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潜入、アルモフトラズ刑務所1

「正直なところ、看守の稼ぎではなかなか厳しいところもありまして」


 怪しい刑務官メルビンダに誘われてレオはアルモフトラズ刑務所まで来ていた。

 といってもアルモフトラズの正面ではなく横にある森から回って高い壁のある側面近くに来ていた。


 メルビンダは慣れているようにサクサク歩いていき、レオはただ黙ってついていく。


「こうしたことも……時には必要でしょう。どうせ閉じ込めておくしかできないのなら金にしてしまった方がいい。今は特に金も必要で。レオ様のようにお金をお持ちでしたらこちらも喜んで取引させていただきます」


 アルモフトラズ刑務所の横には小さな小屋があった。

 大きな壁の修繕や補修などを行うための資材などを置いておくためのもので普段は誰も使わない。


「ここまできてなんですがどうして刑務所に収監されるような奴隷を?」


 小屋の中はホコリっぽい。


「……反抗的な奴隷が欲しくて」


「反抗的な奴隷ですか?」


「ただ従うだけじゃない、どこか反抗的な目をした奴隷が欲しいと思ったんです」


 これはみんなで考えた言い訳だった。

 アルモフトラズに収監された獣人を奴隷として買いたいとレオがお金を見せ、売ろうとする奴隷商人を探す作戦を立てた。


 ハンビトガイが中の刑務官を全て抱えない限り収監された獣人を全て抹殺するなど不可能である。

 現実的に刑務官以外の手を借りる手段があるのではないかという予想があった。


 それにアルモフトラズ刑務所では収監者を奴隷として売っているという噂もあったのだ。

 正面から出る以外に中に出入りする方法があるのだと見ていた。


 そのために奴隷商人を探したのだけど他にも奴隷を売っている中でどうしてわざわざ刑務所に収監されるような奴隷を求めているのかと聞かれてしまうとなかなか困る。

 怪しまれない理由作りを事前に行なっていた。


「普通の奴隷じゃつまらないんです。丈夫で反抗的、なのに逆らえないような獣人の奴隷が良くて」


 犯罪行為に使いたいなどの理由ではとてもじゃないが売ってはくれない。

 そこでミカオがレオの変態性を活かす形で理由を作ることにしたのである。


 ケモッ娘が欲しいという方向を変態チックに脚色した。

 確かに反抗的なケモッ娘もそれはそれでいいかもしれないなんて考えている間に言い訳の内容も固まってしまった。


「反抗的な奴隷が欲しい……ですか……」


 ただその言い訳ではレオがケモッ娘にひどいことをするような印象を与えるではないかと若干の不満はあった。

 けれど言い訳はしっかりと狙い通りの印象をメルビンダに与えた。


 メルビンダはレオのことを異常者だとみなしていた。

 最初は単なる獣人愛者でちょっと変わった経歴の獣人を求めているのだろうぐらいに考えていたのだが、話を聞いて違っていたと笑いそうになる。


 変態なことは間違いない。

 けれど想像していた方向よりもヤバそうだと感じる。


 一見してレオは人が良さそうだし奴隷を雑に扱っているようには見えない。

 だが反抗的で丈夫な奴隷が欲しいなんて要望を持つのは極まった人しかいない。


 どれだけの奴隷を壊してきたのだろうかなどとメルビンダは腹の中で考える。

 わざわざ丈夫なと付け加える人の目的は押しはかるまでもない。


 大体の場合丈夫な奴隷が欲しいことの目的は暴力でも振るうのである。

 つまりメルビンダはレオが奴隷の獣人を暴力でも振るって使うために求めていて、普通の奴隷では物足りなくなってしまったようなやつだと判断したのである。


 レオには獣人に対する偏見や嫌悪感がないのでそうしたところが異常者の目にも見えないこともないのだ。


「こちらに着替えてください」


 メルビンダの中での警戒度合いが一つ下がった。

 金を持っているが故に狂ったような癖を持つ者は世の中に一定数存在する。


 そうした人はどこかに通報するリスクも少ない。

 メルビンダはレオに自分が来ているのと同じ制服を渡した。


「流石にその格好のままではバレてしまいますから」


 ちょっとばかり緩いけれど偽装のために少しの時間着ているだけなので問題はない。


「奴隷は連れていけませんのでここにいるように命令しておいてください」


「フーニャ、ここにいるんだ」


「はい」


 フーニャはレオの命令を大人しく受け入れる。

 実は一緒行きたいけどここは我慢である。


「ここのことは秘密で頼みますよ?」


 メルビンダが小屋の奥にある棚を動かすと床に階段があった。


「ではこちらに」


 小屋に置いてあったカンテラに火をつけてメルビンダが降りていき、レオもその後を追いかけていく。

 下に降りてみるとそこは水路のようだった。


「ここに大きな刑務所が建てられたのは土地が余っていたからというだけではありません」


 営業トークとでもいうのか歩きながらメルビンダは軽く今いる場所の説明をしてくれた。


「こうした水があるから多くの人数を抱えていても平気なのです」


 レオがいた世界のような水道システムなんてものはない。

 多くの人が生きていくためにはそれだけの水が必要となる。


 アルモフトラズの地下には豊かな水源があった。

 だから大規模な刑務所で多くの囚人を収監できているのだ。

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