7 仲間さがし
私は先生の『散花烈身』によって、六人に分裂した。
そして、その名前は色で分けられている。
私を除くと、レッド、ブルー、グリーン、ブラック、ピンク。
ミーティングの待ち合わせに来たのは、ブルーとピンク。
「残りは……レッド、グリーン、ブラックだね」
彼女たちとは最初に会ったきり、一度も話していない。
まだ初対面みたいなものだ。
「ピンク。三人がどんな娘たちか教えてくれる?」
「うーん。変わった娘たちかな」
それだと六人全員が当てはまると思うけど。
まあ、さすがに遠出はしていないだろうし、町の中にはいるか。
「でも、この町ってけっこう広いよ。どうやって探すの?」
「簡単だよ。見ててね」
私は近くを通りかかったおじさんに話しかけた。
「すみません。人を探しているんですけど。こんな顔の人を見かけませんでしたか?」
「……は?」
「だから、こんな顔の……」
「ああっ! いたな! さっき見かけたよ。あんたよりも目がぎらついていて、おっかない顔してたが」
「どこで見ました?」
「あっちの方だ」
「ありがとうございます」
あの方角には、たしか練習場があったはずだ。
冒険者たちがトレーニングのために利用している広場なのだが、あそこに何の用があるんだろう。
行ってみると、他の冒険者に混じって、女の子がトレーニングしていた。
なんか、汗をかきながら、一心不乱に剣を振っている。
これまた、私とは違うタイプだな。
「レッドちゃんだよ。私たちの中で一番の力持ちなの」
自己紹介のとき、声が大きかった子か。
記憶に残ってる。
「しゃあああっ」
ブンッ! ブンッ!
空を切る音が小気味良い。
フォームも綺麗で無駄がない。
彼女は私の剣術の腕を引き継いでるのかな。
それなら、物理による攻撃は彼女の役目になるだろう。
近づいて、話を聞いてみよう。
「何してるの?」
「見て分からないか? 素振りしてんだよ」
「ミーティングは? 待ち合わせ場所は伝えたはずだけど」
「要するに、敵をぶった切ればいいんだろう。話合いなんか意味ねーだろ」
敵をぶったぎるだけ?
レッドは何もわかってないな。
「練習の邪魔だ。どっか行け」
「レッドちゃん。みんなでお喋り楽しいよ」
「うっ、おまえなんだよ」
「そう、ピンクの言う通り。今、彼女、すごく良いこと言ったよ。仲間が揃わないと楽しさ半減しちゃうからね」
「……いや、行かないって」
「レッドちゃん!」
「一回だけでいいから!」
そうやって、説得すること約30分。
「……あたしさ。理解できないんだよ」
「……ん? どういうこと?」
「だから! 会話の内容が理解できないんだよ。バカだから!」
「もしかして、それがミーテングに来たくない本当の理由?」
「特に、ブルー。あいつの言ってることがさっぱり分かんねー。異次元の言語を使ってきやがる」
そうかな。普通に分かりやすく説明してたけど。
「よし。それならブルーにも相談して、あなたにも理解できるようにする。そうすれば、一緒に来てくれるんだよね」
「できんのか? 言っとくけど、あたし想像以上にバカだぞ」
「うん。大丈夫。ブルーもあなたがパーティーに必要なことは理解してるだろうし」
「じゃあ、行くよ。あたしも、おまえらが嫌いなわけじゃないからな」
「あらためて、よろしくね」
「ああ。よろしく」
これで、レッドは仲間にできた。
あとはグリーンとブラックだ。
★
この町に隣接している森までやってきた。
「心当たりがあるって言うからついてきたんだけど、なぜ森?」
「待ってろ……えっと、たしか、この辺りに」
レッドは樹木の前に立ち止まった。
この辺りではけっこう大きな樹木だ。
「上を見てくれ」
「何か引っかかってるね」
「あれ。グリーンなんだ。あいつ高いところが好きらしくて、寝るときは習慣的に木に登っちまうらしい」
「変な子」
「そうだろ? あたしよりもずっと変な奴だよグリーンは」
レッドが幹を蹴り飛ばすと、グリーンが木から落ちてきた。
ボトッ!!
思いっきり顔から落ちたが、まあ大丈夫だろう。
身体能力は勇者である私と大差ないのだ。
木から落ちたぐらいでは、ダメージのうちに入らない。
そのまま、うつ伏せで倒れている彼女に声をかけてみる。
「グリーン。ミーティング行こう」
「…………」
反応がない。
「グリーン。どうしたの? 返事して」
やっぱり動かない。
こっちに顔を向けてみる。
「グリーン……」
「……スー……スー……」
「……ね、寝てる」
彼女の体を揺り動かした。
「ちょっ、グリーン! 起きて! 朝だよ。ミーテングだよ」
「……ムニャムニャ。もう食べられないよ」
「ベタな寝言を言ってる場合じゃないよ。朝だって」
「……グー……グー」