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東国西町ランデブー  作者: ぱるこμ
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プロローグ

初投稿です。読みに来てくださりありがとうございます。


それ程でもない昔。僕はとてもお喋りが好きな少年でした。軽口や冗談もいいました。それこそ、子供がよく言う「死ね」とか「殺すぞ」とか。勿論冗談で。それ以外にも幸せになれそうな言葉も発して来ていたし。


普通に、ただの単語として発していました。

絵本や物語が好きで、毎日読んでいました。小学生になってからは児童文学も。

一番感動したプレゼントは、おばあちゃんが小洒落た人でして。

童話の本とハンカチを綺麗なお菓子の缶に入れてプレゼントしてくれたんです。幼いながらに、すっごく嬉しくて、今でも大切にしています。


僕は次第に物語を書くようになりました。拙い文です。ストーリーも短いです。文脈も可笑しいです。それでも書き続けていました。想像や語るのが大好きで。

よく家族に聞かせては改善点や良かった点を聞き出していました。


そんな生活が続いたある日のことです。

冬休み。十二月二十三日。終業式の後。僕は明日から家族と一緒におじいちゃん家に泊まりに行きます。そこで年を越して、新年を過ごす。毎年の恒例です。

友達の礼音くんが僕に近付いてきます。


「累、お前明日から本州に行くんだろ?羨ましいなぁ。俺のじいちゃんばあちゃんは不思議町の人間だからさぁ。里帰りもクソもねぇや。あ、交通事故に遭って死んだりして?お前んちって鈍臭いからさぁ!」

礼音くんの冗談に僕も言い返します。

「鈍臭くないし。物静かなだけ。もし事故に遭ったら、責任取ってもらうからな。言霊の罪で有罪だ」

「冗談だよ、じょーだん!じゃあな!あーばよ~!」


ちょっと面倒な奴ですが、彼は悪気がないので気にも留めません。

僕が住む町は不思議町という本州から離れた土地にある町です。本州に行くには、大きな橋を車に乗って渡るしか方法はありません。だから、本州に用事がある人は車か、バスに乗る必要があります。


電車?…ありませんよ

これも他愛のない会話の一部です。

だけど…


・・・


楽しい帰省は地獄に一変しました。

本州に通じる大きな橋を走行していたら、逆走車が現れて、僕達家族の車に衝突しました。

ひっくり返った車。シートベルトのお蔭で放り出されなかったけど、ガソリン臭い中、宙吊りになり、意識が朦朧とします。


「た、すけ…」

「累、大丈夫よ。大丈夫だからね」

「お、ねえちゃん…」


隣にいる姉も怪我をしているのに、励ましてくれました。

安心して、気を失いました。


…次に目が覚めたのは病院でした。


そして、両親が死亡したことも知りました。


お見舞いに来てくれたと思った礼音くんとお母さんからは、文句を言われました。


『貴方が変なこと言うから…うちの礼音が塞ぎこんで話をしてくれなくなったのよ。どうしてくれるの?うちの子に、罪の意識押し付けるようなこと言わないで頂戴。大体ねぇ…』


その後も文句を言われ続けました。看護師さんが来るまで、ずっと止まりません。

この時、僕は言霊の力が怖くなりました。



言葉は人を殺せる。言葉巧みにどうとでも操れる。言葉は武器だ。形の無い、武器。

そして呪い。



おじいちゃんとおばあちゃんは、両親…息子夫婦が死んだことがショックで寝込むことが増えました。介護も必要になりました。だから、親戚の皆が面倒を見ることになりました。

そして次に始まったのは遺された子供…僕達の押し付け合いです。


――残された子供の面倒まで見れないわよ。


――自分達家族のことでも手一杯なのに。


――大体、あの事故が起きなきゃ父さん達はまだ元気だったのにさぁ…


――こっちも家計がキツイのよ。面倒見れないから!


――大体、なんで田舎なんかに住もうと思ったのか理解できない。本州にいればこんな面倒なこと…


――アイツ、昔から変な奴だったからな。


僕がいるのに。廊下で聞き耳を立てているとも知らずに、伯父さん達は両親の悪口や、僕達をどうするか話し合います。



――施設に入れるのが手っ取り早いだろ



僕は、怖くなりました。



気が付いたら、僕は隣の不思議ヶ丘村にある自殺の名所に立っていました。展望台になっている丘。この展望台から飛び降りれば、死体は見つからないって噂。もう、僕には何も残っていない…


「不思議町って、結構広かったんだな…」


上から眺める景色は、とても綺麗で。遠くには、本州の影だって見える。

手すりに掴まり、身を乗り出そうとしたときでした。

昼間で快晴だった空が急に暗くなったのです。夜になり月が現れたのです。町や村は停電を起こし、騒ぎ声がここまで聞こえてきます。


「なに、が起きているの」


この村自体街灯は多くありません。闇に呑まれる、きっとこういう感覚何だろうなって。真っ暗で、何も見えなくて、どっちが前で、後ろかも解らない。

怖くなってしゃがみこむとヒラヒラと淡い光の線が頭上をチラチラと蠢きます。


「累!」

「お、姉ちゃん…!」


暗い中、懐中電灯を片手に、退院したばかりの姉が僕を捜しに来てくれました。体だって、まだ痛いだろうに。


「累、捜したよ…。こんな危険な所にいたらダメ。お家に帰ろう」

「でも、もう誰もいない…誰も助けてくれないよ。僕達、施設に入れられちゃう!離れたくないよ!」

「私がいるよ」


僕は少し背の高い姉を見上げます。


「私が累を守る。ちゃんと衣食住、困らないように働く!だから、これからは二人だけど…家族としてやっていこう」


走って捜してくれたからか、姉の手は手袋をしていないのに暖かかった。僕の頬を包むその手に、とても救われた気がした。



十二月三十一日。東国から太陽が消えた。


他国にはちゃんと陽が昇り、沈み、月が昇るのに。


東国だけずっと月が昇っている状態になった。不思議な現象に世界は驚いた。研究したいと申し出が止まらなかった。


こんなヘンテコになった不思議な国の、不思議町に僕、雲母坂累と姉の真昼は住んでいます。

あの太陽が消えた日から七年…

僕は順調に陰キャ、引きこもり予備軍、マニュアルが無きゃ上手く会話が出来ないダメ人間として成長しています。


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