三度目の転生
「ゴホッゴホッ・・・・」
俺は江戸の千駄ヶ谷の植木屋で労咳を治すため布団に寝ていた。早く治して近藤さんたちのもとに行き戦いたい。俺は天下分け目のあの鳥羽伏見では向かう途中で負傷するわ大阪に後送される時に労咳に掛かるは散々な目にあった。そしてしばらくして甲陽鎮撫隊に入隊したんだけど病が悪化し、今こうして布団に寝ているんだ。それにしても一向に治る気配がない・・・・もしかしたらここまでなのかもな・・・・少し悔しい。近藤さんや土方さんたちが戦っているのに俺はただこうして布団で寝ているだけなんて。情けない話だ・・・・
「近藤さん・・・土方さん・・・・すみませんどうやら俺はここまでのようです。先に逝くのを許してください」
そうしているうちに俺の意識はだんだん薄れていくのだった。
沖田総司。新選組1番隊組長で新選組最強と言われた剣士は慶応3年12月7日 (西暦では1868年7月19日)に肺結核のためなくなる享年26歳。しかも彼は尊敬する近藤勇の死を知らないまま亡くなったのである。
そしてしばらくすると沖田は意識を取り戻しまぶたを開く。
(あれ・・・・・なんだ。眩しい。ここはどこだ?それにやけに騒がしい・・・)
確か俺は静かに養成していたはずだ。周りを見渡すと見たこともない部屋にいた。なんかふかふかの真っ白な布の上に寝かせられている。それにそばにはなんか西洋風な服を着た女がいた。なんだろう俺が寝ている間に西洋風の部屋に移されたのかな?いやでもあそこに西洋風の部屋はなかったはずだ。
そんなことを考えていると1人の女性が覗きこんでくる
「こんにちわ。私がママですよ」
見た目はおそらく二十代前半ほど。背丈は女にしては大きい。少し目が釣り目だがなんか優しい雰囲気の女性だ。それにしてもさっき言った『まま』ってなんだ?西洋の言葉か?すると女は腕を伸ばし、俺を抱きかかえる。
(ちょっと待て!嘘だろ!?俺は少し小柄だけど、女が楽に抱きかかえられるほど軽くないぞ!?)
俺は驚くのだが、彼女は苦もなく抱きかかえ、あやすように体を揺すったりもするそしてその笑みはまるで菩薩のようだ。
(いったいどうなってるんだよ・・・・・・ん?)
俺は女に抱えられながらそばにあった鏡に映る自分の姿を見た。するとそこには・・・・・
(あ、あ、あ・・・・・赤ん坊になってるぅー!?)
そう、鏡に映ったのはさっきの女に抱きかかえられる赤ん坊、つまり俺の姿が映るのであった。
その後、俺は今自分がどんな状況にあるか理解できた。ここは俺がいた時代から150年たった日本だというのがわかった。ということは俺は死んで来世の世界に来たということになる。そして今の俺の名前は前世と同じ性の沖田。名前は幼少の頃の名春政という名前になっている。最初俺は動揺した。だって今から150年も未来の日本に転生したんだ。驚かないわけがない。だがわかることは俺を産んだ両親はとてもいい人達だということだ。俺のことを愛情をこめて育ててくれた。
そして4歳になった頃、俺はあることをした。150年前、そう俺がいた時代について調べたんだ。まだ4歳だから外で自由に動くことはできなかったが、「いんたーねっと」という絡繰りや本で調べることができた。俺が死んでその後、江戸は薩長軍によって無血開城、上野の戦いで原田さんは戦死。一説では生きているって書いてあるけど。
その後土方さんたちは会津まで撤退し、その後の会津の戦いで敗北。斎藤さんは新選組を離れたらしい、土方さんは蝦夷へ退却して最後まで戦って戦死して旧幕府軍は降伏したらしい。何より驚いたのは近藤さんのことだ。近藤さんは俺が死ぬ2か月前に敵に投降し斬首された。そのことを知って俺は本当に動揺を隠せなかった。近藤さん・・・・
