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第九十六話「猫好きの失言」

 

 オルテンシアと一緒に村に戻った俺は、彼女をエリカたちに紹介することにした。


 家に着くと、居間ではルナがリオネルの相手をしていた。

 アナスタシアはエリカの腕の中で眠っている。平和な夕方の風景だった。


「ただいま」

「おかえりなさい、タクヤさん」


 ルナが微笑む。

 この笑顔が可愛らしい。

 今日の夜も可愛がろう。


「それと、どちらさまですか?」


 ルナがオルテンシアに気づく。

 その瞬間、オルテンシアが驚きの声を上げた。


「化け物!」


 オルテンシアがルナを指差して叫んだ。

 俺の血管が凍りついた。

 ルナの表情が、一瞬悲しそうになる。

 

 俺が絶対に見たくないものだ。


「オルテンシア!」


 怒りを込めて叫ぶ。

 

「何てことを言うんだ! ルナに謝れ!」


 俺の剣幕に、ビクッと震えるオルテンシア。


 理性というものがなかったら危なかった…。

 拳に必死に抑える。

 今にも暴れ出してしまう前に。

 謝ってくれ。


「え、あの」


 オルテンシアが慌てる。


「だって、耳が変な形してるじゃない。お城にいた人たちは、みんな普通の耳だったもの。これは化け物でしょ? 

 違うの?」

「それはエルフの特徴だ」


 常識知らずの剣士に説明した。



「君だって、初めて見る種族がいれば驚くだろうが、化け物なんて言葉を使っていいわけがない」

「え? 種族?」


 オルテンシアがきょとんとする。


「種族って何? 

 貴族の位のこと?」

「種族は…人間とかエルフとか、そういう分類だ」


 俺がため息をつく。


「ルナはエルフ族なんだ」

「エルフ? 聞いたことないわ」


 オルテンシアが首を傾げる。


「お城にそんな家名の貴族いたかしら?

 エルフ侯爵家? それともエルフ公爵家?」

「家名じゃない!」


 頭を抱えた。

 こんなにバカだとは思っていなかった。

 いや、片鱗は見せていた。

 それに気づかなかったのは俺の落ち度だ。

 ここまでバカだと逆に清々しさも感じる。


「種族だって言っただろ」

「でも、お城にいた人はみんな同じ耳だったもの」


 納得していないオルテンシア。

 腕を組み、しかめっ面をしている。


「だから、この人は何か特別な人なのよ。

 きっと、すごく偉い貴族で、耳を装飾してるのね」

「装飾じゃない! 生まれつきだ!」

「ご、ごめんなさい」


 オルテンシアがしゅんとして謝る。

 純粋なだけなのか?


「知らなくて。アタシ、お城の外に出たことほとんどなかったから、世間のことよく知らないの」


 ルナが優しく微笑んだ。


「大丈夫です」

「確かに、人族の方には珍しい姿かもしれませんね。

私はエルフのルナ・ムーンライトです」


 ルナの寛大さに、俺は改めて感動した。

 彼女はいつも、他人の過ちを許してくれる。

 彼女の優しさを少しでも見習って欲しい。


「アタシ、オルテンシア・フォン・レーヴェン…えーっと…ドラゴン…あれ?」


 オルテンシアが自己紹介しようとして、また名前で詰まる。


「もういい、オルテンシアでいい」

「よろしく、ルナ」


 オルテンシアが改めて挨拶する。


「でも、ルナって変わった名前ね。

 貴族の名前じゃないみたいだけど、平民なの?」

「オルテンシア!」


 間違っていることは注意をする。

 それが年上のすることだ。


「失礼だぞ」

「あら、でも貴族なら『フォン』とか『デ』とか付くでしょ?」


 オルテンシアが不思議そうに言う。


「付いてないってことは、平民よね。

 別に悪口じゃないわよ、事実を言ってるだけ」

「だから、そういうのが失礼なんだって」


 ため息をついた。

 純粋すぎるのも悪だと知った瞬間だった。


 その時、扉が開いて、フェリス先生が帰ってきた。


「お疲れさまニャン」


 フェリス先生が挨拶する。

 でも、オルテンシアを見た瞬間、彼女の様子が一変した。


「きゃああああああ!」


 オルテンシアが耳をつんざくような叫び声をあげた。


「人間に! 

