外伝「ルナの過去~忌み子の宮廷魔法使い~」
ルナ・ムーンライトは、背中に紋様を持って生まれました。
その紋様は、エルフ族に伝わる「魔族の生まれ変わり」とされています。
私は、忌み子なのです。
これは、私がタクヤさんと出会う五年前の話です。
当時、私は115歳でした。
第一章:冒険者ルナ
私は、Aランクの魔法使いとして、冒険者たちの間で人気がありました。
中級治癒魔法を使えることもあり、多くのパーティーから声をかけられました。
「ルナさん、今度一緒に冒険に行きませんか?」
若い冒険者が、声をかけてきました。
「ありがとうございます。でも、今は予定がありまして」
丁寧に断ります。
いつも、そうです。
冒険者たちと仕事をすることはあっても、それ以上の関係にはなれませんでした。
なぜなら、背中の紋様を見られたくなかったからです。
冒険者ギルドの酒場で、私を見つけた冒険者たちが集まってきます。
「ルナさん、久しぶり! 明日、オーガ討伐に行くんだけど、一緒にどう?」
戦士風の男性が、豪快に笑っていました。
「報酬は一人金貨30枚だよ。
治癒魔法使いがいれば、かなり楽になるんだ」
「そうだよ、ルナさんがいれば、俺たちも安心して戦える」
別の冒険者も、期待の眼差しを向けてきます。
少し考えるふりをして、答えます。
「分かりました。でも、一泊二日でお願いします」
「ありがとう! やった、これで勝ったも同然だ!」
冒険者たちが喜んでくれました。
周りに合わせて、小さく微笑みます。
でも、心の奥底では、いつも不安がありました。
もし、背中の紋様を見られたら、どうなるのだろう。
魔族の生まれ変わり。
そう烙印を押されて生きてきた私には、人との距離を保つことしかできませんでした。
◇ ◇ ◇
オーガ討伐は、順調に進みました。
私の治癒魔法のおかげで、仲間たちはほとんど無傷です。
「ルナさん、本当にすごいね! この傷、もう塞がってるよ!」
若い戦士が、驚きながら自分の腕を見つめます。
「中級治癒魔法ですから。大抵の傷は、すぐに治ります」
私の言葉に、リーダーが嬉しそうに言ってくれました。
「よし、このまま野営地に戻って、明日帰還しよう!
今夜は祝杯だ!」
野営地では、仲間たちが火を囲んで酒を酌み交わしています。
「ルナさん、一緒に飲もうよ!」
「ありがとうございます」
少量の酒を受け取り、ちびちびと飲みます。
楽しそうな仲間たち。
私も、その輪の中にいます。
でも、どこか壁を感じます。
それは、私が作っている壁。
誰も、私の本当の姿を知らない。
もし知ったら、この笑顔はどうなるのだろう。
「ルナさん、近くに温泉があるって聞いたんだ」
「明日の朝、みんなで入らない? 疲れも取れるし」
リーダーの言葉に、体が固まります。
温泉。
それは、私が最も避けたい場所。
背中の紋様が、確実に見られてしまう。
「すみません、私は遠慮しておきます」
断ると、女性冒険者が不思議そうに聞きます。
「えー、なんで?
私も久しぶりに温泉入りたいのに」
「ルナさん、恥ずかしがらなくてもいいよ。女性だけで入ろう?」
もう一人の女性冒険者も誘ってきました。
「いえ、その…私、温泉が苦手で。
体、拭くだけで大丈夫です」
苦しい言い訳をすると、みんな残念そうな顔をします。
ごめんなさい。
「そっか、残念だなあ」
罪悪感しか感じませんでした。
でも、仕方がないのです。
もし、背中の紋様を見られたら、私は忌み嫌われる。
◇ ◇ ◇
冒険から戻ると、私はいつものようにエルフ村に帰ります。
村の入り口で、幼馴染のエルフが私を見つけます。
「あ、ルナだ」
彼女は、私を見ると、少し表情を曇らせます。
正常な反応。
…もう、慣れました。
「久しぶり…元気だった?」
「ええ、元気です」
彼女とは少し距離を置いて話しました。
近づこうとすると、彼女は一歩、また一歩と私から距離を置こうするんです。
「そう…良かった」
昔は、もっと仲が良かったのに。
幼い頃、一緒に遊んでいたのに。
背中の紋様のことを知られてから、みんな私から距離を置くようになりました。
エルフ村の人々は、私を恐れています。
魔族の生まれ変わり。
そんな存在が、村にいることを。
家族以外とは距離を置いて暮らしていました。
友人もいません。
恋人なんて、夢のまた夢です。
私は、そんな孤独な生活を送っていました。
家に帰ると、母が優しく迎えてくれます。
その笑顔は、作り笑いのように見えてしまいました。
「おかえり、ルナ」
「ただいま、お母様」
母は、私の背中の紋様を気にしません。
父も、兄も、私を普通に愛してくれます。
けど…
本当はわかっているんです。
家族も私のことを嫌いっていうことは。
