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第十四話「ルナとのダンジョン攻略」


 エリカの誕生日パーティーから三日後、ルナが興奮した様子で俺たちの部屋にやってきた。


「タクヤさん、エリカさん! すごい情報を手に入れました!」


 ルナが手に依頼書らしき紙を持っている。


「何かあったの?」


 エリカが首を傾げる。


「特別なダンジョン攻略イベントがあるんです」


 ルナが依頼書を広げる。


『特別依頼:古の賢者のダンジョン攻略

 参加条件:魔法使い(女性)と剣士(男性)のペアのみ

 報酬:金貨2000枚、レアアイテム多数

 期限:今週末まで』


「2000枚!?」


 俺の目が飛び出る。

 エリカへのプレゼントで全財産を使い果たした俺にとって、この報酬は非常に魅力的だった。


「でも、条件が…」


 エリカが困った顔をする。


「魔法使いの女性と剣士の男性のペア…」

「そうなんです」


 ルナが残念そうに言う。


「エリカさんは剣士ですが女性ですし、私は魔法使いですが…」

「つまり、俺とルナがペアになるしかないってことか」


 俺が状況を整理する。


「そういうことになりますね」


 ルナが頷く。でも、その表情はどこか嬉しそうだった。


「でも、タクヤは剣士じゃないでしょう?」


 エリカが指摘する。


「確かに戦闘は得意じゃないけど…一応剣は使えるし」

「ドラゴンを倒した実績もありますから、問題ないでしょう」


 ルナがフォローしてくれる。


「でも…」


 エリカが悔しそうな表情をする。


「私も行きたかったな」

「ごめん、エリカ。でも、この報酬は俺たちにとって必要だ」


 俺は申し訳ない気持ちで説明する。


「わかってるわ。でも、二人だけで行くなんて…」


 エリカが少し拗ねているようだった。

 その時、ルナが小さく、でも確実にガッツポーズをしているのを俺は見逃さなかった。

 まるで計画通りとでも言いたげな表情だった。


「それで、このダンジョンはどこにあるんだ?」

「王都から東に半日の距離にある『賢者の森』の中です」


 ルナが地図を指差す。


「半日か…でも、俺の瞬間移動があれば一瞬で着けるな」

「瞬間移動? タクヤさんにそんな能力が?」


 ルナが驚いた表情をする。


「ああ。手を繋げば一緒に移動できる」

「それは便利ですね」


 ルナの頬が微かに赤くなる。


「手を繋ぐんですね…」

「移動のためだから、変な意味はないぞ」

「わ、わかってます」


 ルナが慌てて答える。


「それじゃあ、明日の朝出発しましょう」

「ああ」


 こうして、俺とルナの二人きりでのダンジョン攻略が決まった。

 エリカは最後まで不満そうだったが、最終的には応援してくれることになった。




◇◇◇




 翌朝、俺たちは準備を整えて出発した。


「タクヤさん、お疲れ様でした」


 宿の外で待っていたルナが、いつもより華やかな装いで現れた。

 普段のシンプルなローブではなく、薄いピンク色の可愛らしい魔法使い服を着ている。


「その服、新しいのか?」

「は、はい…特別な日だから、おしゃれしてきました」


 ルナが恥ずかしそうに言う。


「似合ってるよ」

「ありがとうございます♪」


 ルナが嬉しそうに微笑む。


「それじゃあ、出発するか」


 俺はルナの手を取った。

 小さくて柔らかい手だ。エリカの手とは違う感触に、少し動揺する。


「準備はいいか?」

「はい」


 俺は地図で確認した賢者の森の入り口に向かって瞬間移動した。

 次の瞬間、俺たちは深い森の中に立っていた。


「うわあ…すごい」


 ルナが感嘆の声を上げる。


「瞬間移動って、こんな感覚なんですね」

「慣れれば大したことない」


 俺は周囲を見回す。


「ダンジョンの入り口はどこだ?」

「あそこです」


 ルナが指差す先に、地面に開いた穴があった。

 石で組まれた階段が、地下深くまで続いている。


「いかにもダンジョンって感じね」

「ああ。それで、難易度はどれくらいなんだ?」

「中級程度だと思います」


 ルナが魔法書を確認する。


「私たちの実力なら、十分攻略可能でしょう」

「よし、それじゃあ入ろう」


 俺たちは慎重に階段を降り始めた。

 ダンジョンの内部は薄暗く、松明の明かりが所々に灯されている。

 古い石造りの壁には、魔法陣らしき文様が刻まれていた。


「この文様…古代魔法の痕跡ですね」


 ルナが興味深そうに壁を調べる。


「危険はないのか?」

「今のところは大丈夫です。でも、奥に行けば何があるかわかりません」

「気をつけて進もう」


 俺たちは廊下を奥へ進んだ。

 しばらく歩くと、最初の部屋に到着した。

 広い円形の部屋で、中央に宝箱が置かれている。


「あんなわかりやすいところに宝箱が…」

「罠でしょうね」


 ルナが冷静に判断する。


「どんな罠だと思う?」

「床が抜けるか、魔物が出るか…」


 その時、宝箱の周りから魔法陣が光り始めた。


「魔物召喚の魔法陣です!」


 ルナが警告する。

