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第75話

「なあ、想次郎! この店にしよう!」


「ホントにここが良いの?」


「ここが良いの!」


 全く気乗りのしない想次郎の様子に、ナツメはローブの下で耳と尻尾をピンと立てて主張した。


「わかった! わかったから!」


 想次郎は周囲を気にしながらナツメを宥める。


 前回に続き、想次郎は特訓の見返りとしてナツメを街へ連れて来ていた。


 当然今の想次郎には余計なことをしている時間はない。だが、最近はナツメに修行ついでに魔物狩りの手伝いをしてもらっている為、その見返りが前回の一度のみというのも割に合わないと考えた結果であった。


 一応エルミナも誘ったのだが、以前のことですっかり意固地になってしまったのか、彼女は頑なに拒否した。


 本日ナツメが所望したのは目の前の店。


 薄汚れた外観の窓から見える店内には酒が入っているであろう樽や瓶が並べられ、テーブルについている数人の男たちが顔を赤くしながら、各々景気良く巨大なジョッキをあおっていた。


 どこからどう見ても酒場だった。


「僕、未成年なんだけど……」


「意味わかんないこと言ってないで行くよ!」


 ナツメは二の足を踏む想次郎なんかお構いなしに、率先して店の戸を開けて中へ入ってしまう。


「ちょっと! 先に行かないで!」


 魔物であることが露呈してまう危険性を改めて思い知った想次郎は、慌ててナツメの前に出て、店内から向けられる視線を遮るようにする。そしてなるべく目立たないようにと店の奥にあるテーブルについた。


「んー……何にしよーかなー」


 ナツメは相変わらず警戒心ゼロの様子でフードの陰から目を光らせ、擦り切れてボロボロのメニュー表を眺めている。料理の写真が載っているわけでもないのに、既に涎がぽたぽたと滴っていた。


「ご注文は?」


 程なくして店員らしきエプロン姿の女性がメモ帳を手にやって来た。


「とりあえずこの果実酒とワイルドボアのスモーク!」


 想次郎と出会うまで街の人間とまともに接したことのない筈のナツメは、しかしそれを感じさせない程慣れた様子で注文を告げる。


「想次郎は?」


「え? 僕?」


 想次郎は自身の分のことなど全く考えていなかっただけに、面食らった様子で目を瞬いた。


「同じので良い?」


 想次郎の様子にナツメはそう提案する。


「ってお酒だよね……」


 一瞬拒否しようとした想次郎だが、よくよく考えてみると今彼がいるこの世界は元居た現実の世界とは違う。当然法律だって異なる。それは以前の決闘場の一件で想次郎も学習済みだった。店に入る前に自身が「未成年」だと告げた際に見せたナツメの反応も、それならば理解ができると想次郎は考えた。


 だとすれば、想次郎自身、酒というものに興味がないわけではない。酒の味を知らない高校生である彼自身、特段飲みたいわけではなかったが、折角合法だというならば、この機会に試してみても良いと思い至った。


「じゃあ……僕も同じもので……」


「…………えっと……」


 しかし注文を聞いた店員の動きが固まる。明らかに先程ナツメの注文を受けた時と反応が違う。


 店員は想次郎の顔をまじまじと確認すると、


「そちらの坊やは見るからに…………未成年……ですよね?」


 困ったように眉を八の字にして愛想笑いを浮かべた。


「この世界でもダメなんかい!」


 同時に、想次郎は背が低く、余計に幼く見られがちな自身の容姿を呪った。






------------------フレーバーテキスト紹介------------------

【魔法】

火属性C2:フラムル

装備武器に一定時間、火属性をエンチャントする。

神々の時代に世界を滅ぼしかけたのは、直視できぬ程の眩い紅焔を放つ炎を纏った一振りの剣であったという。

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