今日の収入3
異世界の扉が開かれそこから進軍してくる異界人に対応する能力者数名の戦闘から発せられる轟音が鳴り響く曇った昼下がり。
店の裏にあるキッチンで、己の半身である腹の虫に急かされながらやっとの思いで積み上げた肉と野菜の塔にこれからいざ立ち向かわんと口をあんぐりと開けたその瞬間、実にタイミングの悪い事にそいつは現れた。
「やぁやぁやぁ、頼もうじゃないか。店主はいるかい?いるようだ!元気そうで何よりだ!それならば問題ない、是非お願いしたいのだが…客がいる目の前で飯を食うとはどんな教育を受けてきたんだい?いやしかしながらそれは実に旨そうだ、私に分けてくれるというのであれば不問としようじゃないか」
ほんっとうに面倒な輩が現れやがった。
「ノックもなしに入ってくる奴にマナーをとやかく言われたくはないね。あいにく今は休憩中だ、商品を選んだら適当に待ってろ」
コイツの戯言に付き合うより今は目の前のバベルの塔を腹に収めるという大切な使命がある。こいつに付き合っていたら日が暮れても口を動かすことになっていよいよ口の中にモノを収めるタイミングを失うであろう。
「今日は商品を買いに来たわけではないのだよ」
その一言に意識が奪われ、口へと運ぶ手を止めてしまう。
「いやなに、食べながら聞いてくれれば構わない。今回依頼したいのはダンジョンへの同行をお願いしたくてね。何も難しい依頼ではないんだ、ただちょっと素材の最終のお手伝いをお願いしたくてね」
そんなの自分じゃなくても問題ないだろ。もしくはそれに使える道具の作成の依頼でも寄こしてくれればいい。そんな思いを込めて訝しげな表情を向ける。
「確かにもっと適任な人は他にいると思うだろうけど、店員程おもしろ奇怪な立ち回りをしてくれる人なんてそうそういないんだよ。不測の事が起きても何とかしてくれる訳だし。これ以上便利な人はいないんだよ」
要するに自分は都合の良いドラ〇もんのポッケと言いたいわけだ。
「それに今回は奇麗な素材を求めているからね、君にしか頼めないんだよ。報酬は弾むからさ、頼むよ。」
「どれくらい出してくれる?」
「まぁざっとこれくらいでどうかな?足りないならもうちょい出すけど」
「ついていくから、可能な限り出してくれ」
「あぁ!構わないとも!だが常々思うがその守銭奴のような精神を持っておきながらなぜ君は…」
この後はずっ……………っとくだらない話が延々と続き、それは現場についても止まることはなかった。途中、自分の適当な相槌がこいつの話を助長しているのかもと思ったがずっと前に自分が黙っても数時間は話し続けていたことを思い出し、仕方ないと割り切りラジオの代わりだと思いながら歩みを進める事にした。
「さぁ、ついたぞ。コイツだよ、コイツの核が欲しいんだ!」
辿り着いた先は洞窟の奥深く。最深部というにはずっと浅い場所ではあるが地上からの距離は優に100メートルは超える。辿り着いた場所は空間が開けており、中央に人型のスライムが座り込んでいる。
「あぁ、なるほど…大きさはこれでいいの?」
「まさか、ここの天井に届くぐらいには大きくしてもらわなきゃ困るね、こんな小さいので済むなら店員なんか呼ばないさ」
「…大きくしたら核の露出までは自分でやってくれる?」
「刃物を大量に用意してくれればいいさ、自分の愛刀をこいつに食わせるのはまっぴらごめんだからな」
いちいちうっぜぇなぁ。金だけもらってさっさとずらかりたいわ。
ふぅ、と一息ついて鞄から本を取り出す。本を開いてそう内の1頁にある銃に手を突っ込み引き抜いた。そしてそのまま、部屋の中央のスライムに銃口を向けて引き金を引く。肩に穴が開き腕が崩れ落ちる。落ちた砂がまた体に取り込まれ腕が再生し、手の先に銃を模したものが生成されこちらへ向けてくる。それを見てこちらはまた引き金を引く、また引く、引く、引く、引く、引く……………
何度撃ち込んでも体は再生されていく。そして再生するたびに少しずつではあるが体は大きくなり、再生の速さも上がっていく。
