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潜入、アルモフトラズ刑務所2

 水が流れる横の道を歩いていく。

 進んでいくと鉄格子が道を塞いでいた。


「ちゃんと囚人が脱獄できないようにはなってるんですよ」


 そう言いながらメルビンダはポケットから鍵を取り出して鉄格子を開ける。


「ここからアルモフトラズ刑務所となりますが囚人に何を言われても一切反応しないでください。もしかしたら看守にも会うこともあるもしれませんがこちらも言葉を発さないようにお願いします」


 鉄格子から進んでいくと階段があった。


「私が上手く誤魔化しますので」


 階段を登っていくとざわつきがレオの耳にも届き始めてきた。

 地下水路のひんやりとした空気から抜け出して地上の空気感に変わっていく。


「ようこそ、アルモフトラズ刑務所へ」


 階段を登った先にあった鉄の扉の鍵を開けた。


「ここが……アルモフトラズ刑務所」


 レオが出てきたのはアルモフトラズ刑務所の端っこだった。

 横から見ていると分からないのだが光を取り入れるために天井は一部が鉄格子になっていた。


 そして長い通路に正面が鉄格子の小さい部屋が並んでいる。


「そういえば聞いていませんでしたがお好みの獣人は?」


「……女の子で」


「……分かりました」


 こんな時でも女性の獣人を選ぶとは正真正銘だなと薄い笑顔の向こうでメルビンダは思った。


「決して囚人とは目を合わせないでください」


「おい! メルビンダ!」


「なんだそいつは? 新入りか?」


「出せよ!」


 メルビンダと通路の真ん中を通って歩いていくと気づいた囚人の獣人たちが鉄格子まで前に出てきて声をかけたり鉄格子を叩いたりする。

 獣人そのものは怖くないけれど囚人のような荒々しい感じは怖い。


 レオは内心ビクビクしながら俯いて囚人たちの方を見ないようにする。


「なんだ、怖がってんのか? そんなんじゃここじゃやってけねぇぞ」


 レオをあざ笑う囚人たち。

 獣人だろうが人間だろうが悪い人は苦手だなとレオは思う。


 歩いていくと通路を塞ぐように鉄格子があってそこにも鍵がかけられていた。


「あそこは獣人の男のゾーンです」


 4方向に通路が伸びている何もないところを抜けてまた鍵のかけられた鉄格子の向こう側に行くとまた同じような牢屋が並んでいる。


「ここからが獣人の女のゾーンになります。お好みの獣人がいたらこっそりと教えてください」


「全員ください」


「はっ?」


「冗談です」


 入ってきた瞬間囚人の獣人たちが先ほどと同じように騒ぎ立てる。

 しかし今のレオにそんな罵詈雑言は聞こえていなかった。


 刑務所? 天国やないか! と倒れてしまいそうな気分になる。

 多種多様、いろんな種類の獣人が檻の中にいる。


 お好みは? と聞かれると全部! と無邪気に答えそうになってしまう。

 男だと恐怖を感じるぐらいだったのにこれがケモッ娘になると心躍るASMRとなる。


 男の獣人のところを通るよりもゆっくりと歩き、レオはケモッ娘たちの顔を見ていく。

 最初はレオを挑発するようなことを言っていた獣人たちもレオが血走った目でジロジロと見てくるので気味が悪くて勢いが削がれていく。


 最後にはヤバい看守がきたと女の獣人たちは牢屋の奥に引っ込んでしまう。

 なるほど、これは反骨心のある奴隷が欲しいはずであるとレオの様子を見ていてメルビンダは納得した。


「……もっといませんか?」


 一通りケモッ娘を堪能したレオは割と満足していた。

 しかしメルビンダからはレオに敵対心を剥き出しにするような獣人もおらず不満かもしれないと思っていた。


 メルビンダは必死に興奮を抑えようとするレオの顔をそうした不満を表しているように見た。

 想像以上の変人に獣人が押されてしまっている。


 明らかにお金を持っていそうな相手なのに満足いっていなさそうでメルビンダは焦る。

 ただレオの方もここにいる囚人が目的ではなかった。


 だからもっといないかと聞いた。

 メルビンダの勘違いとレオの目的が合致した。


「……絶対に秘密ですよ」


 仕方ないとメルビンダはため息をついた。

 女性の獣人の獣人のゾーンを一度戻っていくがレオに声をかける獣人はいなかった。


 そして鉄格子を通った先の十字路までやってきた。

 戻るのかと思ったが男の獣人の囚人ゾーンとは別の方に向かう。


「この先はなんですか?」


「この先は重犯罪囚人が収容されているゾーンとなります」


「重犯罪囚人?」


「ええ、これまでのゾーンではまだ軽い犯罪を犯したような人が多いのですが、ここから先に収監されているのは重い犯罪を犯した者たちです」


 大きな犯罪を犯したものはそれだけで普通の人とは違う。

 レオの妙な威圧感にもビクともしないような人もいるのではないかとメルビンダは考えた。


 本来なら重犯罪ゾーンにレオを入れるつもりはなかった。

 けれど最初からメルビンダがどこか焦っているとレオは感じていた。


「ここが重犯罪囚人の牢です。男女関係なく収監されていますが奥に行くほど危険な犯罪者となります」


 二つの鉄格子の扉を抜けた先には軽犯罪の牢屋よりも横幅の狭い牢屋が並んでいる。

 軽犯罪の囚人たちはレオたちを見せものかのように寄ってきたが重犯罪の囚人たちは静かだった。

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