他の人たちと一緒。
私は、いつも思っていました。
私は、一生このまま孤独に生きていくのだろうか。
誰かに、本当の意味で受け入れられることはないのだろうか。
第二章:宮廷への招待
私が115歳になった時、一通の手紙が届きました。
セリア大陸のプロイシェン王国からです。
手紙には、宮廷魔法使い兼家庭教師にならないかという誘いが書かれていました。
手紙の内容は、丁寧で、礼儀正しいものでした。
ルナ・ムーンライト殿
貴殿の魔法の才能と、冒険者としての功績は、我が国にも聞こえております。
つきましては、プロイシェン王国の宮廷魔法使い、ならびに王子殿下の魔法教師として、お迎えしたく存じます。
契約期間は三年間。
報酬は、年間金貨500枚。
宮廷での居住、食事、その他の生活費は、全て王国が負担いたします。
ご検討いただければ、幸いです。
プロイシェン王国宮廷魔法使い長
グレゴリー・デ・ハルテンベルク
悩みました。
こんな忌み子が、王宮で働いていいのだろうか。
もし、背中の紋様がバレたら、王国に迷惑をかけてしまうのではないか。
でも、金貨500枚。
それは、冒険者として三年間働くよりも、遥かに高額です。
そして、安定した生活。
宮廷での居住、食事。
全てが、私にとって魅力的でした。
何日も悩みました。
母に相談すると、母は優しく言いました。
「ルナ、あなたが決めたことを、私たちは応援するわ」
母が私の手を握ってくれます。
「でも、無理はしないでね」
「お前は、もっと自分を信じていい」
母の意見に合わせるように、父も同じようなことを言います。
その言葉は、嬉しかったです。
嘘だと分かっていても。
「お前は、立派な魔法使いだ。
忌み子なんかじゃない」
家族の言葉が、私の背中を押してくれました。
決断しました。
三年間の契約で、宮廷魔法使いになることを。
心の奥底では、思っていました。
これは、自分を変えるチャンスかもしれない。
王宮で働けば、安定した生活が送れる。
そして、もしかしたら、自分の価値を証明できるかもしれない。
返事の手紙を書きました。
第三章:プロイシェン王国到着
プロイシェン王国に到着した私は、まず宮廷魔法使い長、グレゴリーに案内されました。
「ようこそ、ルナ殿」
グレゴリーは、白い髭を蓄えた老魔法使いでした。
実力は私より格上。
魔力量が物語ってます。
「貴女の到着を、心待ちにしておりました」
「こちらこそ、お世話になります」
礼をすると、グレゴリーが微笑んでくれました。
本当の私を知らないから。
「まずは、貴女の実力を拝見させていただきたい」
宮廷の訓練場に案内されました。
そこには、数名の宮廷魔法使いと、何人かの兵士たちがいました。
「では、ルナ殿。
傷ついた兵士を治療していただけますか」
訓練で負傷した兵士が、前に出てきます。
腕に、深い切り傷があります。
「分かりました」
負傷兵に手をかざします。
「『中級治癒魔法: セイクリッド』」
呟くと、淡い緑色の光が兵士の腕を包みました。
そして、傷が見る見るうちに塞がっていきます。
たった数秒で、深い切り傷が完全に治りました。
周囲が、どよめきます。
「すごい…」
「これが、Aランクの魔法使いか」
「中級治癒魔法を、あんなに素早く…」
宮廷の魔法使いたちが、驚きの表情を浮かべました。
「素晴らしい」
「噂以上ですね、ルナ殿」
「ありがとうございます」
グレゴリーが褒めてくれました。
実は、治癒魔法は得意分野ではありません。
中級の詠唱短縮はできますが、それ以上は使えないんです。
「では、次に攻撃魔法を」
訓練用の的に向かって、魔法を放ちます。
「『上級火炎魔法:クリムゾン』」
私の手から、巨大な火球が放たれます。
火球は、的を正確に捉え、木製の的を一瞬で燃やし尽くしました。
「『上級水魔法:フロスト』」
訓練場の水溜まりが、瞬時に凍りつきました。
厚い氷の層が、地面を覆います。
「素晴らしい…」
「貴女は、Aランクの中でも上位の実力をお持ちですね」
Aランクの中でも上位の実力を持っています。
それは、孤独に修行を続けてきた結果でした。
人と関われない分、魔法の修行に打ち込んできました。
王宮の魔法使いたちは、私の実力に感嘆しました。
「ルナさん、素晴らしいですね」
若い魔法使いが、目を輝かせていました。
期待の眼差し。
私が一番嫌いなもの。
「私も、いつかあんな魔法を使えるようになりたい」
「努力すれば、きっと使えるようになりますよ」
若い魔法使いが嬉しそうに頷きました。
けど、どうせすぐに追い抜かれるんです。
私よりも才能がある人たちだから。
「ルナ殿、これから、王子殿下の魔法教育をお願いします」
「承知いたしました」
