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第六話「血のメッセージ」

 木曜日投稿できなかった分、今日2本投稿させてもらいます!

 よければ評価お願いします!


「危険囚…じゃなかった、ユキナの目撃情報があったのは、王都南部のダークフォレストです」


 王宮の騎士が地図を広げて説明する。


「この森は魔物の巣窟として有名で、普通の人は近づきません。しかし昨夜、森の入り口付近で美しい女性を見かけたという商人の証言があります」


 俺の背筋に冷たいものが走る。

 雪菜がそんな危険な場所にいるなんて…


「ダークフォレストですが…確かに危険な場所ですね」


 エリカが心配そうに呟く。


「君たちに無理強いはしない。他の騎士団にも探索を依頼している」


 騎士が気を遣ってくれるが、既に国王に約束してしまった以上、引き下がれない。


「やります」


 俺は震える声で答える。


「本当ですか? ありがとうございます」

「でも、タクヤの瞬間移動があれば、すぐ森に着けるし、危険があればすぐに逃げられるわ」


 エリカが前向きに考えてくれる。


「それは…そうですね」


 確かに瞬間移動があれば、緊急時には逃げられるだろう。


「準備ができ次第、出発しましょう」




◇◇◇




 王宮を出て、宿で装備を整える。

 エリカは剣と盾、俺は…特に武器を持たない。戦闘になったら瞬間移動で逃げるつもりだ。


「あ、そうそう。これも持っていきましょう」


 エリカが小さなランプを取り出す。


「ダークフォレストは昼でも暗いって聞いたことがあるの。これがあれば大丈夫」

「そうですね」


 準備が整い、俺たちは王都の外へ向かった。

 街の南門から見えるダークフォレストは、確かに不気味だった。

 まるで黒い霧が森全体を覆っているようで、内部は全く見えない。


「本当に真っ暗ね…」


 エリカも緊張している。


「瞬間移動で森の入り口に移動するよ」

「うん。お願いします」


 俺はエリカの手を取り、森の入り口に向かって瞬間移動した。

 次の瞬間、俺たちは完全な暗闇の中にいた。


「わあ…本当に何も見えない」


 エリカが驚く。

 確かに何も見えない。手のひらを顔の前に持ってきても、全く見えないほどの暗さだった。


「ランプをつけましょう」


 エリカがランプに光を灯す。

 暖かい光が辺りを照らしだすと、ようやく周囲の様子がわかった。


 巨大な木々が空を覆い、わずかな隙間からも光が差し込んでいない。

 まさに山の森だった。


「君が悪いわね…でも、ユキナさんがここにいるなら、助けてあげないと」


 エリカの善良さが身に染みる。

 もし彼女が雪菜の正体を知ったら、どんな反応をするだろうか。


「とりあえず、奥の方に進んでみよう」


 俺たちは慎重に森の中を歩く。

 ランプの光が届く範囲は狭く、少し先は闇に包まれている。

 足元には枯れ葉が積もり、歩くたびにサクサクと音がする。

 時々、遠くから不気味な鳴き声が聞こえてきた。


「魔獣の声かしら…」

「かもしれませんね」


 俺たちは警戒しながら奥へと進む。

 しばらく歩くと、何か変な匂いがしてきた。


「何この匂い…」


 エリカが鼻をつまむ。

 鉄の匂い。血生臭い匂いだった。


「血の匂いですね…」

「血? まさか、ユキナさんが怪我を…?」


 エリカが心配そうに言う。

 匂いはどんどん強くなる。俺の心臓が激しくなり始めた。

 嫌な予感がする。


「エリカ、ここで待ってて」

「え? でも…」

「危険かもしれない。俺が先に確認してくる」

「わかったわ。でも、気をつけて」


 俺は一人で匂いの元へと向かった。

 ランプの光が何か大きな物体を照らし出す。

 それを見た瞬間、俺は言葉を失った。

 そこには、魔族の死体が横たわっていた。


 しかも、ただの魔族ではない。立派な鎧を身に着け、大きな剣を持っている。

 幹部クラスの魔族だ。

 だが、その死体はひどい状態だった。


 身体中に無数の切り傷があり、血まみれになっている。

 まるで、何かに滅多刺しされたような状態だった。


「うわあ…」

 

