SFC アルバートオデッセイ
SFCのレトロゲームをやってみた感想文です。
うーん。単一の評価が難しい作品です。
このゲームがレビューされるとき、その衝撃的なエンディングによって『鬱ゲー』として評価されているレビューが殆どです。実際にはもっと評価すべきところが凄く沢山ありますので後述していきたいと思いますが、まずはこの問題のエンディングについて、なぜそんなにエンディングばかり注目されてしまっているのかについて触れておかないと他に話が進まないのは確かだと思うので、いきなりネタバレでエンディングから説明したいと思います。
まず、このゲームのストーリーはRPGとしては王道、大雑把に云うとFF2に近い話で、敵国がモンスターを操って各国を侵略していて、まだ主人公が幼かったある日、主人公の住む小さな村にも攻め入って来た。主人公の父は守衛の団長をしていて、勝てないと分かっていても村を守るためモンスター軍団に立ち向かって行って守衛の部隊もろとも全滅、村は崩壊。
主人公は生き残って16年の歳月が経ったある日、かつて守衛隊長をしていた男の娘が村にやってきたことで主人公と、その娘と、村に住む主人公と幼馴染みの友人とが親の仇をとるために旅立つといった感じ。基本的にはこの3人がメインとなってストーリーが進んでいきます。
最終的にあと4人仲間になって7人でゲームを進めていくのですが主役は先出の3人。ゲームの特性上、7人が常に一緒に行動しても、それぞれが別の場所で違うことをやっていても大丈夫という画期的なシステムとなっており、前提としては主役3人が協力し合って、最後にラスボスを倒すという話の大筋があります。
ストーリー自体は重めですが、主人公のアルバート、主人公の幼馴染みノイマン、隊長の娘ソフィアは基本的に『仲良し3人組』といった感じな設定がされており、わりと明るく楽しく和気藹々と旅を続けているといった感じで物語は進んでいきます。ここは、町やフィールド全体の色調も明るい色調になっているため、ストーリー自体も明るい印象に感じるのかと思います。最後も正義と悪がハッキリ分かるようなシチュエーションの中、主人公達が悪の王を倒して3人で地元の正義の王のところに報告に行ってエンディングに向かいます。
正義の王に報告した後も3人は和気藹々と学生ノリで、主人公のアルバートと隊長の娘ソフィアが『一緒に悪者倒したんだし付き合っちゃおうか』みたいなノリでホテルに向かい、ノイマンが『邪魔者はサッサと消えますよ〜』みたいなノリで最初の村に帰るため町から一歩出た途端に惨殺されて、ホテルの前でイチャついてたアルバート達の前に投げ捨てられる。『誰が殺ったー』とアルバートが町の外に走って出てみると復活して大量に増殖したラスボス悪の王が町を取り囲んで画面を埋め尽くしている。それを見たアルバートが慌てて町の中に逃げ帰ると、あまりにグチャグチャになって死んでいるノイマンを見たソフィアが発狂して倒れて動かなくなって、画面が真っ白になって『END』です。ソフィアが生きているのかショック死したのか分からないままです。
これはアルバートオデッセイ2に話が続くという意図で作られたエンディングらしいのですが、2では『昔、こんな事があったんだ』くらいにチョロッと冒頭でこの話が出るだけで、ゲームのシステム自体1とは全くの別物になってしまっており、このエンディングの後にアルバート達がどうなったのか全く分からないままこのストーリーは切り捨てられたという、後にも最悪な展開を迎えるストーリーとなっています。
このエンディングのせいで、このゲームが所謂『鬱ゲー』と評される事が多いですが、ゲーム自体は非常に画期的なシステムで面白いですよ。
まずゲームを始めて驚くのは色調のコントラストではないでしょうか。ドットの色がハッキリした原色だけを使っているので物のアウトライン等が非常に鮮明になっていて、とにかくキレイに見えます。PCEのイースか、それ以上といった印象です。
そして特出すべきは、なんといってもシミュレーションとしてのユニットの進め方。基本的な動かし方は『信長の野望』というか『シャイニングフォース』に似てるというか、そんな感じなのですが、このアルバートオデッセイはフィールドマップそのものがシミュレーションマップで、ユニット(キャラ)一つ一つに行動コマンドが付きます。当然、RPGでもあるのでフィールドマップは広大です。要はドラクエの世界地図上で信長の野望の戦闘をやるような物であり、各キャラがまとめて動く必要も無いので、個々に全く違う地域に向かう事も可能です。ダンジョンや洞窟に入れば、その中には別のマップが当然用意されているので、一人は洞窟の中、一人はフィールド、一人は町の中など、みんなでバラバラの場所を攻略していく事も可能です。2、3人のグループに分かれてそれぞれ違う場所を攻略していくも良し、主役が最初から最後まで町から一歩も出ずに他の連中がラスボスを倒すのも良し。自由度が本当に高いゲームです。一応、次に向かう場所というか倒すべきボス(目標)が常に表示されているため、みんなでそこに向かって駒を進めて順を追って話を進めていってもらいたいという製作サイドの思いは垣間見えますが、こんなに自由の効くシステム、プレーヤーが放っておかないでしょう。ラストを知っていればアルバートとソフィア以外、全員町で待機にしてみたくなります。ただ、そうさせまいとアルバートは戦士、ソフィアは攻撃専門の魔法使いで、ノイマンが回復専門の僧侶という設定、ノイマンがいないと回復出来ない設定があざとい。また、この3人が揃っていないと宿屋に泊まれないという無理やり設定があり、そこまでして最後のノイマンの惨殺やソフィア発狂の衝撃を印象付けたいのか、仲良し3人組を強調したいのか、エンディングまでアルバートとソフィアの体の関係を匂わせたくないのか、制作側が意図的にプレーヤーが本筋でプレーするようチョコチョコと変な設定をして杭を打っている箇所が散見されます。それぞれが遠く離れていてもアイテムは共通だったりとか。
そんなゲームなので、発売から何十年か経っても『これがベスト』という攻略法も未だありませんし、ラスボスまでの道筋も無限にパターンがあるので、ラスボス撃破までの最短ルートなど究明しようとする人も現れないゲームです。チートもあまり意味を成さず、アルバートだけ無敵にしたとしても回復役が弱いままだと着いて来られず、回復出来なきゃボスと連戦しているうちにHPを削られて最後まではもたないですし、敵は強い者に群がって集中砲火するので、結局敵を倒して経験値が入るのは最強チーターのアルバートばかりで、弱い仲間は敵を倒すことも経験値を得る事も出来ずにいつまで経っても弱いまま。最後の方では、不意に近づいて来た敵に一撃で粉砕されて回復役を失ったりします。要は仲間は全員平均的に浅く広くレベルを上げながら一丸となってストーリーを進めていくのがやはり一番の正攻法で、下手にチートも使ったりするとゲームバランスが崩れて却ってクリアするのが難しくなる稀有なゲームでもあります。
システム的には非常に面白いゲームだと思いました。