第四章:宮廷での生活
宮廷の中でも特に良い部屋を与えられました。
広々とした部屋には、大きなベッド、机、本棚、そして魔法の道具を置く棚がありました。
窓からは、美しい中庭が見えます。
噴水があり、色とりどりの花が咲いています。
「すごい…」
私が思い描いていた王宮の姿が今、目の前にあります。
「ルナ様のお部屋でございます。
何か必要なものがあれば、いつでもお申し付けください」
「ありがとうございます」
メイドというのも初めて見ます。
自分で自分のことをしないのは、変な感じですね。
「夕食は、一時間後に宮廷の食堂でお召し上がりいただけます」
一人になると、部屋を見渡しました。
今までの冒険者生活とは、比べ物にならないほど快適です。
冒険者時代は、野営が多く、宿に泊まっても狭い部屋でした。
一人で受ける依頼は、報酬が少なく、依頼量も少なかったのです。
だから貧乏暮らしを強要されていました。
でも、ここは違う。
広くて、清潔で、美しい。
ベッドに横になってみました。
柔らかい。
すごく、柔らかい。
目を閉じました。
ここでなら、幸せになれるかもしれない。
そう思いました。
◇ ◇ ◇
夕食の時間になり、私は宮廷の食堂に向かいました。
食堂には、宮廷魔法使いや騎士たちが集まっていました。
遅れて入ると、みんなが私を見ます。
暖かい視線でした。
「ああ、ルナ殿。
こちらへどうぞ」
グレゴリーの隣に座りました。
少し経つと、次々と料理が運ばれてきます。
肉料理、魚料理、スープ、サラダ、パン、デザート。
どれも、美味しそうです。
思わず息を呑みました。
「すごい…」
「王宮の料理長が腕を振るったものです」
「どうぞ、遠慮なく」
料理を口に運びました。
美味しい。
すごく、美味しい。
冒険者時代は、乾燥肉や固いパンが主食でした。
でも、これは違う。
柔らかくて、味わい深くて、幸せな気持ちになります。
思わず涙が出そうになりました。
こんな美味しい料理、生まれて初めてです。
「ルナ殿、お気に召しましたか?」
「はい、とても美味しいです」
その言葉に、満足そうに頷いていました。
「それは良かった。ここでの生活を、楽しんでくださいね」
ここでなら、幸せになれる。
そう、信じたかった。
第五章:謁見
翌日、国王と王妃に謁見することになりました。
謁見の間は、豪華絢爛でした。
高い天井、美しいステンドグラス、立派な玉座。
そして、玉座には、国王と王妃が座っています。
国王、アルフレッド三世は、50代の穏やかそうな男性でした。
王妃、エリザベートは、40代の優雅な女性でした。
「ルナ・ムーンライト、参上いたしました」
膝をつき、国王の言葉を待ちます。
「顔を上げてください、ルナ殿」
顔を上げると、国王が微笑んでいました。
「ようこそ、プロイシェン王国へ」
「貴女の魔法の才能は、遠く我が国にも聞こえております」
「恐れ入ります、陛下」
「ルナ様、息子の教育を、どうぞよろしくお願いいたします」
王妃が、母親らしい優しさで言います。
母親…
私が、憧れるものです。
「息子は、まだ幼く、時に我儘を言うこともありますが…」
少し困ったような顔をしていました。
「どうか、温かい目で見守ってやってください」
「承知いたしました、王妃様」
「ルナ殿、もし何か困ったことがあれば、いつでも相談してください」
とても礼儀が正しい国王です。
どこぞのヴェルダント帝国の貴族たちとは大違いです。
「貴女は、我が国の大切な客人です。
不自由なく、過ごしていただきたい」
国王の優しさに驚きました。
国王は、権威的ではなく、温かい人でした。
王妃も、母親らしい優しさを持っていました。
少し安心しました。
ここでなら、きっと大丈夫。
そう思いました。
◇ ◇ ◇
後日、再び国王夫妻と話す機会がありました。
それは、宮廷の茶会でのことです。
王妃が、招待してくれたのでした。
「ルナ様、お茶をどうぞ」
「恐れ多いことです、王妃様」
私の恐縮は、好感だったようです。
「そんなに固くならないでくださいな」
「私たちは、貴女を家族の一員だと思っています」
驚きました。
家族の一員。
王族が、私にそんな言葉をかけてくれるなんて。
「ありがとうございます、王妃様」
「息子のこと、どうですか?」
王妃が心配そうに聞きます。
「まだ初日ですから、評価は難しいですが…」
言葉を濁すと、王妃が申し訳なさそうに言いました。
「息子は、少しやんちゃなところがあります」
「もし、手に余るようでしたら、遠慮なく言ってくださいね」
王妃の優しさに心を打たれました。
王妃は、本当に息子を心配しています。
そして、私のことも心配してくれています。
「大丈夫です、王妃様」
