第二十四話「あなたの子供が欲しいんです♡」
この話過激すぎる気がしますが、頑張ってR15内に抑えたつもりです。
雪菜のヤンデレさがうまく伝わって欲しいです。
その夜、俺は一人で宿を抜け出した。
エリカは部屋で泣き続けていて、俺の存在にも気づいていない。
いや、気づいていても、今の彼女には俺と話をする余裕などないだろう。
俺はひとり村の外れに向かい、月明かりの下で考えていた。
ポケットの中にある雪菜の髪の毛が、俺の罪悪感を重くする。
エリカの両親が死んだのは、間違いなく俺のせいだ。
雪菜が俺を追っているから、無関係な人々が巻き込まれている。
そして、これからもきっと犠牲者は増え続けるだろう。
ルナやグロム、そしてエリカまでもが危険にさらされる。
「もう…終わりにしなければ」
俺は決心した。
雪菜と直接対決する。逃げ回るのはもうやめだ。
決着をつけて、全てを終わらせよう。
俺は宿に戻り、こっそりと荷物をまとめた。
瞬刃と最低限の装備だけを持ち、メモを残す。
『エリカへ
君の両親の仇を取りに行く。
必ず帰ってくるから、それまで待っていてくれ。
君を愛している。
タクヤ』
短いメモだったが、今の俺にはこれが精一杯だった。
俺は瞬間移動で宿を出た。
向かう先は決まっている。
俺と雪菜がこの世界に転移した、あの森だ。
雪菜がどこにいるかはわからないが、きっとあの場所に何かの手がかりがあるはずだ。
◇◇◇
深夜の森は不気味な静寂に包まれていた。
俺は瞬間移動で、初めてこの世界に来た時の場所に到着した。
あの青白い石を蹴った場所だ。
でも、今はそこに石はない。代わりにあるのは…
「家?」
森の中に、突然現れたかのように小さな一軒家が建っていた。
可愛らしい作りの家で、窓には温かい明かりが灯っている。
まるで童話に出てきそうな、メルヘンチックな外観だった。
だが、俺にはすぐにわかった。
これは雪菜の家だ。
近づいてみると、玄関の表札に『雪菜♡拓也』と書かれている。
「勝手に俺の名前を…」
俺は恐る恐るドアに手をかけた。
鍵はかかっていない。
中に入ると、まず目に飛び込んできたのは壁一面に飾られた絵だった。
全て俺を描いた絵だ。
学校にいる時の俺、宿でくつろいでいる時の俺、戦闘中の俺…
あらゆるシーンの俺が、精密に描かれている。
「いつ…こんなに観察していたんだ?」
寒気がする。
リビングにも俺の食べかけだった腐ったパンや、俺の髪の毛らしきものが額に入れて飾られている。
さらに奥に進むと、俺の服(いつの間に盗んだのか)がマネキンに着せられて飾られていた。
「気持ち悪い…」
この家全体が俺への異常な愛情で埋め尽くされている。
その時、二階から足音が聞こえてきた。
トン、トン、トンと、軽やかな足音が階段を降りてくる。
「拓也くん♡ ついに来てくれたんですね♡」
階段から現れたのは、やはり雪菜だった。
以前と変わらない完璧な美貌。だが、その瞳には狂気の光が宿っている。
「雪菜…」
「ああ、拓也くん♡ 会いたかったです♡ とても、と〜っても会いたかったの♡」
雪菜が俺に向かって歩いてくる。
だが、その時俺は気づいた。
雪菜の体から発する威圧感が、以前とは比べ物にならないほど強烈になっている。
恐らく、俺が瞬間移動を使い続けたことで、彼女の力はさらに増大したのだろう。
「ねえ、拓也くん♡」
雪菜が俺の目の前まで来ると、突然服のボタンに手をかけた。
「え?」
「早く拓也くん寝よ♡ 私、もう待ちきれない♡」
雪菜が制服のブラウスを脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
俺は慌てて目を逸らす。
「何を恥ずかしがってるですか? 拓也くんと私の仲じゃない♡」
「俺たちの仲って何だよ!」
「決まっでしょう♡ 愛し合う恋人同士♡」
雪菜がさらに服を脱ごうとする。
俺は必死に理性を保とうとする。確かに雪菜は美しい。だが、その美貌の裏にある狂気を知っている俺には、欲情する余裕などない。
「やめろ! そんなことのために来たんじゃない!」
俺が強く制止すると、雪菜が少し不機嫌そうな表情を見せた。
「あら、つまらない♡ でも、拓也くんのシャイなところも可愛いね♡」
雪菜がブラウスを着直す。
「それより、なぜエリカの母親を殺した?」
俺が本題を切り出すと、雪菜が首を傾げた。
「エリカの母親? ああ、あの虫の子ですね」
虫の子…人を虫呼ばわりするのか。
「なぜ殺したんだ?」
「覚えてないですよ。虫なんて、どれも同じだもの」
雪菜があっけらかんと答える。
その無邪気さが、逆に恐ろしい。
「覚えてないって…人を殺しておいて?」
「だって、邪魔だったんですもの」