 猫の耳が! 尻尾も! 

 なにこれ! なにこれ!」


 オルテンシアが興奮のあまり、その場で飛び跳ねている。

 

「可愛い! 可愛すぎる! 何よこれ! 

 どういうこと! なんでこんなに可愛いの!」


 俺は、また失礼なことを言うのかと思った。

 でも、オルテンシアの次の言動は予想外だった。


「触らせなさい! 今すぐ! 命令よ!

 元貴族の命令だから、絶対よ!」


 オルテンシアがフェリス先生に突進する。

 抱きつくようにフェリス先生を捕まえるオルテンシア。


「え、ちょっと」


 フェリス先生が困惑する。


 でも、オルテンシアはお構いなしに、フェリス先生の猫の耳を両手で掴んで撫で始めた。


「柔らかい! ふわふわ! あったかい!」


 オルテンシアが感動している。


「すごい、すごい、すごい! これ本物なの! 本物よね! 動いてる! 耳が動いてる!」

「にゃ、にゃんだか恥ずかしいニャン」


 フェリス先生が照れている。

 でも、まんざらでもなさそうだった。

 最近は口調もマイルドになってきた。

 昔の不良みたいな姿は一切ない。


 きっと、ガルドと結ばれて順風満帆なのだろう。


 俺は、オルテンシアの顔を覗き込んでみた。


 すると、信じられない光景が見えた。


 オルテンシアの顔が、完全に蕩けていた。

 瞳がハート型になって、頬が赤く染まっている。

 口元は緩み切って、よだれが垂れそうなほどだ。


 まるで、恋する乙女のような表情だった。

 いや、それ以上だ。

 理性が完全に飛んでいる。


「まさか」


 獣が好きなのか?

 いや、オルテンシアは、獣人族の女の子が好きなのか?


「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い」


 オルテンシアがフェリス先生の耳を撫で続ける。

 貪る様に。


「こんなに可愛い生き物がいるなんて。お城にもいなかった。使用人の中にもいなかった。なんで誰も教えてくれなかったの!」

「尻尾も触っていい? ねえ、いい? いいわよね! 元貴族の命令だから!」


 オルテンシアが勝手にフェリス先生の尻尾を撫で始める。

 触るたびにフェリス先生がビクッとするので、目のやり場に困る。

 何か見てはいけないものを見てる気分だ。


「ふわああああ! 尻尾まで柔らかい! これ、何? どうなってるの? 魔法? 魔法なの?」

「魔法じゃないニャ」


 フェリス先生が困った顔をする。


「生まれつきニャンよ」

「生まれつき? じゃあ、ずっとこうなの? ずっとこんなに可愛いの? ずるい! ずるすぎる!」


 オルテンシアが完全に理性を失っている。


「まあ、フェリス先生は可愛いからな」


 俺の言葉にルナも、クロエも、みんな頷いている。

 フェリス先生の可愛さは、誰もが認めるところだった。


「それにしても、オルテンシアちゃんの好みが分かったわね」


 エリカがアナスタシアを抱きながら言う。


「獣人好きなのね」

「違うわよ!」


 慌てて否定しているがバレバレだ。

 実際、その手はまだフェリス先生の耳と尻尾を交互に撫でている。


「ただ、珍しいから触ってみただけよ!

 貴族は珍しいものを研究する義務があるの!」


「そうニャンか?」


 フェリス先生が少し残念そうに言う。

 あなたももしかしてそっち側?

 知らない一面。


「もう少し触っててもいいニャンよ」

「じゃあ、特別にもう少しだけ! でも、これは研究よ! 研究!」


 オルテンシアが嬉しそうにもみもみ触る。

 完全に獣人好きの素質があるようだった。

 というか、もう隠せていない。


 見た目は完全に百合というものに近いかもしれない。


「ねえねえ、この耳って、音がよく聞こえるの? 尻尾は何のためにあるの?

