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CAR LOVE LETTER 「Sunny day cruise」

作者: YAS
掲載日:2009/08/17

車と人が織り成すストーリー。車は工業製品だけれども、ただの機械ではない。

貴方も、そんな感覚を持ったことはありませんか?

そんな感覚を「CAR LOVE LETTER」と呼び、短編で綴りたいと思います。

<Theme:NISSAN SUNNY(N15)>


やっと念願の免許が取れた!

毎日二時間乗車して、土日も学科を受けまくって、ギリギリ何とか夏休みに間にあった。

これで今年は海へ山へ、行動範囲が一気に広がった。


彼女に報告メールを打つ。速攻でおめでとうレスが届き、夏休みに海行こうよ!と書かれていた。


彼女とは付き合い始めてまだ半年。デートでは、最近やっと手を繋ぐ様になった程度。

それが車で海行こうなんて・・・何だか色んな想像をしてしまう。


俺は親父に頼みこみ、車を借りる約束を取りつけた。

うちの車は、もう10何年も前からある、ボロいサニーだ。

道具は壊れるまで使うがモットーの親父。車もご他聞に漏れずだ。

古いしダサくて仕方がないが、高校生の身分では、こんな車でもあるだけましだ。

俺は外見ではなく、車があるという現実を重視することにした。


彼女と遊びに行く日取りを決め、何時に迎えに行って、どこの海水浴場に行って、じゃああたしお弁当作るねなんて話をして、気付いたらもう夜中の1時を回っていた。

海に行く事を考えていたら、結局そのまま眠れなくなり、俺は完徹で終業式に出る羽目になってしまった。


海へ行く当日、天気はかなりの曇り空だった。雨が降らなければいいんだけど・・・。

教習所の卒業の時もらった若葉マークをサニーのトランクに貼ってみたが、あまりにもかっこ悪いので、すぐに剥がした。


その日俺はちょっと寝坊してしまったので、急いで彼女の家に向かう。


初めて一般道をサニーで走る。教習車とは感覚が全然違う。

俺、ちょっとびびってるのかな。いやいや、平気平気。


と思っていると、曲がらなければならない交差点を通り過ぎてしまう。

いっけね!とブレーキを踏んだ途端、後ろから目一杯クラクションを鳴らされる。

やっべ、どうしたらいいんだろう。落ち着け、俺!


かなりぐるりと遠回りしつつも、何とか彼女の家にたどり着いた。

約束の時間からはもう一時間近く経ってしまった。


彼女は水着の入ったトートバッグとお弁当の入ったバスケットを抱えてサニーに乗り込んできた。

「大丈夫だった?心配したんだよ!」という彼女の言葉に「ん・・・ちょっと、道混んでてさ。」と俺は適当に取り繕う。


彼女を乗せて海へ向かう。何となくまた雲行きが怪しくなってきた。


海へ向かうには、交通量の多い国道を通らなくてはならない。

しかも今日は週末も重なり、かなり車通りも激しい状況だ。


彼女が昨日の歌番組の話とか、お笑いのあの人が芸能人の誰と付き合ってるとか、いろいろ話して来ているが、俺はほとんど聞いちゃいない。

この国道のめまぐるしく変わる状況について行くのがやっと。会話なんて出来たもんじゃない。

「どーしたの?つまんないの?」と彼女は聞いて来るが、いや、そういう訳じゃないんだ。


国道を一時間も走った頃、何と雨粒がフロントウィンドウを濡らし始めた。マジかよーっ!

彼女も同じく、えーっ!と叫ぶ。

なんだよまいったなぁ。夜までの予定が総崩れじゃないか。


とりあえず海水浴場まで向かってみるが、雨脚は強くなる一方。

彼女の方から「もういいよ、違う所行こう。」と切り出してきた。


いろいろプランニングしてきてたんだが、こうなっては仕方がない。

映画にしようか。確か話題作がやっているはずた。

俺は映画館のあるショッピングモールに向かった。そこなら、映画の後もウィンドウショッピングとかで楽しめるはずた。


しかし難関が待ち受けていた。それは、車庫入れ。

休日の大型ショッピングモールの駐車場、しかも俺にとって生涯初の校外での車庫入れだ。


予想にたがわず、屋内駐車場は満車の表示。

出来れば車の少ない臨時駐車場に入れたいが、雨も降っているし、第一車庫入れに自信が無いだなんて、彼女にはかっこ悪くて言えやしない!