「私も、精一杯努めさせていただきます」
安心して、微笑んでくれました。
「ありがとうございます、ルナ様」
王妃様の期待に、応えたい。
でも、それは後に、とても難しいことだと気づくのでした。
第六章:エロガキ王子
しかし、問題が一つありました。
私が教える予定の王子が、とんでもないエロガキだったのです。
王子、フェリックス・セシル・プロイシェンは、10歳の少年でした。
見た目は可愛らしく、金髪に青い瞳、まるで天使のようです。
でも、中身は最悪です。
初めて王子に会った時、私は騙されました。
「ルナ先生、初めまして」
王子が、礼儀正しく挨拶しました。
きっと、ここから演技だったのでしょう。
「僕は、フェリックスです。
魔法を教えてください」
「はい、よろしくお願いします、フェリックス王子」
「ルナ先生、綺麗ですね」
無邪気な笑顔で王子が褒めてくれます。
小さい子に、そんな言葉を言われるなんて思ってもいませんでした。
照れてしまいます。
「ありがとうございます」
最初は、王子は良い子だと思いました。
でも、それは間違いでした。
◇ ◇ ◇
授業が始まると、王子の本性が現れました。
「では、基礎魔法から始めましょう」
魔法の本を開くと、王子が私の後ろに回り込みます。
そして、私のお尻を触ろうとします。
「王子様!」
慌てて避けますが、少し当たってしまい、変な感触がお尻に残りました。
気持ち悪いです…
「あはは、ルナ先生、柔らかそうだね」
にちゃとした顔で、立っていました。
困惑しました。
これは、冗談なのか。
それとも、本気なのか。
「王子様、授業中ですので、真面目に」
注意すると、王子が不満そうでした。
「えー、つまらないなあ」
でも、王子は一応席に戻ります。
さっきよりも授業態度が、悪いです。
でも、ホッとしました。
でも、それは束の間でした。
「ルナ先生、この魔法の詠唱、分からないんだけど」
近づくと、王子が突然私の手を掴みます。
「王子様?」
戸惑っていると、王子が私の手を自分の頬に当てます。
気持ち悪い温かさが全身に伝わりました。
「ルナ先生の手、柔らかいね」
「王子様、手を離してください」
必死に手を引こうとすると、王子が笑います。
うっとりした表情は、私の頭の中にこびりつき、消えなくなってしまいました。
「あはは、ルナ先生、可愛い」
顔を青くしながら、なんとか手を引き抜きます。
これは、冗談では済まされない。
王子は、本気でセクハラをしているのです。
◇ ◇ ◇
授業が終わり、部屋に戻りました。
疲れました。
本当に…
王子のセクハラを避けながら、授業をするのは、とても大変です。
でも、思い直します。
これも、仕事のうちだと。
◇ ◇ ◇
しかし、王子のセクハラは、日に日にエスカレートしていきます。
廊下を歩いていると、背後から抱きつかれました。
「ルナ先生、見つけた!」
王子が、私の胸に手を当てるように、抱きついてきました。
「王子様!」
驚く暇もなく、王子は次の行動に移りました。
私の体に、顔を埋めるんです。
「ルナ先生、柔らかいね。良い匂いがする」
「王子様、やめてください!
誰かに見られたら…」
必死に引き剥がそうとすると、王子が笑います。
「大丈夫だよ、ここには誰もいないから」
それが問題なのです。
なんとか王子を引き剥がします。
息を切らしながら、王子を見ます。
「王子様、これは適切な行動ではありません」
私の真剣な言葉は、伝わっていない様子でした。
首を傾げて、本当にわかっていなそうです。
「えー、なんで? ルナ先生のこと、好きなのに」
王子が無邪気に言いました。
その無邪気さが恐ろしいです。
頭を抱えました。
これは、子供の純粋な好意なのか。
それとも、もっと別の何かなのか。
どちらにしても、これ以上エスカレートするのは困ります。
◇ ◇ ◇
授業中も、王子のセクハラは続きます。
黒板に魔法陣を描いていると、王子が私の背後に立ちます。
「ルナ先生、ちょっと質問」
振り返ると、王子が私の胸元を見ています。
「王子様、質問は何ですか?」
「ルナ先生、小さいね」
遠慮のない言葉を王子が、私の胸を指しながら言いました。。
顔を真っ赤にして叱りました。
「王子様! そういうことは言わないでください!」
「あはは、ルナ先生、恥ずかしがってる。可愛い」
もう限界でした。
でも、相手は王族です。
下手に叱って、契約を打ち切られたら困ります。
深呼吸しました。
こんな生活に耐えられるのでしょうか。
◇ ◇ ◇
ある日、授業中に王子が言いました。
「ルナ先生、一緒に魔法の実習しようよ」
「はい、では外の訓練場で」
珍しく首を横に振られました。
「ううん、ここでやろう」
「ここで?
