6話 あーんとお怒りお嬢様
「彗月くん、今日は一人なの?」
昼休み、いつもの場所で如月さんから声をかけられる。
なんか、如月さんと話すのは昼休みのこの場所か放課後の空き教室に固定化されて来てるな。
「いや、今日は一人です。
あいつ何かバスケ部に好きな子が出来たらしくてその子と食べるっぽいです。」
今朝、剣城から聞かされた時は驚いたけどバスケ部可愛い子多いらしいから落ちるのは必然なのかも知れない。
「ふーん」
すると、如月さんは俺の隣に腰掛ける。
その瞬間に髪が揺れフワッと甘い甘すぎない爽やかさを感じる匂いが鼻口をくすぐる。
それと共に昨日の光景が頭に浮かび俺は少し距離を離す。
「彗月くん、どうしたの?」
そう如月さん不思議そうに聞いてくる。
如月さんは昨日のことを忘れているのかもしくは分かってからかっているのか。
ただ、中々に刺激が強い。
「き、如月さん、こそ」
「ん?、折角だし、ご飯一緒に食べようかなって思って.....ダメ?」
と持って来ていたバックから弁当箱を取り出し出しながら聞いてくる。
「べ、別に良いけど」
と狼狽えながら言う。
その、俺の態度に如月さんは微笑む。
昨日はあんなに赤くなっていたのに、もしかしたら夕陽がそう見せていたのか
俺はチラリと如月さんを見る。
如月さんは美味しそうにしながら食べていた。
「美味しそうに食べますね」
あまりにも美味しそうに食べていたのでつい聞いてしまう。
それに、如月さんは少し考える仕草をした後
「まぁ、食べるのは好きだしね
て言うか、見ないでよ恥ずかしい」
そう口元を押さえながら体で隠す様に俺の座ってる位置と逆方向に寄れる。
「ご、ごめん
今日はお昼ご飯食べるんだなーって」
「また、迷惑かけたく無いから
それに、毎日練習しないと上手くならないからね」
とコロッケの様なものを箸で掴み見せる。
「へー、これ全部作ったんですか?」
「このコロッケだけかな。
食べたい?」
とコロッケを掴みながら首を傾げる。
「えっ」
少し驚き声を上げる。
如月さんはそれを聞こえてるのか知らずに
「ほら、あーん」
そう、箸を口元へと持っていこうとする如月さん
それに俺は逃げる様に体が傾くが逃げ場は無い。
そして、視線が如月さんの持っているコロッケと如月さんの手に視線が行く。
俺は諦めた様に口を開けた
「ちょ、ちょっと待ちなさーい!!!」
その瞬間、ものすごい大声が聞こえてくる。
そこにいたのは黒い艶やかな髪を揺らした小柄なお嬢様の様な少女清水有栖だった
それに、俺は今がチャンスと態勢を起こし荷物を持って逃げ出した。
それは何故か清水がものすごい形相と勢いでこっちに向かってくるのが見えたのと顔がものすごく熱く今すぐここから逃げ出したかったからだ。
「ちょ、待ちなさい!」
それに清水も俺を追いかける様に走る。
如月さんの前を通った時顔を軽く隠しながら追いかけるのだった。
そして、残された一人の少女は誰にも聞こえない様な小さな声で
「緊張した」
そう呟き。
さっきまで彗月の口に運ぼうとしていたコロッケを見た後恐る恐る食べ
惜しい事したかな?
そう言えば彗月くんを追いかけてた子をどこかで見たような?
〜♪
俺は走っていた。
それは何故か、後ろから凄い形相で追いかけてくる少女から逃げる為だ。
ただ、走ったから2分以上走っているのに一向に振り切れない。
むしろ距離が縮まっている気さえする。
こっちは割と本気で走ってる気がするんだけど
それと共に頭の中は如月さんの事でいっぱいになっており何故、如月さんはあんな行動をしたのか?俺は如月さんにとってなんなんだろうなど、そんな考え事をしているせいか勢いよく横から走って来た生徒ととぶつかってしまう。
「いってなー、気をつけろ!!」
そうぶつかった生徒に大きな声で怒鳴られる。
「すいません!」
俺はすぐさま謝る。
その後、その生徒は舌打ちをした後、先を急いで行った。
俺は申し訳なさを思いつつ生徒の後ろ姿を見たあとに後ろを振り返る。
「全く、ちゃんと前見てなさいよね」
と様子を見ていた清水が近づいきながら言う。
俺は彼女の言葉に少しイラつきつつ、実際、悪いのは俺なので何もいえなかった。
それに、走っていたせいで少し疲れていたのもある。
と言うかコイツはあれだけ走って息が切れてる様子も無い。
俺は息を整えて
「はぁー、それで、どうしたんだ?」
理由は聞くまでも無いけど
「はぁ?アンタが風吹さんと何仲良さそうにお昼食べてるのよ!
あ、あーんなんかしちゃって!」
正直、如月さんから逃げる為に彼女から逃げたとは言え、あの場面は自分でもアウトだとは思う。
どう答えようか迷っていると
「なんか、あの子、またあの子怒ってない?」
そう微かだが通りかかってきた四人組の女子生徒の会話が聞こえてくる。
よく見れば周りにはチラホラと人がいる様に見えた。
おそらく、清水に向けて言っているのであろう。
「前は先輩だったよね」
「確か陸上部の先輩だっけ?」
「そうそう、クラスでも先生にも上から目線なんだってよ」
「なにそれー」
そう続け様に聞こえてくる。
チラリと清水の方を見ると彼女は何か言いたそうにしていたがどこか押さえている様だった。
「場所、変えるか?」
そう彼女に言ってみる。
すると顔が形相が変わり
「むっ、いいわよ!
とりあえず、放課後空き教室に来なさい。
いいわね!」
そう俺に向け言い放ち帰っていった。
怒っている様なそんな足取りでどこかに行ってしまった。
俺はそんな彼女を見送った後にチャイム音が鳴り響き
「あっ、昼飯食べてない」
そんな事を思い出すのと同時に俺は清水の去り際に見せたどこか悲しそうな顔を思い出した。