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第82話

 三人の誤解を一身に受けながら、何故こういう時だけ足並みが揃うのだと内心で唇を尖らせる想次郎。


「別に変なこと考えてたわけじゃなくて、その……こういったパーティ編成での魔物討伐って初めてだったからさ、一人でパーティ名とか考えちゃって……」


 言いながら恥ずかしくなったのか、やや尻すぼみになりながら白状する想次郎。


「くっだらねぇ。つってもこのパーティは今回限りだ。余計なもん考えんな、気持ちわりぃ」


 シナリスはそう吐き捨てるように言った。


「そうだぞ、想次郎。こんな奴と仲間だなんて、あたしは嫌だからな」


 そう言ってナツメはシナリスを睨み付けた。エルミナからは特に何もなかった。


 不安を紛らわせる為の妄想の筈だったが、余計に先への不安を大きくする結果となった。


「それにしても妙ですよね」


 少し間があって、エルミナが口を開く。


「どうかしましたか?」


 怪訝そうに眉を顰めるシナリスとナツメの二人に代わり、想次郎が尋ねた。


「軍の人間らしき人はあの集合場所で一人見たきり、それ以降全く見かけません。人手が欲しいにしてもこんな形で集めた者たちだけで向かわせるでしょうか? 自分で言うのも何ですが、かなり素性の曖昧な者が多い人員だと思いますが。そんなものなのでしょうか?」


 この世界の常識というものがわからない想次郎であったが、エルミナの言い分は一理あるとも感じた。


「ああ、そんなもんだ」


 やはりまだ気まずさが残っているのか、シナリスはエルミナに視線を向けないまま答える。


「わざわざパーティを組ませたのは世間様に素人を〝捨て駒〟にした印象を持たせない為。裏を返せば俺らは正真正銘立派な捨て駒ってわけだ。俺らが全滅すれば国は次の手を考えるだろうよ。せっかく金欲しさに命を懸けるアホ共が集まる街だ、ダメ元でも使った方がお偉いさんたちには都合が良いんだろうよ。その分正規の人員が血を流さなくて済む」


「そんな。だったら最初から協力すれば良いのに……」


 それを聞いて想次郎は率直な意見を述べる。しかし、シナリスはそれを聞いて鼻で笑った。


「国家直属の軍が俺らみたいなならずもんと共闘? ないない」


 そう言ってひらひらと手を振るシナリス。


「軍の人間は統率された戦いを好むからな。仮に能力があっても何を考えてるかわかんねー奴を作戦に組み込んだりなんか絶対しねー。いくら戦力が増えようが、統率が乱されるっつーことは致命的だって考えてる連中だ」


「そういうものですか」


 エルミナの相槌は納得がいったというよりは、会話を終わらせる意図を含んでいるものであった。


「でもお前、出発前はあんなに焦ってたじゃんか。先を越されるかもって。捨て駒連中にそんな心配いるのか?」


 今度はナツメが口を開く。先程は「変態」のレッテルを貼られることとなったが、想次郎の妄言が結果的に場の空気を和らげる要因となったのか、これまで無言だった一同間に初めて会話というものが生まれ始めていた。


「あいつらはわかっちゃいない。決闘場で熱心に実力者をスカウトしてはいるが、本当に実力のある奴らは国の誘いに乗らない変わりもんが多いってことをな。そしてこんな一見臭そうで美味しいクエストにはそんな変人がこぞって参加するってことをよ」


 シナリスは自信に満ち溢れた表情で「俺みたいな、な?」と言ってのけた。


「ねぇ、シナリス。僕たちは成り行きで集まったメンバーだけど、こういう場合のパーティって、やっぱり本来はある程度の基本というか、定石みたいなものってあるのかな?」


 想次郎もこの機に乗じて話題を振る。


「まあ、俺は群れるのは好きじゃねーから誰でも知ってる基本くらいだけどよ、大抵は役割分担を考えて編成するな」


「役割分担……」


「そうだ。今みたいな四人の編成なら、そうだな……例えば、攻撃役のアタッカー、盾役のタンク、魔法による補助役のサポーター、魔法による治療役のヒーラーで四人ってとこか」


「おお、なんかRPGっぽい……」


 想次郎は少し感動して言葉を漏らした。


「あ? なんて?」


「ああ、いや、何でもない。でもその場合、僕たちはどんな分担になるんだろう」


「あ? ああそうか、確かお前魔法使えたよな。治癒とか補助系の魔法は使えんのか?」


「あ、いや、ほとんど攻撃系だけだけど……」


「ならアタッカーだな」


「魔法ならナツメも使えたよね? 前に風とか火の魔法使ってたし」


 今度は想次郎がナツメに話を振る。


「ん? でもあたしも攻撃の魔法しか使えねーよ?」


「なら猫娘もアタッカーだ。んで……」


 シナリスはエルミナの方へ視線を向ける。しかし話しかけづらいのか、口籠ってしまっていた。エルミナは視線から察して自分から口を開く。


「わたしは魔法は一切使えません。毒属性のスキルくらいです」


「アタッカーだな」


 シナリスの代わりナツメが言った。


「俺は改めて言うまでもなくこいつを振るしか脳がねぇ」


「ってことは……」


「アタッカー四人の超攻撃型パーティでドラゴン討伐だ。どうだメガネ、楽しいだろ」


 やはり無謀なのではと思い始めてる想次郎とは対照的に、シナリスはそう言って白い歯を見せた。







------------------フレーバーテキスト紹介------------------

【アイテム】

C3:魔物の首輪

テイムスキル発動時に使用することで特定の魔物を使役できるようになる。

神の腕を食いちぎった大狼を繋ぎ止め、力を制したのはドワーフが手掛けた魔法の紐であった。それは本来信頼の証ではなく、強大な力を抑え込み、服従させる一種の枷に過ぎなかった。

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