でも、部屋の中では危険ですよ」
私の意見も聞かずに、魔法の準備を始めてしまいました。
「大丈夫だよ。小さな魔法だから」
「『風魔法:スミル』」
すると、弱い風が吹きます。
そして、その風が、私のスカートを捲ろうとします。
「王子様!」
慌ててスカートを押さえました。
判断が遅ければ、きっと見えていたかもしれません。
「あー、失敗した」
王子が舌を出します。
まるで嘲笑うように。
そしていやらしい目でした。
「王子様、これは度が過ぎています!」
本気で叱ると、王子が拗ねたような態度をとります。
「えー、ルナ先生、怒らないでよ」
「僕、ルナ先生のこと、好きなんだもん」
頭痛がしてきました。
でも、私は思い直します。
この快適な暮らしを、手放すのはもったいない。
良い食事、良い寝床、安定した収入。
全てが、私にとって貴重なものです。
我慢することにしました。
三年間だけ、我慢すればいい。
そう自分に言い聞かせました。
◇ ◇ ◇
ある日、王妃に呼ばれました。
王妃の私室に行くと、王妃が心配そうな顔をしています。
「ルナ様、息子のこと…大丈夫ですか?」
どう答えるべきか悩みました。
正直に言うべきか。
それとも、我慢すべきか。
「はい、王妃様。問題ありません」
嘘である後者を選びました。
その言葉を聞いて、王妃は悲しそうな顔をします。
まさか…
「実は、メイドから聞きました」
「息子が、ルナ様に…その…」
言葉を濁していますが、全て伝わります。
被害者ですから。
驚きました。
バレていたんですか…
「すみません、ルナ様」
「息子には、私からも厳しく言います」
「いえ、王妃様」
頭を下げている王妃に、焦りました。
この場面を見られたら絶対に、契約を解除されてしまう。
「私は大丈夫です。
王子様も、まだお若いですから」
庇えば、まだ仕事を続けられるはずです。
本当は、もう限界でした。
「ルナ様は、優しいですね」
「でも、我慢しすぎないでください」
王妃が私の手を強く握りました。
「もし、耐えられなくなったら、いつでも言ってくださいね」
王妃の優しさに涙が出そうになりました。
でも、笑顔で答えます。
弱い人だと思われたくないから。
「ありがとうございます、王妃様」
◇ ◇ ◇
その後、王妃が王子を叱ったようです。
次の授業で、王子が渋々謝ってきました。
「ルナ先生、ごめんなさい」
「母上に怒られちゃった」
少しホッとしました。
でも、不満そうな王子に少しイラッとしました。
「分かってくれたなら、良かったです」
「でも、僕、ルナ先生のこと、本当に好きなんだよ」
その表情と声色は、真剣そのものでした。
困りました。
これは、子供の純粋な好意なのでしょう。
でも、その好意の表現方法が、間違っているのです。
「王子様、好意を持つのは良いことです」
「でも、相手が嫌がることをしてはいけません」
優しく諭すと、王子が頷いてくれました。
やっと…わかってれたんですね。
「分かった…」
「じゃあ、ルナ先生、僕が大人になったら、結婚してくれる?」
子供の無邪気さというものは、時に恐ろしいものです。
この瞬間、理解しました。
「それは、その時に考えましょう」
考える=しないという発想はなかったようです。
「やった! 約束だよ!」
頭を抱えました。
これで、少しはマシになるといいのですが。
◇ ◇ ◇
王妃の叱責の後、王子のセクハラは少し減りました。
でも、完全になくなったわけではありません。
時々、私の手を握ろうとしたり、抱きついてきたりします。
でも、以前よりは、マシになりました。
なんとか授業を続けることができました。
そして、宮廷での生活にも、少しずつ慣れていきました。
美味しい食事、快適な部屋、安定した収入。
全てが、私にとって魅力的でした。
第七章:エルリックとの邂逅
ある日、宮廷で働く剣士、エルリック・ルーデンフォルトに出会いました。
それは、宮廷の訓練場でのことです。
王子の魔法実習の準備をしていると、訓練場で一人の剣士が剣を振っていました。
彼の剣技は、圧倒的でした。
速く、正確で、美しい。
まるで、剣と踊っているかのようです。
思わず見とれてしまいました。
剣士が、剣を振るいます。
その剣技は、私が見た中で最も美しいものでした。
一振り、一振りが、完璧です。
無駄な動きが、一切ありません。
「すごい…」
思わず呟くと、剣士が私に気づきます。
彼は、10代後半の男性でした。
プルシアンプルーの髪に、鋭い目つき。
でも、その目には、どこか優しさがありました。
「見ていたのか」
「す、すみません」
慌てて謝ると、剣士が微笑みます。
「いや、構わない」
「君は、新しく来た魔法使いの、ルナさんだね?」
「はい、そうです」
剣士は剣を下ろして、呼吸を整えました。
「僕は、エルリック・ルーデンフォルト。
宮廷騎士団の一員だ」
「よろしくお願いします、エルリックさん」
礼をすると、エルリックが微笑んでいました。
「君の魔法の腕前、噂で聞いているよ」
「中級治癒魔法を使えるそうだね」
「はい、少しだけ」
謙遜すると、エルリックが見破ったかのように笑います。
「謙虚だな」
「俺も、君の魔法を一度見てみたい」
エルリックに興味を持ちました。
彼の剣技は、本当に素晴らしい。
でも、噂では、彼は病気を抱えているそうです。
「エルリックさん、病気を抱えていると聞きましたが…」
エルリックが少し寂しそうに笑います。
「ああ、その通りだ」
「魔力蓄積病だ。本来の力が出せないんだ」
エルリックが剣を鞘に収めます。
あの強さで?
