第1話 Last Hope ~希望の光~ ①
これからマイペースに描いていきます!!!!!
ぜひ、お立ち寄りください!
あの日、夜空に放たれた6つの光は、人類に魔法を授けた。
夜空を裂いて煌めいた光は、まるで世界中を照らす祝福のようだった。
街角で空を見上げた人々は歓声を上げた。
子を抱いた母は未来への祈りを口にし、剣を握る兵士は胸の奥で自らの夢を噛みしめた。
誰もが信じたのだ。この光こそが希望なのだと――。
ただひとりを除いてはーー。
フードを深く被り、顔を隠した男は、闇の中で静かに佇んでいた。
「‥‥分かつしかなかったのだよ。」
夜風にかき消されそうな、掠れた声で小さく呟く。
「――まだ、その時ではなかったのだ。」
男は、一瞬乾いた笑みをこぼした。
その言葉は誰にも届かず、ただ夜空に舞い消えていった。
「クラビス! もう学校に行く時間よ!」
高らかな声に肩を揺さぶられ、クラビスはまぶたをこじ開けた。
「……ん、今起きるってば、」
眠気を引きずった声でぼそりと答えると、ベッドの横に立つ姉が、呆れたように笑っていた。
クラビスが眠い目を擦るのと同時に、台所からおじいちゃんの声が響く。
「おーい、リサー! バターはどこじゃったかの?」
ふと横目で姉貴の手元を見ると、指先がわずかに動いた。
直後、コトンと音がして、おじいちゃんの「あったあった、ありがとうな!」という声が聞こえる。
クラビスは寝ぼけ眼でその様子を眺め、胸の奥が少しだけざわついた。
(…ああ、やっぱり便利だなー)
「棚の奥にいつも置いてるでしょ? もう、おじいちゃんったら!」
魔法を自然に使いこなす姉貴を、クラビスは少しだけ羨ましく思う。
苦笑する姉貴の声を背に、クラビスは重い体を起こし、寝癖を手でぐしゃぐしゃと押さえながら洗面台へ向かった。
洗面台の前で、クラビスは両手を水にかざしてみる。
(少しでも使えたら、朝も楽なんだけどな…)
そっと集中するが、水はわずかに波打っただけで、結局はいつも通り蛇口をひねることになってしまった。
「……ちぇっ」
冷たい水で顔を洗い、髪を手ぐしで整える。
すると、香ばしい香りが漂ってきた。
そう、待ちに待った朝食の時間だ。
リビングに駆け足で向かうと、木のテーブルの周りには、既におじいちゃんとおばあちゃんが座っていた。
クラビスが椅子に腰を下ろすと、おじいちゃんが新聞を取るために指を鳴らす。
すると、紙面がふわりと持ち上がり、おじいちゃんの手元に収まる。
(相変わらず、さりげないなぁ…)
クラビスはパンを一切れ掴んでかじりながら、今度はおばあちゃんに目をやると、おばあちゃんは窓の外に目をやり、小さく指を動かしていた。
その瞬間、花壇の花びらが濡れ、朝露がきらりと光った。
クラビスの住むこの世界において、魔法は息をするのと同じくらい自然なものだった。
「今日は祭りじゃな、クラビス!」
祖父の声にクラビスはうなずく。
「うん。でも午前中は学校があるから、準備は手伝えないよ」
パンを頬張りながらそう言うと、
「そうじゃった、そうじゃった」
とおじいちゃんが笑う。
おばあちゃんもスプーンを置いて、
「もうこの街も60年になるんじゃねぇ。あの頃がまるで昨日のことのように思えるわ」
と目を細めた。
窓の外では、祭り用の小さな灯籠が魔力で空を漂い始めている。
特別な1日の朝――そんな空気があった。
穏やかな朝の静けさを破るように、姉が壁の時計を見て、突然声を上げた。
「ほら、クラビス!時間よ!」
「やばい! もう行かないと!」
慌てて立ち上がるクラビスに、おじいちゃんが笑いながら声をかける。
「気をつけるんじゃぞ、クラビス。」
「ありがとう、おじいちゃん!」
おばあちゃんも椅子から身を乗り出し、「忘れ物はないかい?」と優しく言う。
「大丈夫! 行ってきます!」
扉を開けると、朝の光と、街の方から聞こえる祭りの笛や太鼓の音が流れ込んでくる。
胸の奥が僅かに高鳴った。
(今日は… 特別な日になるかもな)
そう思いながら、クラビスは小さく息をつき、駆け足で家を飛び出した。
読んでくださって、本当にありがとうございます!
物語はまだ始まったばかりですが、マイペースに描き続けますので、時々見に来ていただけると嬉しいです!!!