当然屋内駐車場だ。


ぐるぐると場内を周り、やっと空きを見つけた。隣の車との隙間が物凄く狭く感じる。

そろそろとバックする。ヤバイ、どれくらい寄っているのか全然わからない。

彼女に降りて見てもらいたいんだが、もちろんかっこ悪いのでそんな事は言えない。


もう一度トライしよう。車を前に出し、再度のろのろと下がると、がしょん!と言う音が軽い衝撃を伴って聞こえてきた。


まさか・・・。少しの間思考がフリーズした。不安そうな表情の彼女。

やってしまった。隣の車のバンパーの角に、しっかりとサニーのバンパーが食い込んでいる。


やっべー!!

どうしたらいいのか、もう完全にテンパっている。

そこへ上手い具合に隣の車のオーナーが現れる。


「こら!お前何やってんだ!!」

物凄い剣幕で怒っているが、どうしたらいいのか皆目分からない俺にとって、その人の存在はありがたかった。

その人の指示通り、警察に連絡し、親に連絡し、その後の指示をあおいだ。


警察が来るまで、高校生の分際で車なんか乗るなだとか、広い砂利駐車場で練習しろだとか、彼女の前ですっこすこになじられた。

悔しかったが、俺は罪の意識半分、テンパってた俺を救ってもらえた感謝の気持ち半分で、ただひたすら謝るのみだった。


警察が到着し、事故調査が終わると、俺は今度はお巡りさんに叱られた。初心者マークを貼っていない事についてだった。


「あのマークは未熟なドライバーをベテラン達が守るためと、自分が未熟なドライバーであることを意識するための物だ。それをかっこつけ程度の考えで外すなど言語道断。安全意識のかけらもない!」と、事故調査よりもたっぷり時間をかけて説教された。


事故処理は保険屋さんにお願いし、ひとまずこの場はお開き。

俺も彼女も完全にヘコみ、映画どころの気分ではない。もう帰る事にした。


彼女の家に向かう間、俺達はずっと無言だった。

彼女の用意してくれたお弁当のバスケットも、結局開くことはなかった。

あぁ、こういうトラブルから別れたりしちゃうんだろうか。俺はそんなつまんない想像をしながら。雨の中サニーを走らせた。


彼女の家に到着する。もう門限ギリギリの時間だ。電車だったら、あそこからここまでこんなに時間は掛らないのに。

俺は今日車でデートした事を心底悔やんだ。


別れ際、彼女が思い掛けない事を口にした。


「今日は、ありがとう。きっと次はもっと楽しいよ。またドライブ連れてって。」


彼女が玄関に消えてから、俺は涙が止まらなくて、本当に困ったんだ。


家に帰ってからは、今度は親父にもこっぴどく叱られた。

もうこんな事は懲りごりだ。そう思った刹那、親父がこう言った。


「新車購入はしばらく先だな。サニーでうんと練習しろ!」


後でお袋に聞いた話だが、親父は俺が乗ることを見越して、随分前からサニーの保険を切り替えてくれていたという。

俺はまた、涙が止まらなくて、本当に困ったんだ。


数日後、最高に天気のいい日に、俺は改めて彼女をドライブに誘った。

もう変に背伸びなんかしない。誰だって初心者の頃があるんだから。

サニーのボンネットとへこんだお尻に、しっかりと初心者マークを張り付けて、俺は誇らしげに彼女を迎えに行ったんだ。


彼女はそれを見て「意外とかっこいいじゃん!」と太陽のように微笑んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] もうハラハラしちゃう。初心者なのに、とんでもない。彼女にけがでもさせたら本当に。でも、なまじっかうまく行ったら慎重に運転することがなくなるかもしれませんね。 私も取ったばかりで、80キロも…
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