かりながら言います。


「こうして三人でお風呂に入るのって、楽しいわね」

「そうですね」


 ルナさんが頷きます。


「女子会みたいで」

「女子会」


 ボクが小さく繰り返します。


「ボク、こういうの初めてです」

「大学でも、誰ともお風呂に入ったことなくて」

「いつも一人で」

「クロエちゃん」


 エリカさんが優しく言います。


「これから、いくらでも一緒に入れるわよ」

「私たち、家族なんだから」

「はい」


 ボクが嬉しそうに答えます。

 涙が出そうになるのを、必死にこらえます。


「ねえ、背中流し合いましょう」


 エリカさんが提案します。


「お互いに背中を流すの」

「いいですね」


 ルナさんが賛成します。


「それじゃあ、私がクロエさんの背中を流しますね」

「え、いいんですか?」


 ボクが驚きます。


「もちろんよ」


 ルナさんが優しく微笑みます。

 ルナさんの小さな手が、ボクの背中を優しく洗ってくれます。

 温かくて、心地よくて。


 幸せだな。

 こんなに温かい時間、初めてかもしれない。


「クロエちゃん、背中が華奢ですね」


 ルナさんが言います。


「でも、綺麗な背中です」

「本当ですか?」


 ボクが嬉しそうに聞きます。


「本当です」


 ルナさんが断言します。


「次は、私がエリカさんの背中を流しますね」

「ありがとう、ルナちゃん」


 エリカさんが嬉しそうに言います。

 ボクたちは順番に背中を流し合いました。

 お互いの体に触れることで、不思議な一体感が生まれました。


 ボクたち、本当に家族なんだ。

 こうして支え合って、助け合って。


「ねえ、今度は髪を洗い合いましょう」


 エリカさんがさらに提案します。


「髪を洗うのって、自分でやるより他人にやってもらった方が気持ちいいのよ」

「それはいいアイデアですね」


 ルナさんが賛成します。


「私、エリカさんの髪を洗いたいです」

「じゃあ、私はクロエちゃんの髪を洗うわ」


 エリカさんが言います。


「そして、クロエちゃんはルナちゃんの髪を洗いましょう」

「は、はい」


 ボクが緊張しながら答えます。


「でも、うまくできるか」

「大丈夫よ」


 エリカさんが励ましてくれます。

 エリカさんの手が、ボクの髪を優しく洗ってくれます。

 指の動きが心地よくて、思わずうっとりしてしまいます。


「クロエちゃん、髪が綺麗ね」


 エリカさんが言います。


「サラサラで」

「本当ですか?」


 ボクが嬉しそうに聞きます。


「ボク、髪に自信なくて」

「いつもぼさぼさで」

「そんなことないわよ」


 エリカさんが笑います。


「とても綺麗な髪よ」


 ボクも、ルナさんの髪を洗い始めました。

 ルナさんの髪は、本当に美しいです。

 エルフ特有の、絹のような手触り。


「ルナさん、髪が本当に綺麗です」


 ボクが感心して言います。


「ありがとうございます」


 ルナさんが嬉しそうに答えます。


「エルフの髪は、特別な手入れが必要なんです」

「でも、クロエさんの手つきが優しくて、気持ちいいです」

「本当ですか?」


 ボクが嬉しくなります。


「下手じゃないですか?」

「全然」


 ルナさんが微笑みます。


「とても上手です」


 ボクたち三人で、お互いの髪を洗い合いました。

 笑い声が絶えなくて、楽しい時間でした。

 体型のコンプレックスはありますが、こうして家族と一緒にお風呂に入れるのは幸せです。


 エリカさんとルナさんが、ボクを受け入れてくれている。

 それだけで、ボクはとても嬉しかったんです。




 ◇ ◇ ◇




 お風呂から上がった後、ボクたちは居間でゆっくりとお茶を飲みました。

 今日のサプライズの成功を、みんなで喜び合いました。


「また今度、何かサプライズをしましょう」


 エリカさんが提案します。


「そうですね」


 ルナさんも賛成します。


「次は、もっと大きなサプライズにしましょう」

「ボクも楽しかったです」


 ボクも答えます。


「お二人と一緒だと、何でもできる気がします」

「クロエちゃん」


