2話お昼ご飯と持久走
サブタイトルってつけるの難しい
昼休み、俺は校内の目立たないベンチで一人昼ごはんを食べていた。
そんな時である。
「1人かい?」
そう、爽やかな声が聞こえてくる。
俺は声でその主は分かっているがあえて振り向く。
そこには校内で既に王子と呼ばれている少女、如月風吹の姿があった。
「話すのは昨日ぶりだね」
そのセリフで昨日のことがフラッシュバックする。
どこか漫画の世界の様な空間であり、その後どう帰ったのかすら覚えていない。
家に帰りようやく我に返ったぐらいである。
「そうですね。
如月さんは昼は?」
「ん〜秘密さ」
その言葉にハテナを浮かべながら俺は首を傾げる。
それに彼女は笑いながら
「それで、彗月くんは一人で食べてるのかい?」
如月さんはベンチの上にある昼ごはんである弁当箱に詰め込まれたサンドイッチを見る。
「まぁ、そうですね」
俺は少しバツが悪そうに答える。
仕方ないじゃないか。
剣城はバスケ部の面々と交流も含め一緒に食べるらしい。
「そのサンドイッチは自分で作ったのかい?
案外自炊するタイプ?」
「まぁ、そうですね」
高校から一人暮らしの為に中学時代からちょくちょく自炊していたおかげか今のところ困っておらず昼ごはんもよく自分で作っている。
「それで、如月さんは何か用ですか?
また、女子から逃げてるの」
「当たり」
と俺に向け指を差しながらそう言う。
それを聞いて少し彼女に同情してしまう。
イケメンはイケメンなりに大変なのだな女子だけど
「それに、寂しそうな彗月くんを見つけたのもあるね」
「そこまで寂しそうにしてました?」
「暇そうには見えたかな?」
「まぁ、暇だったけど.....(如月さんにも当てはまりそうだなー)」
口から出かけた言葉を飲み込みながら彼女を見る。
「なにかな?その目は?」
口には出なかったが目には出ていたらしい
「まぁ、その目の通り逃げたは良いけど、暇だったんだよね。
そんな時に君がいた訳だ!」
そう彼女は最後の一文を自信ありげに言った。
「そうですか」
「あんまり嬉しく無さそうだね
会心の一撃だったんだよね」
まぁ、わざとらし感が凄かったし
「如月さんも冗談みたいな事言うんですね」
「冗談ってわけでも無いんだけどなー」
そんな風に談笑していると校内全体に昼休みの終わりが鳴り響く。
「ん?チャイムが鳴ったね」
「そうですね。先帰って良いですよ。
俺は後から行くんで」
「一緒に戻らないのかい?」
と彼女は顔をニマニマとしながら言う。
「分かってて聞いてます?
目立つし俺が女子達に追いかけられますよ」
「面白そうだけどね。ふふ」
と彼女は口に手を当て小さく笑う。
その仕草がいつもと違い少し可愛く思えるのはいつもの姿とギャップがあるからだろう。
「それじゃ、お言葉に甘えて先に行くね」
と語尾に星がつきそうなウィンクを俺に向け優雅に去って行った。
俺は少し息を長めのため息を吐く。
「如月さんとの会話は中々慣れないな」
と小さく呟き、少し時が経った後、俺も立ち上がり教室へ向けて歩き出した。
〜♪
教室に戻ると女子が居らず男子が体育着に着替えていた。
俺が戻ってきたのを見たのか剣城が近づいてきて
「5時間目、体育になったらしい」
「まじか、体育って教師誰だっけ?」
「鬼怒だとよ」
「.....」
恐らく俺の顔は青く染まっているだろう。
鬼怒、この名前からも物騒さが漂っているが昨日の集まっている所を解散させた教師であり学年主任である。
そして、怒らせると凄く怖い。ついでに顔も怖い。
このせいか、殆どの生徒から恐れられている教師である。
そして、俺は鬼怒が担任と知り急いで体育着に着替えた。
〜♪
「ちなみに、何するかは聞いてるか?」
俺はグラウンドへと移動している最中に体育で何をするのかを聞いた。
「昨日、B組は持久走をさせられたっぽい」
「最悪じゃん」
「まぁ、俺は運動してるからそこまでだけど彗月は大丈夫か
って、その顔は大丈夫そうじゃないな」
正直、春休みは中学の部活も終わり自堕落に過ごしていたせいか昨日の登校する時から体力が落ちているのを俺は知っている。
階段登る時も息が切れそうになる。
「まぁ、一緒に頑張ろうぜ」
「それ、一緒に走ろうぜって言って自分だけ行くパターンが見えるんだが」
「遅かったら置いていく」
「現役運動部について来れるわけねーだろ」
そんな風に剣城と雑談をしているとグラウンドに着く。
女子達は既に着替えて着いておりいない人もいるが校舎から出てきている人もいる。
そして、鬼怒はまだ来ていなかった。
「てか、相変わらず慣れねーな。」
剣城の視線に入るのは大体の女子が集まっているであろう如月さんの集団である。
俺はそれに同意しつつ鬼怒が来るのを剣城と雑談しつつ待つのだった。
〜♪
それから、しばらくして鬼怒がやってきた。
その顔は相変わらず恐ろしく名前に恥じぬ鬼の様な形相をしていた。
それに、一部の女子は震え上がっていた。
如月さんの顔も少し青かった。
そして、今回の体育の内容は持久走であった。
それに、男子と女子の悲鳴が上がるが鬼怒はそれを喝を上げ黙らせた。
初めは男子がグラウンドを7周走り、女子は5周でありそれぞれ1500と1000であり中学と同じ距離を走る。
そして、それぞれ男子がスタート位置に並ぶ。
「軽く行こうぜ軽く」
「いや、俺は既に疲れてるんだが.....」
「ん〜、がんばれ!」
「ん〜帰りたい」
そして、次の瞬間、鬼怒のグラウンド全体に広がる大声と共に男子の持久走がスタートした。
ちなみに、結果は約6分くらいだった。
まぁ、中学の時と比べるとアレだけど悪くは無いだろう。
ついでに剣城は約5分くらいだったらしい。
現役運動部半端ない
そして、男子が終わり女子のスタートとなった。
流石に女子は如月さんのペースに合わせるものもいれば自分のペースで走るものもいた。
それから、しばらくして俺は如月さんの様子がおかしいのに目の前を走った時に気づく。やはり少し顔が青く今にも倒れそうだった。
俺は急いで如月さんに向けて走り始めた。
後ろから剣城の驚いた声も聞こえたが構わずに走る。
そして、次の瞬間如月さんが倒れそうになるのが目に映る。
俺は走る速度を上げ何とか倒れかけた如月さんを受け止める事に成功するのだった。
「は、づきくん?」
如月さんはか細い声で俺の名前を呼んだ後、意識を失った。
なお、いきなり走り出した俺はものすごく目立ったし如月さんが倒れるのを見て心配した女子は如月さんに駆け寄ったのだが鬼怒に怒鳴られ渋々走り始めた
「彗月は如月を保健室まで連れて行け」
そう言われ返事をした後、如月さんを背負いながら保健室へと向かったのだった。
教師の名前は10秒で考えたので覚えなくて良いです
持久走の記録は高校生男子の平均を見ながら適当に決めたのでバケモノが生まれる心配は多分無いと思いたいです