3話 保健室と秘密
俺は如月さんが倒れ保健室に運んだあと先生が居ないので保健室で待機していた
「はづきくん」
俺はその弱々しいか細い声が聞こえ、その声のする保健室のベッドを見る。
そこには、目を開け起きあがろうとしている如月さんがいた。
「如月さん、大丈夫ですか?」
俺は心配そうな声で如月さんに声をかける。
それに、如月さんは起き上がりいつもの明るい声で
「全然大丈夫だよ
少しフラッとしただけだし」
そう聞こえる筈だがやはり如月さんの声にはいつもの覇気が溢れる様な声とは違いどこか元気がなかった。
そして、俺は思い当たる節があり如月さんに
「やっぱり、昼食べて無いからじゃ無いですか」
と、お昼の事を思い出し聞いてみる。
如月さんは少し目を背ける。
俺はその態度で確信して
「少し待っててください」
「どこか行くのかい?」
俺は保健室を出て教室へと向かった。
〜♪
「あっ、おかえり〜」
といつもの調子を取り戻していた如月さんがそう言う。
俺は本当にもう心配いらない気がしてきたが手に持っているラップに包んだジャムを挟んだサンドイッチを渡す。
「せっかく取ってきたので食べてください」
「えと.....」
如月さんは困惑している。
まぁ、いきなり渡されたら困惑するよなと思い。
「お昼、食べてないんですよね。
今日の余りですが食べてください。」
「いやいや、大丈夫だって、元」
そう言いかけた時、如月さんの方から可愛らしい音がなる。
それは紛れもなくお腹の方から聞こえており如月さんは恥ずかしいのか顔を伏せる。
「お腹空いてるんですよね!
帰りに倒れられても困りますから食べてください」
「いや、今のはベッドが軋む音だから」
と、そう言い訳を捲し立てようとした時、また如月さんのお腹が鳴る。
「分かったよ。食べるよ!」
どこか自暴自棄になりながら如月さんはサンドイッチを食べ始めた。
「ご馳走様」
しばらくして今まで無言で食べていた如月さんが口を開く。
「これで、お腹も鳴らないですね」
「むっ、今日は何だか彗月くんは生意気だね」
お腹の件を掘り返した俺に如月さんは顔をむっとしながら俺に向けて言う。
「そんなに、お腹が空くなら食べれば良いのに」
「彗月くんは全く、乙女心がわからないね。
これだから女子にモテないんだよ」
と俺が確実に刺さるカウンターを喰らう。
乙女心って中学は男とばかりつるんでいた俺とは程遠い言葉である。
「じゃあ、何でお昼食べなかったんですか?」
「秘密に決まっているだろう!」
と、訳もわからず怒鳴られ、困惑している所で扉が開きそこから保健室の先生が出てくる。
保健室の先生は漫画に出てくるどこか大人の色気が漂う女性だった。
「彗月くん?だっけ?
もう戻って大丈夫だよ」
保健室に入ってきた先生にそう言われ俺は頷き椅子を立ち保健室を出ていく。
その時、先生の前を通りそっと
「彗月くんはもう少し女子を気遣わないとね」
と小声で言われた。
どうやら聞いていたらしい。
ただ、いまいちピンと来なかった俺は頭に少し残しながら体育の授業へと戻っていった。
尚、女子から根掘り葉掘り聞かれたそうになった所を鬼怒が怒鳴り泣く泣く戻っていった。
俺は安堵したが剣城には色々聞かれるのだった
〜♪
その後、6時間目には多分元気になっているだろう如月さんが現れ、女子に心配されながら6時間目を受けていた。
そして、放課後である。
剣城は今日も部活であり颯爽と部活へと向かっていったが俺はダラダラと帰りの準備をして校門へと向かっている時、如月さんと初めて話した教室の前で声をかけられる。
「彗月くん」
それは窓の方から聞こえもしかしてと思い開いている窓を覗き込む。
そこには隠れている如月さんがいた。
「何してるんですか?」
俺は窓の下を覗き込みながら話しかける。
それに如月さんはしゃがみコチラを見上げる様に
「取り敢えず、こっちおいで」
と、如月さんは自分が座っている床を手のひらで軽く叩く。
俺は少し迷いつつ靴を脱いで窓から入る。
教師にこの光景を見られたら怒られそうだなと思い周りを確認しながら
「それで何か様ですか?」
「いや〜、偶々隠れてる時に彗月くんが来たからお礼したくてね.....改めて5時間目はありがと」
そう、体育座りでコチラを見ながら言われる。
改めて言われると恥ずかしくなり目を背ける。
それに、如月さんはニヤニヤしながら
「なに、照れてるの?」
からかうように言ってくる。
俺はそれに苦し紛れに
「照れてないですよ」
と、如月さんとは全く逆方向を見ながら言う。
なぜなら、恐らく顔が赤いからである。
人から面と向かってありがとうなんて言われた事がない俺は顔を赤くして照れていた。
「そうかな〜?ならこっちを見てみてよ」
「.....嫌です。
ていうか、何か用があったんじゃないんですか?」
と誤魔化すように言う。
それに如月さんは思い出した様に
「そうそう、彗月くんはハンバーグとか好き?」
「?......まぁ、好きですけど」
「良かった。それだけだよ」
そう、あっさりと言う。
俺は何も分からず頭にハテナを浮かべていた。
「全く、鈍感だね」
そう、去り際に如月さんに言われる。
俺ははてなマークを浮かべながら立ち上がり窓から出ようとした時
「何やってる!彗月!」
と、教師に運悪く見つかってしまうのだった。