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第30話

「それにしても、エルミナさんのお姉さんかぁ……。きっとエルミナさんと同じで美人なんだろうなぁ……」


 夕暮れの道を歩きながら、想次郎は見たことのないエルミナの姉の姿を思い描き、表情を緩ませる。


「わたしの姉をそんな目で見ないでください」


「えぇ? 褒めているのにですか?」


「あなたが言うといやらしい想像をしているように聞こえます」


「そんなことは…………」


 「ない」とはハッキリ言い切れず、言葉を濁す想次郎。


「噛み付きましょうか」


「すみません。もう変なこと言いません」


 足を止め、エルミナに向かって深々と頭を下げる想次郎。


「…………」


 エルミナから赦しの言葉を得られず、上げられずにいる想次郎の頭に、ふわりと何かが乗る感触があった。


 少し遅れてそれがエルミナの手のひらだと気付く想次郎。


「えっと……エルミナさん……。これは……」


 頭を上げられないまま、想次郎は困惑する。


「お疲れ様でした。想次郎さん」


 想次郎の頭上から聞こえてきたのはエルミナからの労いの言葉だった。


「…………。もしかして、子供扱いしてます?」


「別にしてませんよ。……今日はよく頑張りました」


 そう言って、くしゃくしゃと想次郎の頭を撫でるエルミナ。


「してますね……」


 本来意中の女性からのボディタッチが、想次郎という青少年にとってこの上ない幸せであることに間違いないが、この時ばかりは歯痒さが勝っていた。


「っ!?」


 その時であった、屈んで自身の頭に手を乗せるエルミナの背後から何かが迫るのを気配で察する想次郎。


 そしてそれは速度を上げて二人のもとへ迫って来る。


 エルミナの身体で隠れたその気配の主の姿を視界に収めるよりも早く、想次郎の身体は動いていた。咄嗟のことである為か、想次郎は恐怖を感じる間もなかった。


 やや身体を脇に逸らして瞬時にエルミナの懐へ入り、腰のあたりを片腕で抱くと、そのまま彼女の身体を持ち上げて反転、地面を蹴り、駆ける気配の軌道外へと飛び退く。


「きゃっ!」


 意識が追いつかず、急に体が無重力となったエルミナは短い悲鳴を漏らす。


 気配の主と対峙した想次郎はエルミナを抱えたまま、反対の手を前へ突き出した。


 そこで初めて襲い掛かったのがワイルドボアだと確認できる。先日想次郎が狩ったものよりも一回り以上大きい。


 無警戒の背後からの突進である。仮に想次郎の判断が遅れていたら、クラス的に上位の魔物であるバンシーであろうと、ひとたまりもなかったであろう。


「フラン!」


 魔法を唱えた瞬間、突き出した想次郎の手のひらに拳程の火球が形成され、ワイルドボアへ向かって飛ぶ。火球はそのままワイルドボアの額にぶつかると、拡散し、全身を炎で包み込んだ。


「ぐぉおおおおおお!」


 全身を焼かれ、もがき苦しむワイルドボア。次第にワイルドボアの動きは緩慢になり、しかし炎はなおも勢いを増す。ついにはワイルドボアの身体は跡形もなく黒い炭になり果てた。


 想次郎が唱えたのは炎属性の低級魔法。しかし、いかに低級であろうとも、圧倒的なレベル差の前には最早関係などはなかった。


 脇に抱えたエルミナをそっと地面へ降ろす想次郎。


 想次郎は考えていた。彼女に悲しい顔はして欲しくない。怖い思いもして欲しくない。彼女には幸せになって欲しい。そして願わくば、自分が彼女を幸せにできたらどんなに良いだろうと。


「エルミナさん。僕が一緒にいる限り、エルミナさんは僕が守ってみせます。あなたが魔物であろうと、アンデッドであろうと。僕は、僕だけは、ずっとあなたの味方です」


「想次郎さん……」


 エルミナは自身を襲ったワイルドボアの残骸へ目を向ける。燻る炭の塊から白い煙が細く尾を引いていた。


「消し炭にしてしまってはせっかくの獲物も無価値ですが」


「あ……」







------------------フレーバーテキスト紹介------------------

【剣技】

C1:激連斬

対象一体へ斬撃属性弱ダメージを連続で与える。技力、攻撃力、体力の総合値によって可能連撃数が変化。

力を乗せた重い斬撃を連続で繰り出す剣技。その凄まじさは仮に盾で防ごうとも体制を保つのは難しい程で、連撃が続く程その剣撃の勢いと衝撃は増していく。常人の剣士ならば二、三連撃が限度だとされるが、世の中には十を超える連撃を可能とする達人もいるという。

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