 猫って何? 猫ってどこにいるの? お城にいた? いないわよね? いたら絶対覚えてるもの!」


 質問攻めをするオルテンシア。

 本当に家族は探究心があるのかもしれない。


 レオナルドも銅像にハマったのは、貴族特有のものだったのか。

 今度聞いてみよう。


「落ち着けよ」

「フェリス先生が困ってる」

「困ってないニャン」


 フェリス先生が優しく言う。

 いや、オルテンシアのことは考えていないだろう。

 自分の気持ちよさを優先しているかもしれない。

 やっぱり、あなたもそっち側でしたか。


「でも、一つずつ答えるニャンね。まず、耳は確かによく聞こえるニャン。尻尾はバランスを取るのに便利ニャン。猫は…」

「すごい! すごすぎる!」


 オルテンシアがフェリス先生の説明を遮る。

 俺も知りたい情報があったのに残念だ。

 フェリス先生の可愛さを知れると思ったのに。


「じゃあ、耳を動かせるの? 動かして! 動かして見せて!」

「こうニャンか?」


 フェリス先生が耳をピクピク動かす。


「きゃああああ! 動いた! 耳が動いた!」


 オルテンシアが興奮のあまり、その場で転げ回り始めた。

 猿?


「可愛い! 可愛すぎて死ぬ! アタシ、死ぬ! 元貴族なのに死ぬ!」

「落ち着け!」


 慌ててオルテンシアを止める。


「死ぬな!」




 ◇ ◇ ◇




 夕食の時間になり、ルナが料理を運んでくる。

 今日は特別に、豪華な料理を作ってくれたようだった。


 家族も増えて作る量も増えた。

 みんなで分担しないとルナが過労で倒れてしまう。

 家事分担表でも作るか。


「わあ、美味しそうです」


 クロエが感嘆する。


 ヨークスはあまり獲れないレアな魚だ。

 もし食○ログがあったのなら、星5つとつけていた。

 それくらい見た目も、味も素晴らしい。


 でも、オルテンシアだけは違った。


「何よ、これ」


 オルテンシアが突然席を立つ。

 みんなが困惑する中、彼女は続けた。


「美味しそうじゃない」


 そして、また席に座った。


「何なのよ、こいつ」


 エリカが少しイラついた声で言う。


「失礼すぎるでしょ」

「すみません」


 オルテンシアの代わりに俺が謝る。


「彼女、ちょっと変わってるんです」

「あら、何が失礼なの?」


 オルテンシアが不思議そうに言う。


「美味しそうだって褒めたのに」

「立ち上がったのが失礼だって言ってるの」

「でも、お城では料理が運ばれてきたら、立ち上がって『素晴らしい』って言うのが礼儀だったもの」


 オルテンシアが当然のように答える。


 ヴィンター家ではそんなものはなかったはずだ。

 レーヴェン家は特殊な家系なのかもしれない。


「使用人が料理を持ってきたら、貴族は立ち上がって褒めるの。それが礼儀なのよ」

「それ、お前んちだけのルールだろ」

「そんなことないわよ」


 否定された。


「お城ではみんなそうしてたもの」

「変わってるって」


 ルナが苦笑いする。


「でも、美味しそうと言ってくれたから、良しとしましょう」


 オルテンシアが立ち上がったのは、あまりの美味しそうな匂いに驚いたこともあるが、彼女なりの礼儀作法のようだった。

 歪んでいるが。


「それで、改めて自己紹介してもらえる?」


 エリカがオルテンシアに言った。


「もちろんよ」


 オルテンシアが胸を張る。

 豊満なものが浮き出た。


「アタシは、オルテン…オルテンシア・フォン・レー…レーヴェン…ドラゴン…えーっと、次はエーデル? 違う、シュタイン? あれ、どっちが先だったかしら?」


 また名前を噛んでしまった。

 というか、名前全然違くね。

 どうして長くなってるんだ。


 みんなが、クスクスと笑い始める。


「何で笑ってるの?」


 オルテンシアが困惑する。


「アタシ、何か変なこと言った?」

