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20話 風邪

すごく怠い。

体を起こすのすらめんどくさい。

そして、寒い。夏なのにどこか肌寒く頭の中で釘を刺されているのかと思うぐらい痛い。


どうやら俺は風邪を引いたらしい。

これは俺がと言うべきか、俺は中学生になってから体調が悪い事があれど、どれも今ほどでは無い。


「にゃーにゃー」


こたつが俺の上に乗っている。

餌をくれと言うのだろう。

全く飼い主がこんな状況なのに。とは言え空腹は抑えられるものでも無いし、人間でも空腹を耐える事は厳しいのだから本能に順従な動物が耐えられるものでも無いだろう。


俺は体に鞭を打つように起き上がり階段を降りて猫の皿にご飯を入れる。

こたつが餌を食べ始めるのを見届けて俺は体温計を探す。が、中々見つからない。


そもそも、俺の両親も体調を崩すことなんて稀であり体温計をあまり使わない為どこに置いていたのか全く分からない。

しばらく体温計を探していたが、益々体調が悪くなるため俺は体温計を探すことを諦めた。


取り敢えず、歩いているのも体に響くし動いて痛く無いためソファーの上に寝っ転がる。

そして、スマホを開き風邪の対処法を調べる。

風邪を引かないと言う事は体調が悪い時どうすれば言いのか分からないのだ。


そんなこんなでスマホで風邪の対処法を調べて一番上に出た体を暖めることにする為にベットの上に休んだ。

対処法の中に栄養価の高いものを摂ると書いてあったが正直何かを作るのすら難しければ風邪薬なんてものも無い、もちろん買いに行く気力もない。

俺はこの詰んだ状況を不味く思いながら眠ることにした。


それからどのくらい寝たのかはあまり覚えていない。

ただ、スマホのアラームが鳴っていることが分かり俺はスマホを止める。

ただ、上手く止まらずスマホを見る。


そこには、風吹の文字が表れておりその下には電話機のマークがあり、それが如月さんからの電話である事に気づき俺はすぐさま通話に出る。


「もしもし!」

「あ、い」


とどこか心配したような如月さんの声が聞こえてきた。

俺はそれに答えるが自分でも驚くぐらい声が掠れていた。

俺の共思えない声を聞いた如月さんは更に声が大きくなっている。


「彗月くん!?」

「なんですか?」


俺は寝起きと風邪のせいもあり中々、頭が回らず如月さんと通話していることの現状を中々掴めずにいた。


「大丈夫!?」

「全然無理」


俺は取り敢えずスマホを枕元に置き寝っ転がりながら如月さんと話す。

そうしないと、かなりキツイ。

予想以上に重症だった。


「看病しに行こうか?」

「あっ、お願いします」

「......じゃあ、今から行くよ」


あれ......俺、今すごいこと言った気がするが頭が回っておらず何を言ったのかも理解出来ていなかった。

確か、如月さんが来るとか......なら鍵開けといた方がいい気がする。

俺はそう思い。どうにか起き上がり階段を降りる。

すると、俺が起きたのを気づいたのか猫が寄ってきていた。


俺は辿々(たどたど)しい足取りで猫を踏まないように降りて玄関まで、たどり着き扉の鍵を開ける。

そこで少し限界が来たのか壁にもたれかかるように倒れた。


扉が開く音が聞こえる。

恐る恐ると言うかゆっくりと扉が開くのが分かった。

そこで扉の間の如月さんと、目が合うと如月さんが一気に扉を開けて慌てたように近づいてきた。


「ちょ、彗月くん!?

大丈夫......じゃ無さそうだね

取り敢えず、ベットに運ぶから診察どこ?」


如月さんは最初こそ慌てていたが、徐々に冷静になっていき俺をベットまで運んだ。


「えーと、色々買ってきたけど......スポドリとヨーグルトとかゼリーとか」


如月さんはそう言いながらベッドの俺にも見えるように買ってきたものを見せてくる。


「じゃあ、ゼリーで」

「分かった。スプーンは付けてもらったから、あと食べたら効くかわからないけど風邪薬もあるよ

あーんもしようか?」

「いや、流石に自分で食べるから」


そう言って起き上がり如月さんからスプーンとゼリーを貰い食べ始める。


「ほんと、ありがと。如月さん」

「まぁ、いいよ。」

「そう言えば、どうして電話してきたんですか?」

「少し用があって連絡したんだけど全く来なかったから電話したんだよ」

「何か用でもあったの?」


如月さんは少し考えたあとに


「......まぁね、でも大したようじゃないし、それに彗月くんがこの状態だからね」

「なんか、ごめん」

「いや、彗月くんが悪いわけじゃないからね

まぁ、今、彗月くんがやる事は元気になることだからね」


俺は思わず溢れ出るイケメンさに目を細める。


「その為には何か栄養があるもの取った方がいいけどどうしようかな。彗月くんはいつも風邪引いた時何食べてたの?」

「......雑炊ですかね」


どうにか働かない頭で過去のことを思い出していくと思い浮かんだのは母親が風邪を引いた時に作ってくれた卵の入った優しい味の雑炊だった。


「如月さん、作れるんですか」

「いや、作ったことないけど大丈夫。一応、お粥とか買ってきたから卵入れれば出来るでしょ」


俺は少し不安感を覚えながら如月さんを信じることにした。

と言うか動けないし

そうして、如月さんはキッチンへ向かい雑炊を作り始めたのだった。


それから、しばらく経ち

少し小さめの器と共に如月さんが雑炊を運んできた。


「どうよ」


と机に置き見せびらかしてくる。

確かに雑炊であり湯気から仄かな出汁の香りが広がっていた。


「じゃあ、食べさせようか」

「どうしてそうなるの!?」


そう言ったが如月さんは聞く耳を持たず嬉しそうに雑炊を息で冷ましながら俺の口に持っていっていた。

どうやら、如月さんは雑炊が疲れてかなり上機嫌のようだった。

俺は渋々と雑炊を口にするのだった。

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