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第72話

「げっ……」


 宿を出た所で想次郎は店の看板に寄り掛かっているミセリに出くわす。またも反射で声を上げてしまう想次郎。


「相変わらず何よメガネ君……その反応……」


 しかし、ミセリの言葉には持ち前のキレがない。表情は俯き気味で暗く、普段の印象からは考えられない様子だった。前髪で誤魔化すようにしているが、垣間見える目元は泣き腫らしたようにほんのりと赤くなっていた。


「あの……クラナさんと、何かあった?」


 クラナの様子で余計に気になってしまった想次郎は恐る恐る訪ねてみる。


「いいの。メガネ君には関係ないから」


 しかしミセリも同様に話したがらない様子だった。


「そっか。じゃあ僕たちはもう行くね」


「新作……着てくれるなら話してあげても良い……」


 早々に諦め、想次郎が立ち去ろうとした時、ミセリがそう呟く。


「え?」


 想次郎は振り返り様の中途半端な姿勢のまま一瞬固まった。


「い、いやぁ……。話しにくいなら無理に話さなくても……」


 そうまでして知りたいわけではなかった想次郎は、何とか誤魔化そうとする。だが、


「聞きましょう。話してみてください」


 突然エルミナが想次郎の前へ出て、口を開いた。


「えぇ!?」


 腐臭の疑念が晴れたといえ、あれだけ他者を拒絶していた筈のエルミナがミセリに話し掛けたことと、勝手に条件を承諾していることに同時に驚く想次郎。


「じゃあ……こっち……」


 ミセリも急にエルミナから話し掛けられたことに驚いたのか、少しの間無言で目を見開いていたが、やがて宿の裏の方を指差し、二人を促した。



 宿の裏に着くなり、ミセリは割る前の薪の中でも大きなものを二つ見繕って地面に置いた。どうやら椅子代わりにそこへ座れということらしい。


 二人が薪に腰掛けると、ミセリ自身は薪割り用の切株に腰掛け、二人と対面の状態になる。


「…………」


 しばし無言で向かい合う三人。エルミナと想次郎はミセリの言葉を待つ。


「あのね……」


 しばらく口を噤んだまま俯いていたミセリだが、徐に面を上げて二人に視線を合わせた。


「わたし、将来は悪魔討伐部隊に入るのが目標なの」


「ああ、確か前にもそんな……」


 想次郎はこの宿で初めてミセリと出会った際に、彼女からそんな話をされたことを思い返していた。


「その為には国に実力を認めさせて軍へ入隊しなくちゃなんだけど、一番手っ取り早いのが部隊育成の為の専門学校へ入学することなの」


「そんな学校があるんだ」


「カイアスの首都にね。その学校では悪魔討伐の為の精鋭を育成してるのよ。でもママが許してくれなくて。来年にはもう入学可能な年齢になるっていうのに……。一応試験はあるんだけど、わたしの実力なら確実に入れるわ」


 ミセリはそう言い切った。


 しかしこの街において魔法を使える人間自体が珍しいとなると、低級ながら既に魔法を会得しているミセリの言い分も単なる傲慢ではなく、あながち間違いではないのかもしれないと想次郎は思った。


「なぜ、そんなにもあなたは戦いたいのですか?」


 エルミナが口を開く。どうやら想次郎以外の人間と話すのもだいぶ慣れてきた様子であった。


「決まっているじゃない。悪魔たちを、その配下の魔物を全部やっつけたいからよ」


 ミセリはそう即答する。弱々しかった表情もこの時ばかりは目元を吊り上げ、力強かった。そこからは明確な強い意志が感じられた。


 その言葉を聞いて魔物であるエルミナは「そう……」と一言だけ返し、口を閉ざす。自身がその魔物であるだけに複雑な心境であることが、想次郎には仮面の上からでも見て取れた。


「でも何でそんなにやっつけたいって思うの?」


 口を閉ざしてしまったエルミナの代わりに今度は想次郎が尋ねる。


「憎いからよ」


 またもミセリは即答した。その言葉にエルミナは微動だにしなかったが、膝の上でそっと拳を握ったのを想次郎は視界の端で感じた。







------------------フレーバーテキスト紹介------------------

【魔法】

聖属性C4:ソラ・マーテラ

対象一体へ聖属性特大ダメージを与える。

――ああ主よ。真理を阻むこの世のあらゆる不義に対し、啓示を以ての大いなる日を再現せよ。

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