雪菜が当然のように言う。
「拓也くんの匂いを嗅いでいたら、変な虫が来たから消しちゃいました♡」
「消したって…」
俺の拳が震える。
「エリカが…エリカがどれだけ苦しんでいるか」
「エリカ? ああ、あの茶髪の虫ね」
雪菜の表情が一瞬で冷たくなる。
「あの子も邪魔ですよね。今度消しましょうか」
「させるか!」
俺が剣に手をかけると、雪菜が手を叩いて喜んだ。
「わあ♡ 拓也くんが私を守ろうとしてくれてます?♡」
「守る? 何を言って…」
「私以外の女の子なんて、どうでもいいって言ってくれるんですね♡」
完全に誤解している。
「違う! 俺はエリカを守るために…」
「それより、拓也くん♡」
雪菜が俺の言葉を遮る。
「私のお願い、聞いてもらえますか?♡」
「お願い?」
「私、拓也くんの子供が欲しいんです♡」
俺の思考が停止する。
「子供って…」
「そう♡ 拓也くんの子種をもらって、お腹に拓也くんの赤ちゃんを宿すんです♡」
雪菜が恍惚とした表情を浮かべる。
「そして、そのまま結婚して、ずっと一緒に暮らしちゃいます♡」
「無茶苦茶だ…」
「無茶苦茶なんかじゃないです♡ これは愛ですから♡」
雪菜が俺に向かって手を伸ばす。
「さあ、拓也くん♡ 今すぐ寝ましょう♡」
「待て!」
俺が後ずさりすると、雪菜が不満そうな顔をした。
「どうして逃げるんですか?♡ 拓也くんは私のことが嫌い?」
「嫌いとか好きとかの問題じゃない!」
「じゃあ、好きなんだあ♡」
雪菜の解釈力が異常だ。
「違う! 俺には…」
「言い訳はいらないよね♡」
雪菜が一歩近づく。
その瞬間、俺は彼女の圧倒的な力を感じ取った。
この世界に来る前の何千倍…いや、何万倍もの力を持っている。
もはや人間の域を超えている。
「さあ、拓也くん♡ 観念してください♡」
雪菜が再び服に手をかける。
「今度こそ、二人きりで愛し合いましょう♡」
「やめろおおおお!」
俺は咄嗟に瞬間移動を発動した。
目的地は決めていない。とにかく雪菜から離れたい一心で、全力で遠くに移動する。
気がつくと、俺は見知らぬ場所に立っていた。
辺りは草原で、遠くに見知らぬ街がある。
星の配置も、今まで見たことのないものだった。
「ここは…どこだ?」
俺がきょろきょろと辺りを見回していると、背後から声が聞こえた。
「あら♡ こんなところまで来ちゃったのね♡」
振り返ると、雪菜が立っていた。
もしかして、俺に触れられていた?
「まさか…追いかけてきたのか?」
「当然です♡ 拓也くんがどこに逃げても、私は追いかけますから♡」
雪菜がにっこりと笑う。
「でも、こんな辺境まで来るなんて♡ 二人きりになりたかったかな?♡」
「違う!」
「照れちゃって♡」
雪菜が俺に近づいてくる。
「それより、拓也くん。もう逃げるのはやめましょう?♡」
「やめるわけにはいかない」
「どうして?♡ 私たちは愛し合ってるじゃないの♡」
「俺は君を愛してない」
俺がはっきりと否定すると、雪菜の表情が一瞬凍った。
「…は?」
「俺は君を愛してない。君の行動は愛じゃない。ただの狂気だ」
雪菜の瞳から光が消える。
「狂気…拓也くんが…私のことを…狂気って…」
雪菜が小刻みに震え始める。
「でも、大丈夫♡」
突然、雪菜が元の笑顔に戻る。
「きっと拓也くんは混乱してるですよね♡ 私が優しくしてあげれば、きっとわかってくれます♡」
この切り替えの早さが一番怖い。
「そうよ♡ まずは拓也くんの子供を作りましょう♡ そうすれば、きっと私のことを愛してくれます♡」
「絶対にそんなことはさせない」
俺がブリンクを抜く。
「あら♡ 拓也くんが私に剣を向けるの?♡」
「必要なら戦う」
「素敵♡ 拓也くんの勇ましい姿、大好き♡」
雪菜が手を叩いて喜ぶ。
「でも、拓也くんが私に勝てると思う?♡」
雪菜が指をパチンと鳴らすと、俺の足元の地面が陥没した。
「うわあああ!」
俺は慌てて瞬間移動で回避する。
「すごい力だ…」
「これでも手加減してるのよ♡ 拓也くんを傷つけたくないもの♡」
雪菜の力は想像を絶していた。
「でも、逃げ回るなら少しお仕置きが必要ですね♡」
雪菜が俺に向かって歩いてくる。
その一歩一歩で、地面にヒビが入る。
「もう観念して♡ 私と一緒に幸せになりましょう♡」
「絶対に嫌だ!」
俺は再び瞬間移動で逃げようとする。
だが、その瞬間に気づいた。
この見知らぬ土地で、俺はどこに逃げればいいのか?
そもそも、ここがどこなのかもわからない。
「困ったわね♡ 拓也くんったら、素直じゃないんだから♡」
雪菜がため息をつく。
「でも大丈夫♡ 時間はたっぷりあるもの♡」
雪菜の瞳が異様に光る。
「今夜は逃がさないわよ♡」