 俺は思わず後ずさりする。


「タクヤ! 大丈夫?」


 エリカが心配して駆け寄ってくる。


「あ、来ちゃダメだ!」


 でも、エリカは既に死体を見てしまっていた。


「きゃあ! 魔族!」


 エリカが剣を構える。


「大丈夫、もう死んでいます」

「死んでる…? 誰がやったの?」


 エリカが辺りを見回す。


「まさか…タクヤがやったの?」

「え? 俺が?」

「だって、ここにいるのは私たちだけだし…」


 エリカが感心したような眼差しで俺を見る。


「すごいじゃない! 魔王軍の幹部を倒すなんて! やっぱりタクヤは本物の勇者ね!」

「い、いや、俺じゃ…」

 

 その時、俺は木の幹に何か書かれているに気づいた。

 ランプの光を向けると、そこには血文字のメッセージが刻まれていた。


『愛しています 拓也くん♡』


 俺の血液が凍りついた。

 間違いない。雪菜の仕業だ。

 彼女がこの魔族を殺し、俺に向けたメッセージを残したのだ。


「タクヤ? 木に何か書いて…きゃあ!」


 エリカも血文字に気づく。


「な、何これ…愛しています拓也くんって…」


 エリカが困惑している。


「タクヤ、これ書いたの?」

「ち、違います! 俺じゃありません!」

「じゃあ、誰が…?」


 その時、森の奥から不気味な笑い声が聞こえてきた。


「ふふふ♡ 拓也くん、見つけてくれたんですね♡」


 俺の全身が震え上がる。

 間違いなく雪菜の声だ。


「タクヤ、今の声…」

「今すぐここから逃げよう!」


 俺は慌ててエリカの手を掴む。

 でも、瞬間移動する時に魔族の死体も運ばなければならない。

 証拠として王都に持ち帰る必要がある。


「エリカ、死体に触って!」

「え? でも…」

「お願い! 今すぐ!」


 エリカが恐る恐る魔族の死体に触れる。

 俺も死体とエリカの両方に触れ、王都に向かって瞬間移動した。

 

 三人同時の瞬間移動。

 今まで経験したことない負荷が俺の体を襲う。

 王宮の庭に到着した瞬間、俺の意識は闇に包まれた。




◇◇◇




 気がつくと、王宮の医務室のベッドで寝かされていた。


「あ、気がついたのね!」


 エリカが心配そうに俺の顔を覗き込む。


「ここは…?」

「王宮の医務室よ。タクヤが倒れちゃったから、お医者様に診てもらってたの」

「魔族の死体は…?」

「騎士の方々が調べてくださってるわ。あの魔族、かなり高位の幹部だったみたい」


 エリカが説明してくれる。


「それで、またタクヤの手柄になったのよ。二体目の魔王軍幹部討伐だって、みんな驚いてるわ」


 また手柄扱いされている。


「でも…あの血文字は何だったのかしら」


 エリカが首を傾げる。


「あれは…」

「まさか、タクヤに恋人がいるの? しかも、魔族を倒してくれる強い人」


 恋人…確かに雪菜は俺の従姉だが、恋人ではない。

 一方的に愛されているだけだ。


「複雑な事情があるんです」

「そうなの…」


 エリカが少し寂しそうな表情をする。

 その時、医務室の扉がノックされた。


「タクヤ様、国王陛下がお呼びです」


 使者がやってきた。


「もう体は大丈夫ですか?」

「はい、なんとか」

「それでは、謁見の間にお越しください」


 俺は重い足取りで立ち上がった。

 また国王に会って、また褒められて、また新しい任務を与えられるのだろう。


 そして、雪菜はまだ森のどこかにいる。

 今度こそ本格的に俺を探しにくるかもしれない。

 

 絶望的な気分で、俺は謁見の間に向かった。

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