 エリカさんがボクを見つめます。


「もっと自信を持って」

「あなたは、素晴らしい女性なんだから」

「そうです」


 ルナさんも続けます。


「私たちの大切な家族です」


 二人の言葉に、ボクの心が温かくなりました。


「ありがとうございます」


 ボクが小さく言います。


「お二人がいてくれて、本当に幸せです」

「これから、もっともっと仲良くなりましょう」

「もちろんよ」


 エリカさんが笑います。


「私たち、最高のチームなんだから」

「はい」


 ボクが強く頷きます。

 ボクみたいな人間でも、こんな素敵な体験ができるなんて。


 タクヤくんと出会えて、本当に良かったです。

 そして、エリカさんとルナさんに出会えて、本当に幸せです。

 この温かい家族の一員として、ボクも精一杯頑張っていこうと思いました。


 タクヤくんのために、そして家族みんなのために。

 ボクの新しい人生が、ここから始まるんです。


「ねえ、クロエちゃん」


 エリカさんが思い出したように言います。


「今度、三人で街に買い物に行きましょうよ」

「買い物、ですか?」


 ボクが興味を示します。


「そう」


 エリカさんが目を輝かせます。


「女三人で、服とか小物とか見て回るの」

「楽しそうですね」


 ルナさんも賛成します。


「ボク、あまり街に出たことがないので」

「じゃあ、決まりね」


 エリカさんが嬉しそうに言います。


「今度、三人で街に繰り出しましょう」

「は、はい」


 ボクが緊張しながら答えます。


「でも、ボク、人混みが苦手で」


「大丈夫よ」


 エリカさんがボクの手を握ります。


「ボクたちが一緒だから」

「そうです」


 ルナさんもボクの手を握ります。


「三人で一緒なら、怖くありません」


 二人の手の温かさを感じて、ボクは勇気が湧いてきました。


「はい」


 ボクが笑顔で答えます。


「三人で、行きましょう」


 ボクたちは、未来の計画を楽しそうに話し合いました。


 三人での買い物。

 三人での料理。

 三人での子育て。

 たくさんの夢が、ボクたちの前に広がっていました。


「ボクたち、最高の家族になれるわね」


 エリカさんが幸せそうに言います。


「そうですね」


 ルナさんが微笑みます。


「タクヤさんも、きっと喜んでくれます」

「はい」


 ボクも答えます。


「みんなで、タクヤくんを支えていきましょう」

「そして、お互いも支え合っていきましょう」


 三人で手を重ねました。

 温かい手の温もりが、ボクの心に染み込んできます。


 ボク、もう一人じゃない。

 大切な仲間がいる。

 家族がいる。

 その実感が、ボクの心を満たしていきました。


 夜も更けて、ボクたちはそれぞれの部屋に戻ることになりました。


「おやすみなさい、クロエちゃん」


 エリカさんが言います。


「おやすみなさい、クロエさん」


 ルナさんも続けます。


「おやすみなさい」


 ボクも答えます。


「今日は、本当にありがとうございました」

「楽しかったわ」


 エリカさんが微笑みます。


「また明日ね」

「はい」


 ボクが笑顔で答えます。

 部屋に戻って、ベッドに横になりました。


 今日一日のことを思い返します。

 サプライズの成功。

 タクヤくんの喜んでくれた顔。

 エリカさんとルナさんとの楽しい時間。

 お風呂での絆。


 すべてが、夢のようでした。


 ボク、本当に幸せだ。

 こんな日が来るなんて、思ってもみなかった。

 窓の外を見ると、星空が広がっていました。


 綺麗な星空。

 希望に満ちた未来を象徴しているような。

 これから、もっと素敵な日々が待っている。

 エリカさん、ルナさん、タクヤくん。

 みんなと一緒に、幸せな家族を作っていこう。


 ボクは、そう決意して目を閉じました。

 温かい気持ちに包まれて、深い眠りに落ちていきました。

 

 明日からも、この幸せな日々が続いていくことを願いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