いつかエルリックの本当の強さを見てみたいです。
「だから、今のうちに、できるだけ剣を振って強くなっておきたい」
エルリックに同情しました。
でも、同時に、彼の強さに憧れました。
病気を抱えながらも、全力を出そうとするエルリック。
彼の姿に、自分を奮い立たせました。
頑張らないといけない。
王子のセクハラに負けずに、三年間を乗り切らないといけない。
そう思いました。
◇ ◇ ◇
それから、エルリックと時々話すようになりました。
エルリックは、私の仕事ぶりを見ていたようです。
ある日、訓練場で再び会った時、エルリックが言いました。
「ルナさんは、献身的だね。
王子の教育は大変だろう?」
「はい、少し…」
苦笑いして誤魔化そうとしました。
「王子のセクハラ、知ってるよ」
「宮廷では、みんな知っている」
恥ずかしくなりました。
バレていたんですか…
「でも、君はよく我慢している」
「普通なら、とっくに辞めているだろう」
「三年間の契約ですから」
答えると、優しく微笑みかけられます。
「君は、強いね」
その言葉が、私の心に響きました。
誰かに、認められた。
それが、とても嬉しかったです。
「ありがとうございます、エルリックさん」
「もし、辛くなったら、いつでも話してくれ。
僕でよければ、力になる」
エルリックの優しさに心を打たれました。
エルリックは、本当に優しい人です。
そして、強い人です。
私は、エルリックに惹かれていきました。
◇ ◇ ◇
私とエルリックは、よく訓練場で会うようになりました。
エルリックが剣を振り、私が魔法の練習をする。
そして、休憩時間に、お互いの話をします。
「ルナさんは、エルフ族なんだね」
「はい、ヴェリア大陸のエルフ村出身です」
答えると、興味深そうに聞いてきます。
エルフ族は珍しい種族です。
隔離された神秘的な場所のみに、集落を作り、そこで細々と暮らします。
エルフ村もその一つです。
「エルフ族の寿命は、長いんだろう?」
「はい、人間の約十七倍です」
人間の寿命は七十歳と聞いたことがあります。
私が小さい頃にあった人も、今は亡くなっているそうなのでこれは確かです。
「いいな。
僕なんて、病気のせいで、あとどれだけ生きられるか…」
自嘲的に笑いに、悲しくなりました。
「エルリックさん、治癒魔法で治せませんか?」
「無理だ」
「この病は、魔力を蓄積している。治癒魔法では、逆に悪化する」
ショックを受けました。
治癒魔法で治せない病気。
そんなものがあるなんて。
「でも、諦めてはいない。
いつか、治療法が見つかるかもしれない」
エルリックは前向きでした。
私よりも何倍も。
「それまでは、全力で生きる」
エルリックの強さに感動しました。
病気を抱えながらも、前向きに生きようとする姿。
見習わないといけません。
◇ ◇ ◇
ある日、エルリックが私に言いました。
「ルナさん、君の魔法を見せてくれないか」
「はい、いいですよ」
笑顔になってくれたので、私も自然と笑顔になります。
でも、あまり自信がありません。
失敗したらどうしよう。
飽きられてしまうのでは。
不安ながら、訓練場の的に向かって、魔法を放ちます。
「『上級火炎魔法: ヘリオス・バーン』」
私の手から、巨大な火球が放たれます。
火球は、的を正確に捉え、一瞬で燃やし尽くします。
「すごい…」
想像したものよりもはるかに、感動してくれました。
嬉しい限りです。
「噂以上だな」
「次は、水魔法を見せてくれ」
「分かりました」
魔法を放ちます。
「『上級水魔法: アイスクルランス』」
訓練場の水溜まりが、瞬時に凍りつき、そして氷の槍が下から伸びます。
「素晴らしい」
拍手が訓練場に響きました。
「君は、本当に才能がある」
包み隠さずに言われると、照れてしまいます。
「ありがとうございます」
「ルナさん、君は自分の才能を、もっと誇るべきだ。
君は、素晴らしい魔法使いだ」
その言葉が、私の心に染みました。
誰かに、認められる。
それが、こんなに嬉しいなんて。
私は、初めて知りました。
第八章:求婚
それから、私とエルリックは、さらに親しくなりました。
訓練場で会うだけでなく、宮廷の庭を散歩したり、食堂で一緒に食事をしたりするようになりました。
エルリックは、いつも私を励ましてくれました。
「ルナさん、今日も王子の授業、お疲れ様」
「ありがとうございます」
「君は、本当に我慢強いね」
「僕なら、とっくに音を上げている」
エルリックなら、何年、いや何十年でもできそうですけどね。
私を励ますために言っているんでしょう。
「三年間の契約ですから」
優しい笑顔を向けてくれます。
「でも、無理はするなよ。
君の健康が、一番大事だ」
その言葉が、私の心を温めました。
エルリックは、本当に優しい人です。
◇ ◇ ◇
ある日、エルリックが私を宮廷の庭に誘いました。
「ルナさん、少し話がある」
彼の真剣な言葉に、少し緊張しながら、についていきました。
宮廷の庭は、美しい花が咲き誇っています。
噴水の音が、心地よく響いています。