「名前を噛んだのよ」

「長い名前だから、しょうがないけど」

「噛んでないわよ!」


 オルテンシアが否定する。

 否定はただの無駄。


「完璧に言えたもの! 今のは省略形なの! 貴族は場面に応じて名前の長さを変えるのよ!」

「そんなルールあるのか?」


 疑問に思った。

 つまり、出会った時の名前は違うと。

 そう言いたいのかな。


「あるわよ! お城ではみんなやってたもの!」


 オルテンシアが主張する。


「だから、アタシは間違ってないの!」


 彼女は自分が噛んだことに気づいていないようだった。

 天然なのか、それとも本当に気づいていないのか。


 十中八九後者だろう。


「まあ、いいじゃないですか」


 ルナが和やかに言う。

 料理を褒められて上機嫌に見える。

 俺ももっと褒めてやらなければ。


「オルテンシアさんのお人柄が分かって」

「そうですね」


 クロエも同意する。


「とても個性的な方ですね」


 食事が進む中、オルテンシアが料理を食べ始めた。


「この料理、美味しいわね」


 オルテンシアが言った。


「でも、お城の料理の方が美味しかったかしら」

「オルテンシア」


 ルナは絶対にこれからもっと上手くなるはずだ。

 けど今のままでも百美味しい。


「それは失礼だぞ」

「あら、でも本当のことじゃない」


 オルテンシアが悪気なく言う。


「お城の料理人は王国一だったもの。

 だから、お城の料理の方が美味しいに決まってるでしょ」

「もうお城ないんだぞ」

「あ、そうだった」


 オルテンシアが思い出す。


「じゃあ、今はこの料理が一番美味しいわね。

 さすがルナ、元貴族のアタシが認めるわ」


 その言葉は褒めているのか、失礼なのか、判断に困る内容だった。


 食事が進む中、オルテンシアが突然立ち上がった。


「そうそう、貴族というものは食後に踊りを嗜むものなのよ」


 オルテンシアが俺に向かって手を差し出す。


「タクヤ、一緒に踊りましょう」

「踊り?」


 困惑。

 またそうやって面倒ごとを起こそうとする。


「今?」

「そうよ」


 オルテンシアが当然のように言う。


「食後の踊りは、貴族の嗜みなのよ。お城では毎晩やってたもの」

「それもお前んちだけのルールだろ」

「そんなことないわよ! 貴族は絶対に食後に踊るの! 踊らない貴族なんて貴族じゃないわ!」


 オルテンシアが力説する。


 また比較するが、レオナルドの時はそんなものはなかった。

 貴族の知り合いはレオナルドしかいないからしょうがない。


 いや、待てよ。

 懇親会と時は踊ると言っていたような…。

 オルテンシアの話は案外間違っていないのかもしれない。


 でも、その瞬間、エリカとルナが同時に立ち上がった。


「ちょっと待ちなさい」


 エリカが割って入る。


「タクヤと踊るなんて、許可していないわよ」

「そうです」


 ルナも同意する。


「タクヤさんは、私たちの夫ですから」

「夫?」


 オルテンシアが驚く。


「タクヤが? でも、タクヤは平民でしょ?」

「平民だけど、私たちの夫よ」


 言ってくれてありがとうエリカ。


「私とルナとクロエ、三人の夫なのよ」

「三人も?」


 オルテンシアがさらに驚く。


「すごいじゃない、タクヤ。平民のくせに、三人も妻がいるなんて。お城の貴族でも、せいぜい二人だったわよ」

「くせにって言うな」


 ため息をついた。


「だから、踊りは遠慮しておく」

「そうなの」


 オルテンシアが少し残念そうにする。


「でも、平民と踊るのもどうかと思ってたから、ちょうど良かったわ」

「じゃあ、最初から誘うな」


 でも、オルテンシアの視線は、すでにフェリス先生に向いていた。


「ねえ、フェリス先生」


 オルテンシアが目を輝かせる。


「あなたと踊りたいわ。猫耳の人と踊るなんて、きっと素敵よね」

