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三度目のお話し2

「頭だって……誰かに触らせたこともないのに……」


「別に強制はしないよ」


 あくまでもモフ行為は一方的ではいけない。

 互いの合意があってこそ良いモフ行為なのだ。


 ラオナールをモフりたいという気持ちがレオの中にはあるけれどラオナールが望まないのにモフることはしないのである。

 これが正しいケモナー紳士。


「むっ……そう言われると引けないじゃないか」


「なんで?」


「おら、撫でろよぉ!」


「これは合意成立なのか!?」


 ラオナールはレオの脇に手を差し込むと持ち上げて頭を差し出した。

 レオよりも背の高いラオナールなりの心遣いなのだろう。


「じゃあ遠慮なく!」


 据え膳食わぬは男の恥とまで言う。

 この機会逃してなるものかとレオは手を伸ばした。


「あふんっ!」


「あでっ!」


 さわりとひと撫でした瞬間ラオナールが可愛らしい声を上げ、手から力が抜けてレオが地面に落ちた。


『ケモッ娘ラオナールの頭をモフりました。

 同意のあるモフです。

 接触の少ないモフりです。

 ラオナールは困惑しています。

 得られるモフポイントが減少します

 モフポイントが2回復しました』


「いだい……」


「なな、な、何しやがった!」


 ラオナールは困惑していた。

 初めての感覚だった。


 ゾクゾクと背中にむず痒いようなものが走って思わず変な声を出してしまったことに顔が熱くなる。

 でも意外と嫌でもないのが不思議だとラオナールは思う。


「あれがモフ行為」


 フーニャがモフり初体験のラオナールに対して先輩面で胸を張る。


「これを受け入れられないとね」


 ミカオも同じく先輩面。


「うぅ……恥ずかしいからまた今度にしてくれよ。心の準備するからさ」


「まだまだ」


「そうだね〜」


「ぐぬぬ……」


 勝ち誇ったフーニャとミカオにラオナールは悔しそうな顔をしている。

 まあ色々あったがこれで70モフポイントまで回復した。


「来るぞ! みんな戦闘準備だ!」


 偵察に出ていた獣人が戻ってきて一気に緊張が高まる。


「獣人ども! よくもやってくれたな!」


「……どうやら正規の兵士や騎士じゃないようだな」


 森から武装した人間たちが現れた。

 けれど同一規格の装備ではなくそれぞれ違うものを身につけていることから国の方で派遣された兵士ではないとトブルは見抜いた。


 ならばなぜ獣人を追いかけてきているのか。


「あいつは……!」


 レオは人間たちの中で先頭に立ち、怒り顔を浮かべている男に見覚えがあった。

 ある意味因縁の相手、この世界に来てから度々顔を合わせているグレーシオであったのだ。


「あいつはバーミットの手下だ」


 クロウルもグレーシオのことを知っていた。

 バーミットの右腕的な存在であり、バーミットがハンビトガイだと判明した今ではグレーシオも明確に敵となる。


「……お前、これはお前のせいか!」


 グレーシオもレオのことを見つけて顔を真っ赤にして怒りをあらわにする。

 レオのせいで色々と失敗した。


 そのためにバーミットにひどく責められ、グレーシオにはもう後がなかった。

 今回アルモフトラズ刑務所で獣人を抹殺するのにバーミットはお金を使って人を集め、グレーシオも関わっていた。


 グレーシオは当然のことながら今度こそ失敗は許されなかった。

 アルモフトラズ刑務所に忍び込んで牢屋の中の獣人を抹殺するだけの簡単な話であったのに獣人に逃げられた。

 

 どうにかして獣人を倒さねばならないと追いかけてきていたのだ。

 レオの顔を見て、またレオが関わっているのだと一瞬にして頭に血が上った。


「全員かかれ! あいつら皆殺しにしろ!」


 怒りにのまれたグレーシオの指示で人間たちが武器を抜いて獣人たちに向かっていく。


「獣人の力を見せつけてやれ!」


 獣人たちも人間に対抗して駆け出す。

 獣人と人間が衝突して激しい戦いが始まった。


『モフポイントを15使い、獣人の味方を発動します』


「みんな頑張れ!」


 レオが魔法を発動させる。

 アルモフトラズ刑務所の時は刑務所全体に効果を発動させるために大きなモフポイントを必要としたが、今回はそれほど大きな範囲に発動させることはない。


 獣人たちがレオの支援を受けて力強さを増し、戦いを優位に押し進めていく。


「ぐわっ!」


「ふん、汚らわしい……」


 基本的に獣人たちの方が強くて押しているが人間たちの中にも手練れがいた。

 無精髭の男は冷たい目で犬の獣人を切り捨てるとすでに死んでいるのに一度死体を蹴り付けた。


「あんたがこの中でも一番強そうだな」


 真っ先に戦いに加わりそうなラオナールはあえてすぐに戦わず一度広く戦いを見ていた。

 そして人間の中でも強そうな無精髭の男に目をつけた。


 一番厄介そうな相手を倒すことが獣人たちのためになるし、獣人たちの中でも強いラオナールが強い相手と戦うことで被害も抑えられる。


「人の言葉を話すな、ケダモノが」


「いいのか? 私に負けるお前はケダモノ以下になるんだぞ」


「お前らのような獣人は負けはしない」


「口だけならなんとでも言える……どちらが強い決めようぜ!」


 無精髭の男は怒り狂うバーミットとも平然と話していたメラビであった。

 実はハンビトガイの幹部の一人で今回のアルモフトラズ刑務所襲撃のリーダーである男だったのだ。

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