この世界のスライムは核を中心に周囲のモノを取り込み、自身を護る鎧とする。スライムの所有する魔力に比例して核は大きくなり、取り込む量が多くなっていく。また、魔力に頼った攻撃などは、一時的に体を崩すことが可能だが核は絶対に壊れる事はなく、すぐに全て吸収してしまい体を再生させてより強力な個体となる。核は物理的な攻撃でのみ破壊することが可能である。
ここにいるスライムは少し特殊で、鎧とする魔力の流れには砂を纏い、砂だけでなく岩を体に取り込む事もあり、身体を纏う魔力の流れに乗った砂にヤスリのように削られやがては砂となり体の一部になる。この性質上、刀等の道具を用いて鎧の上から物理攻撃すると核に届く前に砂塵と化し鎧に取り込まれてしまう。
自分が撃ち込んだ魔力の弾は全てスライムに食われ、順調に成長させる糧となってくれた。
いつの間にやらその身長は天井に届く程度になっており、撃ち止める事にした。
こうまで大きくなると育てた甲斐があったと少し満足感を覚えてくる。
次に、適当な剣を作っては切りかかり、剣を食わせたら離れてを50回は繰り返した。
マジで剣を作ることに体力をもってかれてクッソ怠いのに、加えて普段動かす事のない身体を引きずり型も何もないヘロヘロとした攻撃がどれだけ無様な事か想像するのに時間はかからない。ヨタヨタと下手なポーズで切りかかっては剣を食われ逃げる様はあまりにも滑稽だったようで、アイツは腹を抱えて笑っていやがる。あとでぶっ殺してやる。
一見無駄な事をしているように見えるが、体に金属片を取り込ませる事で核が研磨され美しい球体になるとの話だ。文句はあるが金をもらっている以上仕方ないと割り切っている。
それらの作業が終わるや否や、自分は早急に岩陰に隠れる。自分の今できる仕事はここまでだし下手に死にたくなんかない。
それをみたアイツはようやく自分の番が来たかと腰を上げる。
その様は年のいったおっさんにそっくりで録画しておけば後で馬鹿にできたのにと少し後悔した。
アイツはスライムに向かって走り突っ込んでいく。
懐に入り込み勢いよく薙ぎ払おうとするも、そこにスライムは変化させた手から弾を撃ち出してくる。
それが分かっていたと言わんばかりに剣身を傾け奇麗に受け流していく。
人の理を超えた化物が集まる世界では弾丸を受け流すなんてのは当たり前にできる技とされるが…出来る訳ねぇだろ、お前ら人間じゃねぇ!なんなら稀に手のひらで受け止めたりするバカもいるぐらいだ。こういった理由で世界の飛び道具の値段が著しく上がらないのに加え、新しいのを開発しようという技術者がめったに生まれないことが実に嘆かわしい。
スライムは段々と撃ち出す速度を上げ、終いには雨のような散弾となってソイツに襲い掛かる。
それに対し、ソイツは一振りだけ剣を振り下ろす。
振り下ろした瞬間、世界が静止したかのように音が消え動きが息を潜めた。
ソイツが構えなおすと同時にその場にとどまっていた弾達はサラサラとその場から崩れ落ちていく。
いつ見ても気持ち悪い能力だな。
スライムは銃が効かないと判断したのか手の形を変え、ソイツの持つ剣にそっくりな形を模し切りかかった。その姿は5メートルを超える岩の津波が襲い掛かってくるようである。
十数メートルも離れてる自分に所にまで雪崩てきそうで少しちびりそうになるほどである。
それに怯む事無く立ち向かうソイツに少し尊敬の念を抱いてしまう。
ソイツは腰を低くして剣を構え、大きく切り上げる。
剣同氏がかれそこから進軍してくる異界人に対応する能力者数名の戦闘から発せられる轟音が鳴り響く曇った昼下がり。
店の裏にあるキッチンで、己の半身である腹の虫に急かされながらやっとの思いで積み上げた肉と野菜の塔にこれからいざ立ち向かわんと口をあんぐりと開けたその瞬間、実にタイミングの悪い事にそいつは現れた。
「やぁやぁやぁ、頼もうじゃないか。店主はいるかい?いるようだ!元気そうで何よりだ!それならば問題ない、是非お願いしたいのだが…客がいる目の前で飯を食うとはどんな教育を受けてきたんだい?いやしかしながらそれは実に旨そうだ、私に分けてくれるというのであれば不問としようじゃないか」