エルリックが、突然立ち止まります。
そして、顔を赤ながら私の方を向きました。
「ルナさんね
「僕と結婚してくれないか」
一瞬、意味が分かりませんでした。
結婚。
エルリックが、私に求婚している。
「え、結婚…ですか?」
戸惑いを隠せませんでした。
まさか、求婚されるなんて微塵も思っていなかったからです。
「ああ、君の献身的な姿に、僕は惚れた。
君の強さ、優しさ、全てが素晴らしい」
「君と一緒に生きていきたい」
心が揺らいでいます。
エルリックは、優しくて、強くて、素晴らしい人です。
でも、私には、背中の紋様があります。
魔族の生まれ変わりという烙印。
そんな私が、エルリックと結婚していいのか。
「すみません、エルリックさん」
断るしかないんです。
「私なんかが、あなたと釣り合うはずがありません」
「そんなことはない」
「君は、素晴らしい女性だ」
エルリックが私の手を取ります。
「君は、自分を過小評価しすぎている」
でも、私は断り続けました。
私は、自分の価値を信じられませんでした。
もし、エルリックが私の背中の紋様を知ったら、どうなるのか。
きっと、私を忌み嫌うでしょう。
魔族の生まれ変わり。
そんな烙印を持つ私が、幸せになれるはずがない。
「すみません、エルリックさん」
悲しそうな表情をするエルリックに、胸が締め付けられました。
「そうか…」
「でも、僕は諦めない。
いつか、君が僕を受け入れてくれる日を待ってるよ」
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
◇ ◇ ◇
それから、エルリックは何度も求婚してきました。
宮廷の庭で、訓練場で、食堂で。
いろんな場所で、エルリックは私に求婚しました。
「ルナさん、僕と結婚してくれ」
「すみません、エルリックさん」
その度に、申し訳なさそうに断ります。
断るたびに、エルリックは悲しそうに微笑みます。
「そうか…でも、諦めないよ」
エルリックの優しさに心を打たれながらも、断り続けました。
私には、背中の紋様があります。
魔族の生まれ変わり。
そんな私が、幸せになれるはずがない。
そう信じていました。
◇ ◇ ◇
ある日、エルリックが私に言いました。
「ルナさん、君は何を恐れているんだ?」
その真剣な言葉に、私は解答につまりました。
どう答えればいいものでしょうか。
「私は…」
私が言いかけると、それを遮るように言われました。
「君は、自分に価値がないと思っているのか?」
「それとも、僕が君を裏切ると思っているのか?」
そんな理由ではないです。
あなたは何も悪くないんです。
悪いのは、この世界に生まれた私なんです。
「違います、エルリックさん。
あなたは、素晴らしい人です」
「でも、私は…私には、言えない秘密があるんです」
「秘密?」
聞き返されてしまいました。
困ります。
「どんな秘密でも、僕は君を受け入れるよ」
涙が出そうになりました。
でも、私は言えませんでした。
背中の紋様のことを。
魔族の生まれ変わりだということを。
「すみません、エルリックさん」
「いいんだ、ルナさん」
優しく微笑みかけられますが、その笑顔も少し受け入れなくなりそうです。
怖いんです…
拒絶されるのが。
「君が話したくないなら、無理に聞かない」
私の頭は優しく撫でられました。
「でも、いつか君が心を開いてくれる日を、僕は待ってるよ」
エルリックの優しさに涙が溢れそうになりました。
でも、私は涙を堪えました。
私は、エルリックを傷つけたくない。
そして、自分の精神の保身のために、距離を保つしかない。
第九章:契約終了
三年の契約期間が、あっという間に過ぎました。
その間、王子の魔法教育を続けました。
王子のセクハラは、完全にはなくなりませんでしたが、以前よりはマシになりました。
そして、王子の魔法の腕前も、上達しました。
「ルナ先生、見て! 中級火炎魔法が使えるようになったよ!」
とても嬉しそうです。
「素晴らしいですね、王子様」
「ルナ先生のおかげだよ」
セクハラさえなければ、笑顔が可愛い子供なんですがね。
「ありがとう、ルナ先生」
少し嬉しくなりました。
王子は、確かに成長しました。
セクハラは相変わらずですが、魔法の才能はあります。
そして、契約最終日。
私は、王子に最後の授業をしました。
「王子様、これで最後の授業です」
「えー、ルナ先生、行っちゃうの?」
その声は、悲しみが溢れています。
「はい、契約期間が終了しましたので」
答えると、王子が泣きそうになります。
「ルナ先生、行かないで」
王子が私に抱きつきます。
この行為は、セクハラという考えは一切浮かびませんでした。
これは、別れが恋しいただの子供です。
「僕、ルナ先生のこと、大好きなのに」
「王子様、私もあなたのことを、大切に思っています」
「でも、私にはやるべきことがあります」
涙で私のローブがびしょびしょになりました。
「ルナ先生…」
「王子様、元気でいてくださいね」
私が離れると、王子は涙を拭き取りました。
強い子です。
「うん…ルナ先生も、元気でね」