「え、でも、あたしは踊り苦手ニャン」


 フェリス先生が困る。

 オルテンシアが来てから困ってばっかりだ。

 後で何かお詫びをあげないとな。


「いいじゃない! 元貴族の命令よ! 一緒に踊りましょう!」


 オルテンシアがフェリス先生の手を取る。


「ちょ、ちょっと」


 フェリス先生が慌てる。

 でも、オルテンシアはお構いなしに、フェリス先生を引っ張って踊り始めた。

 馬鹿力だ。

 

「可愛い、可愛い、可愛い」


 オルテンシアが踊りながら、ずっとフェリス先生の耳を見つめている。


「耳が揺れてる、尻尾も揺れてる、可愛すぎる」


 完全に猫のことで頭がいっぱいのようだった。


「アタシ、ここに住むわ」


 オルテンシアが突然宣言した。


「え?」


 みんなが驚いた。


「勝手に決めていいの?」


 エリカが呆れる。


「だって、タクヤが住んでいいって言ったもの」


 オルテンシアが答える。


 俺は思い出した。

 確かに、村に向かう途中で、とりあえず泊まる場所を提供すると言ったような気がする。

 永続的の意味は含んでない。


「そういえば、そんなことを言ったかもしれない」

「でも、一時的にって意味だったんだが」

「一時的でも永続的でも、住むのは住むじゃない」


 やっぱり勘違いしていたか。

 

 オルテンシアが開き直る。


「アタシ、ここが気に入ったのよ。特に、フェリス先生がいるから」


 オルテンシアがフェリス先生を見つめる。

 その目は、明らかに愛情に満ちていた。

 いや、愛情というより執着に近い何かだ。


「にゃんだか複雑ニャ」


 フェリス先生が困ったような顔をする。

 でも、まんざらでもないんだろう?


「でも、嫌じゃないニャン」


 やっぱり。


「よし、決まりね」


 勝手に結論を出し始める。


「今日からアタシも家族よ。元貴族がこの家に住んでくれるんだから、みんな光栄に思いなさい」

「ちょっと待ちなさい」


 エリカは反対派。


「勝手に家族になるって」

「いいじゃないですか」


 ルナは賛成派のようだ。


「一人増えても、大して変わりません」

「そうですね」


 クロエが控えめに同意をした。


「賑やかになって楽しそうです」

「それに」


 オルテンシアが付け加える。


「アタシがいれば、この家の格が上がるわよ。

 元貴族が住んでるって言えば、みんなすごいって思うでしょ」

「思わないと思うけど」

「思うわよ! 絶対に思うわ! だって、お城に住んでたもの!」


 結局、オルテンシアはこの家に住むことになった。


 また一人、家族が増えた。

 獣人好きで、頭が悪くて、社会常識がなくて、でも剣の腕は一流の女剣士。


 きっと、この家にも新しい風を運んでくれるだろう。

 ただし、フェリス先生への執着が少し心配だったが。


「それにしても」


 この家は、いろんな人種の集合体になってきた。

 人族、エルフ族、獣人族、そして今度は元貴族の女剣士。

 多様性に富んだ、面白い家族構成だ。


 でも、それがこの家の良さでもある。


 みんな違って、みんな良い。


 オルテンシアも、きっとすぐに馴染んでくれるだろう。

 新しい家族の一員として、温かく迎え入れよう。


「ねえ、タクヤ」


 オルテンシアが突然聞いてくる。


「フェリス先生って、毎日ここにいるの?」

「いや、普段は義塾に住み込みで働いている」

「えっ? じゃあ、毎日会えないの?」


 オルテンシアが絶望的な顔をする。


「そんな! それじゃあ意味がないじゃない! フェリス先生も一緒に住みましょう!」

「勝手に決めるな」


 この先、オルテンシアがどんな騒動を起こすのか、想像もつかなかった。

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