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どーせみんなチート使い  作者: 星になった狐
5/5

今日の収入4

音さえも飲み込む夜の暗闇。この静寂がいつも通りであることを時折恐ろしくさえ思ってしまう。多少耳に付くぐらいに賑やかな子守歌があったほうが寝付きも良くなるってものだ。


「戸締りはした、下の明かりは消した、歯も磨いた、後は寝るだけ…」


寝る前の意識がなんと無しにぼんやりする頃、ついついこういった確認を口ずさんでしまう。


今日は何事もなく客もなく静かな一日だった。明日もきっといい日になるよね?収益0の今日が良い日な訳ないだろさっさと寝ろ。


情緒が不安定とも取れるような動かない頭をくわりくわりと揺らしながらベッドに向かう。

暖かい毛布によってまどろみに包まれ、意識の目先は静かに重い足取りで暗闇に向かっていく。



そんな心地よい感傷に浸る自分の心なぞ知らんとばかりに身体が宙に浮く。

宙に舞っているのは自分の身体のみにならず、視界には木やガラスの欠片が不規則にちりばめられている。

自分の意識が覚醒する前にたった一つの音が耳に入り込む。

次に自分の目が覚めたのは場所も知りえぬ草のベッド。


体は起こしたくないが、さすがに家の状況を確認しなきゃならない、実に面倒くさい。どこで寝ようか、放っておいてここに家を作るか、頭が回らない、眠い、面倒くさい、邪魔しやがって、イライラするなぁ、うるさいな、黙らせて寝よう。


チャックを作り出し、中を覗く。

中には身に覚えのある世界が広がっている。それは自分の記憶が正しければの話だが。

自分の視界には煙が立ち込め残骸が辺り一面に散りばめられており、下手に足を踏み出せばケガしてしまいそうなものだ。

少し離れた場所から、この時間には珍しい声が聞こえてくる。


「ターゲットは?跡形もなく消し飛ばしたりしてないだろうな」


「我が偉大なる兄弟が失敗する訳なかろう。そこに転がっているから拾ってこい」


「嫌な雑用押し付けやがって…でもまぁ、温室育ちのぼっちゃんは生ゴミは刺激強いかw」


「それで納得するならそう思えば良い。口よりも手を動かせ」


「嫌な奴だなホントに」


「あぁホンt」ドン


「口に意識が集まるから気配も察知できないんだ」


「お前は〖眼〗があるからだろ」


二人は自分の登場に驚く素振りを見せることもなく処理し周囲に意識を配り始める。


「手ごたえは?」


「確かにあった。それに、その【手】に抱えているのも本物だろう」


「はぁ?依頼内容は生死問わず捕まえろだったよな?殺したらダメなんじゃないかこれ」


「それぐらいの察しは付いている。口よりも頭を動かして捕まえる方法を考えろ」


「お前も少しは『捕まえる事』を考えろ」


「申し訳ないが『生き残る事』を考えなきゃならないのでな」


「は?」


瞬間、四方八方から音もなしに弾が飛んでくる。


「…礼は言わないぞ」


「こちらも頭は1よりかは僅かでも多い方が良いからな」


「1にも満たないって言いたいのか?」


眼帯を付けた軍服は脇に迷彩服を着崩したサングラスを抱え、飛行機から片手でぶら下がっている。

少し離れた先で森に紛れ身を隠した。


さて、どうするか。このまま逃してしまうのは実に癪だ。このまま逃せばまた来るだろう。安眠が奪われるのはどうしても許せない。


相手の能力も分からないのに森に特攻しかけるなんてのはただの自殺行為でしかない。相手の力を見計らう為に命捨ててもいいが、面倒くさい。

身体を隠しながら森に足を踏み入れる。足音が多少してしまうのは致し方ない事ではあるが、こうも静かな世界では不安の材料の一つとなっていく。

片方は飛行機を持っていたが、あれは道具を生み出す自分に似た能力なのか、それとも自分のような人間から購入した道具なのか。

考えても意味のない事ばかり頭に浮かべ考え事の真似事をするうちに段々と目が冴えてくる。

だが、道具を作らせる奴を放置しておくのは段々と時間が経てば厄介なことになる。


足場は不安定であっても早く行かなきゃならないと考えがシフトすれば自然と足は速くなり周囲への配慮というのは薄くなっていく。足元に落ちている木の枝を踏み抜く音など気にすることなく奥へと進んでいくのが悪かった。


「思っていたよりかは早いな。手遅れなほどに遅いが」


「ぅ…ぁ…」


「捕まったのだ、もう諦めて受け入れるんだな」


身体が痺れてまともに動くことが出来ない。


「もう考えるだけ無駄だ」



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