◇ ◇ ◇
私王宮を去る準備をしました。
荷物をまとめ、部屋を片付けます。
三年間過ごした部屋。
快適で、美しい部屋。
ここを去るのは、少し寂しい気もします。
でも、私には帰る場所があります。
エルフ村。
家族が待っている場所。
最後の日、国王と王妃に挨拶をしました。
「ルナ殿、三年間、本当にありがとうございました」
「息子も、貴女のおかげで立派に成長しました」
「恐れ入ります、陛下」
王妃は涙ながらに、息子の成長を喜んでいました。
「ルナ様、本当にありがとうございました」
「息子は、貴女を慕っています」
「もし、また戻ってきたいと思ったら、いつでも歓迎します」
王妃の優しさに心を打たれました。
「ありがとうございます、王妃様、陛下」
「私も、ここでの三年間は、忘れません」
◇ ◇ ◇
最後に、エルリックが私を見送りに来てくれました。
宮廷の門の前でです。
「ルナさん、元気でね」
私は、涙を堪えながら答えます。
「ありがとうございます、エルリックさん。
あなたとの時間は、私の宝物です」
きっと、最後になる言葉を言いました。
「ルナさん、僕と結婚してくれないか」
「君がいないと、僕は…」
「すみません、エルリックさん」
「でも、私は…あなたにはふさわしくありません」
私が悪いんです。
そんな悲しそうな表情をしないでください。
「そうか…」
「でも、もし気が変わったら、いつでも連絡してくれ」
そして、エルリックが最後に言いました。
「君は、もっと自分を信じるべきだよ」
「君は、素晴らしい女性だ。
忘れないでくれ」
もう涙を堪えきれませんでした。
涙を流しながら、今まで思い出を振り返ってしまいます。
「ありがとうございます、エルリックさん」
「あなたのこと、忘れません」
宮廷を去りました。
そして、エルフ村に戻りました。
また、孤独な冒険者生活が始まります。
でも、私は思いました。
いつか、自分を受け入れてくれる人が現れるかもしれない。
エルリックのような、優しい人が。
第十章:偶然の勇者との出会い
それは、二年後のことでした。
私は、120歳になっていました。
相変わらず、Aランクの冒険者として働いていました。
そして、ある日、セリア大陸で不思議な男性に出会いました。
タクヤ・キリタニという、別の世界から来た男性。
私は、彼のパーティーに加わりました。
最初は、普通の人間だと思っていました。
でも、彼は違いました。
彼は、私の背中の紋様を見ても、何も言いませんでした。
温泉に入った時、私の背中の紋様が見えたはずです。
でも、彼は何も言わず、ただ優しく微笑んでくれました。
「ルナ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
タクヤさんの心配を溶かすように、安心させる言葉をかけました。
「もし、何か困ったことがあったら、いつでも言ってくれ」
その優しさが、私の心を溶かしました。
タクヤさんは、私の背中の紋様を見ても、何も言わなかった。
忌み嫌わなかった。
ただ、優しく接してくれた。
その時、私は初めて思いました。
私は、幸せになっていいのだと。
私は、愛されていいのだと。
タクヤさんとの出会いが、私の人生を変えました。
エルリックとの思い出は、今でも大切です。
でも、私が本当に愛したのは、タクヤさんでした。
彼は、私の全てを受け入れてくれました。
背中の紋様も、忌み子という烙印も、全てを。
そして、私に言ってくれました。
「ルナ、君は素晴らしい人だ」
「背中の紋様なんて、関係ない」
「君は、君自身。
それ以上でも、それ以下でもない」
その言葉が、私の心を救ってくれました。
ようやく自分を受け入れることができました。
そして、幸せになることを、自分に許すことができました。
エルリックさんの優しさに、いつも感謝しています。
彼がいなければ、私は自分を信じることができなかったでしょう。
彼がいなければ、私はタクヤさんと出会っても、自分を開くことができなかったでしょう。
エルリックさんは、私に大切なことを教えてくれました。
それは、自分を信じること。
そして、幸せになることを、自分に許すこと。
私は、今、とても幸せです。
タクヤさんという、素晴らしい人と出会えました。
彼は、私の全てを受け入れてくれました。
背中の紋様も、忌み子という烙印も、全てを。
エルリック、ありがとうございます。
あなたとの出会いが、私を変えてくれました。
そして、タクヤさん、ありがとうございます。
あなたが、私を本当に幸せにしてくれました。
私は、今、心から思います。
愛されていい。
幸せになっていい。
そう、心から思えるようになりました。
これが、私の過去の物語です。
忌み子として生まれ、孤独に生きてきた私が、ようやく幸せを見つけた物語です。
そして、これからも、私はタクヤさんと共に、幸せな人生を歩んでいきます。
エルリックの言葉を胸に。
「君は、もっと自分を信じるべきだ」
私は、今、自分を信じています。
そして、未来を信じています。




