8話 私の王子様
人によってシリアスかも
「清水、九条先輩に勝ったんだって」
「えー、また清水が勝ったの
結局、九条先輩、清水先輩に勝てないままだったね」
「ほんと、空気読んで欲しいよね」
廊下を歩いているとそんな声が私の耳に入ってくる。
チラリとその声のする方を見ると確か陸上部の2年の同級生達だった気がする人たちがだった。
「九条って誰よ」
私はそう彼女達に聞こえるように言う。
そう言うとムッとした様な表情でこっち睨みつけてくるが私は構わずに睨みつけると驚いた様に何処かに行ってしまった。
「なんか言って来なさいよ」
私はそう独り言を言った。
〜♪
「有栖、高校どこに行くか決めたのか?」
私が家のソファーでくつろいでいるとパパがコーヒーを飲みながらそう言う
「どうせ推薦取れるからその高校行くつもりだけど」
私がそう当たり前の様に言う。
するとパパは「そうか」と何処か困った様に言う
「ダメなの?」
「そうじゃないんだ。パパは有栖のやりたい様にやれば良い。ただ、有栖はそれで良いのかなって思ってね。
陸上もパパが有栖に進めたのは良いけど有栖の意志を聞いたことなかったからな」
パパはそう申し訳なさそうに言う。
そう言われると私は少し考える。
思えば昔からおてんばで走るのが好きだった私にパパとママが将来は陸上選手かしらね
そう言ったのが始まりであり、かれこれ中学から陸上部に入って高校までやって来たけど......今の私は走るのが好きなんだろうか
「まぁ、無理してないか?って言いたかっただけだ」
そう言った後、パパの顔は何処か心配した様だった。
そうして、自室へと戻っていった。
〜♪
それから、数日が経過した。
私はあの日以来考えた結果、高校のオープンキャンパスに来ていた。
進路は今のところ推薦任せだけで特に変わっては居ない
まぁ、ただこの高校に来たは良いけど.....私が受験を受けたとしても偏差値が高いせいで受からなそうね
それにしても、この高校は合わなそう
しばらく見て回ってみたけど、なんかお堅そうね
それが、この高校に来ての感想だった。
「えー、見てあの人カッコいい!」
「どこどこ......ホントだ、先輩なのかな」
私はその声に釣られて見る。
そこに居たのは夢物語の中から出てきた様な昔。ママが読んでくれた絵本から出てきた様な王子様見たいな人だった。
(あの人もここ受けるのかな)
私は無意識にそう思ってしまった。
ただ、私は次の言葉に衝撃を受ける
「あっ、でもあの人スカート履いたない?」
「えっ、女なの!?」
ただ、それでも私の胸の高まりは治らないのだった。
〜♪
「最近、有栖の様子変じゃないか?」
そう、所々に白髪の生えた口に立派な髭を生やしたダンディー紳士がたくましく力強くだが心配そうな優しい声ででそう目の前にいる歳を重ね皺が目立つが、何処か美しい貴婦人に言う
「あら、あなた知らないの?
有栖、今受験勉強してるのよ」
「そうか!」
男はそう安心した様な嬉しそうな顔と声を出すがすぐに顔が曇り
「......だが、やっぱり無理させてたのかも知れないな」
その姿を見た貴婦人は男のもう何度も見たコロコロ変わる顔に少し声を出し笑い
自分も思うところがあるのか
「そうかも知れませんね」
そう彼に同意する。
でも、男は娘の自分から行きたいと言った高校が気になり興味深そうにコーヒーを啜りつつ聞く
「それでどこ受けるんだ?」
「ここですよ」
そう彼女が見せてきた高校のパンフレットの高校名を見て吹き出す。
「ここって巷で有名な進学校だろ!
大丈夫なのか?」
そう男は娘の将来を心配するあまり声を荒げてしまう
貴婦人は男が吹いたコーヒーを拭きつつ。
「有栖を信じるしか無いじゃないですか
それより、あなたも拭いてくださらない?」
そう言われた男は、まだ心配そうだが彼女に同意した後に自分が吐き出したコーヒーを彼女と一緒に拭き始めた。
〜♪
それから一年が経過し、いよいよ受験日となった。
ただ、その日の私は側から見ても調子が悪そうに見えるくらい絶不調だった。
「有栖大丈夫か?」
そう車から降りた時、パパにそう心配するような顔をしながら言ってくる。
「よ、余裕よ!」
私は虚勢を張るように言うが恐らく実の父が見破れない訳ないだろう。
ただ、パパは
「そうか、頑張れよ!」
そう安心させるような声音で言ってくれたのだった。
ただ、受験会場に着いた後も体調は良くなるどころかどんどん悪くなっていった。
そのせいか嫌なことまで思い出してしまう。
『清水、推薦蹴ったらしいよ』
『ここですよえー、結構良いとこだったでしょ?
それに、清水さんあんまり頭良くないんじゃ無かった?』
『ね、運動のしすぎで頭まで筋肉になってるのかしらね』
本当に嫌なこと思い出しちゃった。
言われてる時は何とも無かったのに、なんでこんな時に思い出すのよ。
本当に私、受かるのかな?
ついそう思ってしまう程に私は追い詰められていた。
そんな時だった
「ねぇ、君大丈夫?」
私はその男性にしては高く女性にしては低いでも何処か安心感のあるその声に向かって頭を上げる。
そこに居たのは私がこの高校を受けるきっかけになった王子様だった。
「って、大丈夫じゃ無さそうだね。
うーん、あっ、そうだ!」
そう、王子様はポケットに手を入れ何かを取り出そうとした。
「はい、これ
まぁ、あんまり効果ないし今渡したところでねって感じだけど、せっかく頑張って来たんだしね」
そう私に渡されたのは何処か古びたお守りだった。
「汚いよね
まぁ、無いよりはマシかなって思ってね
それに、私もこのお守りに助けてもらったし少しでも君の力になれたらなって」
「なんで、そんなに良くしてくれるの?」
私がそう泣きそうな震えた声で言うと彼女は笑い
「困ってる子を放って置けないしね
ってもう時間ないね。それ、受かったら返しに来てよ。」
「待って!」
「ん?」
「名前」
「如月風吹
それじゃ、君も急ぎなよ!」
それから、私はこの高校に受かった。
私を救ってくれた王子様にもう一度、会う為に