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ケモッ娘の寝顔可愛し2

「実は私も……解放軍なんだ」


「そうだったのか」


「解放軍として活動している時に失敗しちゃってあいつらに捕まったんだ。あなたがいなかったら……私はいつ殺されたかも分からない」


 ミカオが生かされていたのはスキンヘッドの男の気まぐれでしかなかった。

 スキンヘッドの男が飽きてしまえばミカオは殺されていてもおかしくなかったのだ。


 レオが来てくれてよかった。

 レオを信じてよかった。


 奴隷の首輪まで外してくれてミカオはレオに対して返しきれない恩を感じている。

 獣人に偏見はないし褒めてくれる。


 レオに撫でられるとなぜなのか気持ちがいい。

 他の人が頭に手を伸ばしてくれば警戒するのにレオの優しくて大きな手が伸びてくると自然と耳が畳まれて撫でを受け入れてしまう。


 時々ミカオを見る目は怖いけれどなんでそんなバキバキの目をしているのかミカオは理解していない。

 怒っていないことは雰囲気から分かる。


 でも怒っているのに似たような雰囲気はあると時に感じていた。

 ただそれはレオの変態性が抑えきれずに溢れ出しているにすぎない。


「ともかく解放軍に行けば安全に匿ってくれると思うんだ。レオならきっと解放軍も受け入れてくれると思うし」


 獣人であるミカオを助けてくれて偏見を持っていない。

 そのことだけでも解放軍に入るのにふさわしい。


 さらには奴隷の首輪にかけられていた従属の魔法まで破壊する力を持っているのだから文句はないだろう。


「じゃあ解放軍のところに向かおうか」


 獣人の組織ならレオが受け入れられないことはあってもミカオは受け入れてもらえる。

 レオとミカオは解放軍のところに向かうことにした。


「といっても、解放軍ってどこにいるんだ?」


 目標は定まった。

 問題は解放軍がどこにいるか。


 ただでさえ人間と仲が悪い獣人の人間に反抗するような組織が表立って拠点を構えているとも思えない。

 人に聞いたって多分分からないだろうからどうやって探していけばいいのか見当もつかない。


「私解放軍の支部があるところ知ってるよ!」


 自慢げに胸を張るミカオ。

 元々解放軍所属なのである程度解放軍のことは知っていた。


「ならそこに向かおうか」


 慌てて町を出てきたので思いつく必要なものしか買わなかった。

 冷静になってくると足りないものも色々見つかる。


 地図なんかもそうだ。

 周りの町の確認もしなかった。


 ひとまず今は道沿いに歩いていって次の町に着いたら地図の確認や購入が必要だなとレオは考えていた。


「そろそろ日も落ちてきたな」


 レオがいた地球と違って大都市のど真ん中以外に街灯なんてものが道端にはない。

 太陽が落ちてしまうと辺りは真っ暗になる。


 早めに夜の準備をしないと暗くて大変なことになってしまうので日が落ちてきたと思ったら夜のことを準備し始める。

 道端に開けた場所を見つけたのでそこで野営の準備をすることにした。


 落ちている枯れ木を集めて小さい焚き火を作る。


「便利なもんだな」


 この世界の文明は不思議な発展を遂げている。

 スイッチを押すと火がつくライターのような道具が売っていた。


 魔道具と呼ばれるものらしく、魔法を応用したものであるらしい。

 モフポイントを消費することなく火をつけられるから楽でいい。


 多少値段はしたけどスキンヘッドの男のお金だし金庫にあったお金はかなりの金額だったので勧められるままに買ってしまった。

 今では買ってよかったなと思う。


「アイツの頭もこれぐらい光ればいいのに」


 焚き火を焚いたけれどこれで一晩過ごすつもりはない。

 枯れ木を見つけるのも簡単ではなく焚き火を維持しておくのも大変。


 だから本命の明かりは別のものを使う。

 こちらはランタンのような魔道具で結構明るく光ってくれる。


 ランタンも勧められるがままだったが、お高いだけの価値はある。

 ライターもランタンも魔物から取れる魔石というものに溜め込まれている魔力を燃料として稼働している。


 自分で魔力を込めれば壊れない限り半永久的に使えるエコな道具でもあるのだ。


「ふふ、いい匂い」


 明かりがあるのにどうして焚き火を用意したのか。

 それはご飯を調理するため。


 小さい鉄鍋でベーコンを焼く。

 旅の最中でも温かで調理したてのものを食べるのは心の回復にも役立つ。


 ベーコンが焼けたらチーズを乗せてとろけさせ、日持ちする硬めのパンの上に乗せる。


「先にどうぞ」


「ありがとう、レオ」


 ミカオはレオからパンを受け取ると嬉しそうに一口。

 食べる姿も可愛らしい。


 ご飯を食べてお腹を満たすと後は寝るだけになる。

 日が完全に落ちると空気もやや冷える。


 布団がわりの厚手のマントで体を包み込む。

 レオは隣に座るミカオの顔を見る。


 日中レオといる時は笑顔を浮かべていることも多く可愛らしいミカオ。

 しかし今は燃え尽きかけた焚き火を見つめていて、その横顔は凛々しい。


 オオカミらしくミカオの顔の造形は凛々しさとカッコよさもある。

 それでいながらニコリと笑うから可愛いと思う側面もある。


「どうかした?」


 レオの視線に気がついたミカオがレオを見る。

 金色に輝いて見える瞳もまた美しい。


「先に寝たらいいよ」


「いいの?」


「ああ、俺のこといいから」


「ありがとう。じゃあ先に寝るね」


 この世界には魔物と呼ばれる危険な存在がいる。

 レオはまだ魔物にあったことはないけれど夜不用心に寝てしまうと魔物に襲われること危険性があるので、レオかミカオのどちらかは起きていて見張りをしなきゃいけない。


 レオが起きて見張りをするからという言葉に甘えてミカオは地面に丸まるように転がって寝始めた。


「可愛い……」


 目をつぶって無防備にスヤスヤと眠るミカオの顔をレオはひたすらに眺めている。

 最も危ないのはこいつなのではないか。


 そんなツッコミを入れる人はこの場にはいなかった。

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