第102話 絆パワーを溜めよう
絆スキルが解禁された。
さっそく使ってみようと思ったが、使用には絆パワーが必要なようで。
「絆パワーですわ!」
「ええ。それはよく分かりましたよ」
「二人には、仲良くなってもらいましょう」
そんなわけで、≪スター・ルーム≫に入ってもらおう。
会長が言うには、この部屋に入れば、絆パワーが溜められるそうだ。
「じゃあ、入るぜ」
「ブルーの≪シードローン≫を持って行って」
「ほいよ」
「……ん……」
ドローンからの映像で、私たちは中の様子を確認することにする。
――ギイッ!
扉を開けて、二人が部屋に入っていく。
そこにあったものとは……。
「なんだこりゃ……」
レッドが目を丸くしている。
「……木材に……大工道具?」
「……ん……」
「おう。何か書いてあるな……えっと……なになに」
『二人で協力して、棚を組み立ててね』
と貼り紙に書いてある。
「……は? どういうことだよ」
まさか、これが二人が仲良くなるための方法なのか。
こんなもので、絆パワーを溜められると?
「二人の初めての共同作業。燃えますわ!」
「……そうですか?」
まあ、いわゆる『DIY』って奴だろうか。
既製品ばかりでは、味気ない。
たまには一から物を組み立てるのもいいかもしれない。
「これがパーティーのためになるんだよな。仕方ない。やろうぜ、ブラック」
「……ん……」
棚づくりを始めるようだ。
貼り紙の横には、説明書も置いてある。
レッドはそれを手に取り、読んでみる。
「……ふむ。Aの凸部分をaの凹部分にはめ込んで……って」
――ビリビリッ!
「こんなもん読めるかあっ!」
早くも説明を放棄か。
不安な立ち上がりだな。
「要は棚を作りゃいいんだろ? 余裕だぜ」
まずはノコギリを手に取り……。
適当な大きさに切って行くようだ。
「ブラック。抑えといてくれよ」
「……ん……」
「おらよっと」
ギコギコッ!
さすがに、刃物の扱いは手慣れているな。
上手に切っているぞ。
「……ん……」
キィン! キィン!
おお。ノコギリの攻撃を弾いてる。
共同作業っぽいけど。
その行動に、なんの意味が……。
「負けねえ! 炎月斬り!」
ノコギリに炎を纏わせた。
「はあああああああっ!」
勢いよく切りつけることで、盾を貫通する。
ボウッ! ああ、木材に火が……。
そして、作業を続けた結果。
「……ふう。よく切れたぜ」
板が焦げてんじゃねーか!
何がやりたいんだ!
「さあて。次は……組み立てだな」
レッドはトンカチと釘を手に取る。
「ブラック。抑えとけよ……トントン!」
板に釘を打ち込んでいく。
悪くない手つきだぞ。
「……ん……」
「何? ブラック、おまえもやりたいのか?」
「……ん……」
「あたしばっかりやってるのも悪いしな。いいぜ」
今度はレッドが抑えるようだ。
「おらっ! 打ち込んで来い!」
「……ん……」
背中から武器を取り出した。
ブラックさん、それトンカチ違う! ハンマーだよ!
「……ん……」
ガッシャ―ン!
案の定、板がぶっ壊れた。
「……やるな。あたしも負けねえぜ」
だから、なんで張り合うの?
ガッシャーン!
更に、板がぶっ壊れた。
「おりゃあっ! おりゃあっ!」
「……ん……」
もう無茶苦茶だ。
本当に、こんなのでいいのか?
――ガチャッ!
扉が開いた。
どうやら、完成したようだ。
と言っても、あまり期待はできないが。
「これでいいんだろ?」
「……あれ?」
普通にできてる。
どうなってる。ここにはどんなトリックが……。
「よく考えたら、一人で作った方が早かった」
「……ん……」
「……ええ」
この二人、個別で棚を作ってきたんだけど。
「……」
会長が黙り込んでいる。
さすがに、これじゃダメだよね?