俺はその後の歴史を見た。その後、薩長中心とした新政府は元号を「明治」と変え、西洋列強に無理矢理結ばれた不平等条約を改正させるため無茶をし過ぎて最後にはその条約を改正することはできたが、戦続きの激動な時代となり、最後はメリケンとの戦に敗れたらしい。だが植民地にされることはなかったので本当に安心した。その戦から72年間、日本は戦をしていなく平和な世となっているのだった。一とうり歴史を知った俺の好奇心は止まらなかった。俺はこの時代の道具に興味を持った。「自動車」に「くーらー」、そして「てれび」に「いんたーねっと」本当にたったの150年でいろんな便利なものができたと俺は驚いたがほんの数日で慣れてしまった。
ある時、アニメやら漫画に出てくる新選組を見たけどなんか、みんな女っぽく書かれていた。特に俺なんほぼか女に見えるし、目が緑色の奴だってあった。だが笑える時もあった。三番隊組長である斎藤さんのことだ。幕末に活躍したとある人斬りが主人公の漫画に出てくる斎藤さんの顔が本当に笑えた。まるで殺人鬼みたいな顔だったからだ。
斎藤さんこれ見たらどう思うんだろう。それにしても「悪・即・斬」っか・・・今度そのセリフ使ってみようかな。
因みに俺のことはネットとかに書かれていたんだけど肖像画が俺と全く似ていない何でも姉さんが親戚の人が俺の顔に似ているって言って書いたものらしい。俺本人の写真とかあったらしいんだけどなんやら引っ越しの整理しているときに謝って捨てちゃったらしい(何やってるんだよ姉さん・・・)
そして転生してから数年後俺が16歳の時だ。その時の俺はこの時代にも慣れて今では平和に暮らしている。
俺は学校から帰るとき、目の前に一人の老人が土下座をしていた。しかも気が付くと周りの景色はいつもの通学路ではなく、何やら6畳間の部屋にちゃぶ台が置かれた質素な部屋に変わっていた。
「あ、あの・・・・・お爺さん。何をやっているのかな?」
「本当にすまん。沖田春政君。いや・・・新選組の沖田総司君といった方がいいかな?」
「っ!?」
この爺さん。俺のことを知ってる!?
「お爺さん・・・あんた何者だ」
俺はその老人を睨む
「そんなに睨みなさんな。私は神の1人でな。その命というか寿命の書類リストというリストを整理していたんじゃよ。それでの。そのリストを整理していたら実は誤って君のリストをシュレッダーにかけてしまいましてな・・・殺してしまったというわけなんじゃよ・・・」
・・・・・・・え?
「本気と書いてマジ?」
俺がそう言うと老人は申し訳なさそうな顔をする。てかそんな大事な書類間違ってシュレッダーにかけるなよ。しかも人様の寿命なんだからさ、なおさらじゃん
「本当に申し訳ないの。2度目の人生楽しんでいるときに」
「何とか、ならないんですか?これから家で『明治のるろうに』っていうアニメ見なきゃいけないんですけど・・・」
「残念だが君の命の書類をシュレッダーにしてしまった今、どうすることもできない。ただ君は私の落ち度から死んでしまったのじゃから転生くらいならできる」
「また転生か・・・」
「本当に申し訳ない。で、転生先は地球ではなくまったく別の世界じゃ。それでもいいかの?」
「死んだ身じゃ、文句は言えないし、転生し生きていればいいこともあるかもな…‥わかった。いいよ神様」
「本当か?本当にいいのか?」
「ええ、別に構いませんよ」
「そうか。それは助かる。ではせめて罪滅ぼしとして君に何か授けたいのじゃが、何かないか?」
神にそう言われ、俺は考える。
「そうだな・・・・・・じゃあ、俺が前世。つまり幕末に使っていた刀と新選組の羽織をください」
「そんなんで良いのか?重火器召喚とか、できるんじゃが・・・・」
「俺に飛び道具なんか似合いませんよ。俺は新選組です。それさえあれば十分です」
「そうか・・・・ではそろそろ行ってもらうかな」
「では行ってきますよ」
「おっと。出発前にもう一つ。沖田君そこを動かないでくれ」
そう言うと神様は俺の頭に手を乗せその手から光があふれ出し俺の体を包んだ
「あ、あの・・・・何をしたんですか?」
「ふむ。君の潜在能力を極限にまで高めておいたのじゃ。旅立ちの前の餞別じゃよ」
「別にそこまでしなくてもいいのに?」
「いいんじゃ。儂がそうしたんじゃから」
「そうですか・・・・それじゃあ、ありがたくもらっいますよ」
俺は神様にお礼を言い、その瞬間俺の身体は光に包まれるのだった。