16話 子猫救出作戦
あの後、ゲームセンターでかなりの時間遊んでいた。
ゲームセンターを出ると夏のせいか日は暮れてはいなかったがスマホには確かな時間の流れが映し出されていた。
「そろそろ帰りましょうか」
俺は食べ歩きやゲームセンターで遊び回ったあとだというのにあまり疲れてなさそうな如月さんに向かいそう言った。
「そうだね」
如月さんはどこか遊び足りないのか少し寂しそうな表情をしていた。
ただ、俺の疲弊した様子を見ていたのか残念そうな少し低めのトーンでそう言った。
なぜ、こうも女性の寂しそうな顔というのはどうしてこうも罪悪感を駆られられるのだろうか。
如月さんは俺の葛藤していそうな態度を察したのか
「さぁーて!帰ろうか!」
そうフォローするように如月さんは元気いっぱいの声で言うのだった。
俺はそれに有り難さと罪悪感を抱えつつ如月さんと駅へと向かうのだった。
〜♪
あれから俺と如月さんは何事もなく電車で乗ることができており、何事もなく目的の駅に降りることができた。
「んんー」
駅を降りたあと如月さんは可愛らしい声を上げながら腕を伸ばし身体をほぐしていた。
少し物珍しで如月さんを見ていたせいか如月さんが顔をかしげていた。
俺は誤魔化すように俺も伸びをしたあとに
「行きましょうか」
「そうだね」
それから、しばらく帰り道を歩いていると、公園に小学生くらいの子供たちが公園の木に集まって何か騒いでるのが目に映った映った。
それを不思議そうに見ながら
「何かあったのかね?」
そう独り言を溢す。
俺の声に気付いたのか如月さんも公園の方へと視線を移す。
「行ってみようよ」
如月さんは気になるようだった。
俺は少し帰りたさもあったが気にもなっていたので了承して如月さんと共に子供たちのところに向かった。
「どうしたの?」
そう如月さんは子供怖がらせないよう子供と視線が合うようにしゃがみ込み子供たちに向かって聞く。
「きのうえにねこがいるんだよ!」
そう一人の少年が元気よく教えてくれた。
俺は木の上を見ると子猫が木の上にいた。
「多分降りれなくなったんじゃないですか?」
そう言うと如月さんは少し考え込む。
どう助けようか考えているのだろうか。
猫は俺と如月さんでも届かないような高さの木にいるせいかどうにも手を出せなかった。
耳を澄ますと猫が小さい声で鳴いてるのが聞こえてくる。
「肩車でもしましょうか?」
「いいの?」
「可哀想ですし」
さっきから猫の小さい鳴き声が聞こえてくる。
そのせいか俺は子猫を可哀想に思っていた。
そのせいかも柄にも無くそう提案してしまった。
ただ、ふと考えると女子である如月さんを肩車するのは色々不味いんじゃないかと頭の中に浮かんでしまう。
もしかしたらセクハラになる?
そう俺の中には自分が逮捕されるイメージが構築されていった。
如月さんはしばらく考えていた様子だが
「私、多分重いけど大丈夫?」
気にするのはそこなのかと思ってしまう。
如月の性格的に気にするのは木の上にいる子猫なのだろう。
俺もしばらく考え込んで
「多分、大丈夫です」
そう言うと如月さんがむっとしたように
「そこは即答でしょ!」
と怒られた。
俺は確かに今のは不味かったかなと思いつつしゃがみ込み。
「どうぞ」
如月さんを受け入れる体制を整える。
如月さんは恐る恐る首を乗り込む。
その瞬間にやっぱりやめれば良かったと後悔するが、猫のため猫のためと頭に言い聞かせる。
それは如月さんが重いとかでは無く太ももの感触がズボン越しだが直に感じるため俺の頭に煩悩のようなものが湧き上がってくるからだ。
それから、俺は如月さんを落とさないように立ち上がり
「どうですか?」
「もう少しで届きそうなんだけど
......猫ちゃんおいでー」
どうやら寸前で届かないらしく子猫に語りかけるように話すが猫は怖がって動けないようだ。
しばらくの間、猫を助けようと手を伸ばしていたが流石にもう無理だと気付いたのか如月さんに下ろすよう指示をされて如月さんを下ろす。
「ダメだね」
「そうですね」
俺はどうにか子猫を助けるように頭を働かせる。
如月さんより身長高い人となると他に男しか居ないんだよなと思い。
スマホを取り出す。そして、そこから剣城という文字を見つけ出す。
正直なるべく呼びたくない。今日の朝、服の相談をして恐らくデートだとバレているのに、その相手が如月さんとバレることになる。
そんなのがバレたら剣城にイジられ続けるだろうし他の人には流石にバラさないだろうけどなー
俺は悩んだ挙句、剣城に電話をする。
出ないでくれと祈りつつも猫を助けるために出てもらわないとという矛盾した感情を持ちながら剣城が出るのを待つ。
それから、3回ほどコールがなったあとに剣城は電話に出ることになるのだった