「……素晴らしい!」
「……え?」
「これぞ絆の力! 絆パワーです!」
会長の瞳の中で、星がクルクルと回転している。
興奮してるってことだな。
なんとなく、分かってきた。
「絆パワーが、ここに溜まってきたでしょう!」
「おお。本当だ。すげー溜まった」
「……ん……」
適当に答えるな。
とにかく、パワーを溜めた。
スキルを使ってみよう。
「じゃあ、二人ともお願い」
レッドとブラックは手を繋いだ。
「……なんだか、恥ずかしいんだが」
「会長が言うには、こうやれば上手く発動できるんだって」
では、やってもらうとしよう。
「≪すり抜け≫! 発動!」「……ん……」
すると、私たちの体が透けていき……。
「スケスケだー」
本当だ。
スキルの≪ステルス≫とは違って、物理的に透明になってる。
「これだけ透けていれば、壁も通り抜けられそうですね」
限りなく透明に近いブルーが、何か言ってる。
ようし。壁を通り抜けてみようか。
「あまり厚すぎる壁は通れませんわ。注意してださいね」
とりあえず、側の壁に触れてみた。
――スカッ!
「わあっ! 手が壁にめりこんだ」
ちょっと、面白いな。
ついでに頭を突っ込んでみよう。
「……隣の部屋が見える」
なるほど。いろいろと使えそうだが。
とちらかと言えば、ダンジョン向けのような気がする。
「あんまり面白い使い方が、思いつかないな」
こう絆スキルならではの、かっこいい応用をしてみたいんだけど。
心臓を抜き取るみたいな。親父ならもっと上手く盗む(キリッ)。
「ねーねー」
「……ん? 面白いものあった?」
「あそこに入ってみてー」
向こうを指している。
グリーンだからな。何か見つけたのかも。
「……ふむ。観葉樹か」
どかしてみると、
「……他の壁より、色が薄いな。怪しい」
ようし。探索っと。
「……何があるかな……えいっ!」
すると、そこには――。
「シュコーッ! シュコーッ!」
ガスマスクをした人物が……。
こちらに、気づくと露骨に動揺した。
「シュコー……シュゴボゴボ!」
怪しい人を発見。
さっそく、役に立ったぞ。
☆
「……アサシンが壁の中にいました。どういうことでしょう?」
会長がパンと手を叩いた。
「絆パワーですね!」
「いえ、それはもう分かりましたから」
まず、この人はなんで壁の中にいたんだろう。
「ステルスアクションはボクの趣味なんだ。悪いかい?」
「悪いよ! 周りに迷惑かけない趣味を考えなよ!」
「シュコー!」
アサシンの職業病なのか?
まあ、深くは追求しないでおこう。
「シュゴボゴボッ!」
アサシンが取り乱している。
たぶん、ステルスを使ってたんだろうが、うちのグリーンは感知に優れているので。
「グリーン。飴をあげるよ」
「わーい」
「良い子だから、このことは黙っててね」
「はーい。誰にも言わなーい」
「いや、遅いよ! もうバレちゃってるからね!」
「じゃあ、キミも口封じ」
オレンジ味か。
うん。甘くて、美味しいね。
「黙っててね」
「……いや!」
「そうか。じゃあ、仕方ないかな」
アサシンは、懐をゴソゴソと漁ると。
「……よっと」
何か取り出した。
「……書物だ」
さっき会長に解読してもらったものとそっくり。
違うのは、表紙の色ぐらいだろうか。
「これを君にあげようと思ったんだけど」
「え? 待って。これって……」
「そう。古代人の書物だよ」
何故、アサシンの人がこんなものを。
冒険の合間に手に入れたとか?
「この書物を使えば、キミたちは『絆スキル』を覚えられるんだよね? 聞いてたよ」
「うん。そうだけど」
「あげよう」
「ほんと?」
さっそく、二つ目のスキルを習得できるのか。
それは願ったり、叶ったり。
「ただし、ちょっとお願いあるんだけど。ボクの頼みを聞いてくれるかな?」
なんだろう。
とても、嫌な予感が……。