 光が収まると、三体のスケルトンが現れた。


「スケルトン!」


 俺は剣を抜く。

 スケルトンたちがガタガタと音を立てながら俺たちに向かってくる。


「タクヤさん、私が魔法で援護します!」


 ルナが杖を構える。


「『火炎弾ファイアボルト』!」


 燃える火球がスケルトンに命中し、一体が粉々に砕けた。


「さすがだ、ルナ!」


 俺も残りの二体に向かう。

 だが、相変わらず俺の剣術は未熟だ。

 スケルトンの攻撃をかわすのがやっとで、反撃する余裕がない。


「『氷の矢(アイスアロー)』!」


 ルナが二発目の魔法を放つ。

 氷の矢が二体目のスケルトンを貫通し、これも粉砕した。


「最後の一体!」


 俺は瞬間移動でスケルトンの背後に回り込む。

 そして、背中から剣を突き刺した。


「やった!」


 最後のスケルトンも崩れ落ちる。


「お疲れ様でした、タクヤさん」


 ルナが駆け寄ってくる。


「君の魔法のおかげだよ。ありがとう」

「いえいえ。タクヤさんの瞬間移動も素晴らしかったです」


 ルナが嬉しそうに笑う。

 俺たちは宝箱を開けた。

 中には回復薬と小さな宝石が入っていた。


「まずまずね」

「次の部屋に行こう」


 俺たちはさらに奥へ進んだ。

 二番目の部屋は迷路のようになっていて、複数の通路がある。


「どっちに行けばいいんだろう?」

「魔力の流れを感じます…こっちです」


 ルナが右の通路を指差す。

 彼女の魔法感知能力は頼りになる。


 迷路を抜けると、今度は大きなホールに出た。

 天井が高く、中央に巨大な魔法陣が描かれている。


「ボス戦の部屋ですね」

「ボス?」


 俺が尋ねた瞬間、魔法陣から巨大な影が立ち上がった。

 現れたのは、鎧を着た巨大なスケルトンナイトだった。

 手には巨大な剣を持っている。


「『スケルトンロード』…中級ダンジョンのボスクラスです」


 ルナが緊張した声で言う。


「勝てるか?」

「二人なら大丈夫です」


 スケルトンロードがゆっくりと俺たちに向かってくる。


「『火炎弾』!」


 ルナが先制攻撃を仕掛けるが、スケルトンロードの鎧に阻まれる。


「硬い鎧ね…」

「俺が気を引く。君は隙を狙って攻撃してくれ」

「わかりました」


 俺は瞬間移動でスケルトンロードの周りを移動しながら、注意を引く。

 巨大な剣が俺がいた場所を薙ぎ払う。

 間一髪で瞬間移動して回避。


「『雷撃ライトニング』!」


 ルナが電撃魔法を放つ。

 金属の鎧に電気が走り、スケルトンロードがよろめく。


「今だ!」


 俺は鎧の隙間を狙って剣を突き刺す。

 手応えがあった。


「『氷結フリーズ』!」


 ルナの氷魔法でスケルトンロードの動きが鈍る。

 俺はさらに攻撃を続ける。

 瞬間移動で背後に回り込み、鎧の継ぎ目を狙う。


「『火炎爆発ファイアエクスプロージョン』!」


 ルナが大技を放つ。

 巨大な火球がスケルトンロードを包み込む。


「うおおおおお!」


 スケルトンロードが崩れ落ちる。


「やったあ!」


 ルナが飛び跳ねて喜ぶ。


「お疲れ様、ルナ。君の魔法がなかったら勝てなかった」

「いえ、タクヤさんの機動力があったからです」


 俺たちは息を切らしながら、お互いの活躍を称え合った。

 ボスを倒すと、部屋の奥に扉が現れた。


「宝物庫ですね」


 扉を開けると、そこには大量の宝物が置かれていた。

 金貨、宝石、魔法のアイテム…


「すごい…これだけあれば、しばらくお金の心配はないわね」

「報酬の2000枚も含めると、相当な額になる」


 俺たちは宝物を分け合って袋に詰めた。


「タクヤさん」


 宝物を整理していたルナが俺を呼ぶ。


「何だ?」

「今日は…楽しかったです」


 ルナが恥ずかしそうに言う。


「二人きりで冒険するなんて、初めてで…」

「俺も楽しかった。君と組むと戦闘が楽だよ」

「そ、そうですか…」


 ルナの頬が赤くなる。

 その時、俺は気づいた。

 ルナが俺を見る目が、仲間以上の何かを含んでいることに。


「あの…タクヤさん」

「ん?」

「私…」


 ルナが何か言いかけた時、突然ダンジョンが揺れ始めた。


「何だ!?」

「ダンジョンが崩壊します! 急いで外に!」


 俺はルナの手を取り、ダンジョンの入り口まで瞬間移動した。

 間一髪で地上に出ると、後ろでダンジョンが崩れ落ちる音がした。


「危なかった…」

「でも、無事に攻略できましたね」


 ルナが安堵の表情を見せる。


「そうだな。今日は本当にお疲れ様」

「はい…また、二人きりで冒険したいです」


 ルナが上目遣いで俺を見る。

 俺の心臓が少し速くなる。


「それじゃあ、帰ろうか」

「はい」


 俺たちは手を繋いで王都に瞬間移動した。

 一日だけの冒険だったが、ルナとの距離が縮まった気がした。

 そして、彼女の俺に対する気持ちも、なんとなく理解できた。


 でも、エリカのこともある。

 複雑な気持ちで、俺は夜空を見上げた。

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