ほんっとうに面倒な輩が現れやがった。
「ノックもなしに入ってくる奴にマナーをとやかく言われたくはないね。あいにく今は休憩中だ、商品を選んだら適当に待ってろ」
コイツの戯言に付き合うより今は目の前のバベルの塔を腹に収めるという大切な使命がある。こいつに付き合っていたら日が暮れても口を動かすことになっていよいよ口の中にモノを収めるタイミングを失うであろう。
「今日は商品を買いに来たわけではないのだよ」
その一言に意識が奪われ、口へと運ぶ手を止めてしまう。
「いやなに、食べながら聞いてくれれば構わない。今回依頼したいのはダンジョンへの同行をお願いしたくてね。何も難しい依頼ではないんだ、ただちょっと素材の最終のお手伝いをお願いしたくてね」
そんなの自分じゃなくても問題ないだろ。もしくはそれに使える道具の作成の依頼でも寄こしてくれればいい。そんな思いを込めて訝しげな表情を向ける。
「確かにもっと適任な人は他にいると思うだろうけど、店員程おもしろ奇怪な立ち回りをしてくれる人なんてそうそういないんだよ。不測の事が起きても何とかしてくれる訳だし。これ以上便利な人はいないんだよ」
要するに自分は都合の良いドラ〇もんのポッケと言いたいわけだ。
「それに今回は奇麗な素材を求めているからね、君にしか頼めないんだよ。報酬は弾むからさ、頼むよ。」
「どれくらい出してくれる?」
「まぁざっとこれくらいでどうかな?足りないならもうちょい出すけど」
「ついていくから、可能な限り出してくれ」
「あぁ!構わないとも!だが常々思うがその守銭奴のような精神を持っておきながらなぜ君は…」
この後はずっ……………っとくだらない話が延々と続き、それは現場についても止まることはなかった。途中、自分の適当な相槌がこいつの話を助長しているのかもと思ったがずっと前に自分が黙っても数時間は話し続けていたことを思い出し、仕方ないと割り切りラジオの代わりだと思いながら歩みを進める事にした。
「さぁ、ついたぞ。コイツだよ、コイツの核が欲しいんだ!」
辿り着いた先は洞窟の奥深く。最深部というにはずっと浅い場所ではあるが地上からの距離は優に100メートルは超える。辿り着いた場所は空間が開けており、中央に人型のスライムが座り込んでいる。
「あぁ、なるほど…大きさはこれでいいの?」
「まさか、ここの天井に届くぐらいには大きくしてもらわなきゃ困るね、こんな小さいので済むなら店員なんか呼ばないさ」
「…大きくしたら核の露出までは自分でやってくれる?」
「刃物を大量に用意してくれればいいさ、自分の愛刀をこいつに食わせるのはまっぴらごめんだからな」
いちいちうっぜぇなぁ。金だけもらってさっさとずらかりたいわ。
ふぅ、と一息ついて鞄から本を取り出す。本を開いてそう内の1頁にある銃に手を突っ込み引き抜いた。そしてそのまま、部屋の中央のスライムに銃口を向けて引き金を引く。肩に穴が開き腕が崩れ落ちる。落ちた砂がまた体に取り込まれ腕が再生し、手の先に銃を模したものが生成されこちらへ向けてくる。それを見てこちらはまた引き金を引く、また引く、引く、引く、引く、引く……………
何度撃ち込んでも体は再生されていく。そして再生するたびに少しずつではあるが体は大きくなり、再生の速さも上がっていく。
この世界のスライムは核を中心に周囲のモノを取り込み、自身を護る鎧とする。スライムの所有する魔力に比例して核は大きくなり、取り込む量が多くなっていく。また、魔力に頼った攻撃などは、一時的に体を崩すことが可能だが核は絶対に壊れる事はなく、すぐに全て吸収してしまい体を再生させてより強力な個体となる。核は物理的な攻撃でのみ破壊することが可能である。
ここにいるスライムは少し特殊で、鎧とする魔力の流れには砂を纏い、砂だけでなく岩を体に取り込む事もあり、身体を纏う魔力の流れに乗った砂にヤスリのように削られやがては砂となり体の一部になる。この性質上、刀等の道具を用いて鎧の上から物理攻撃すると核に届く前に砂塵と化し鎧に取り込まれてしまう。
自分が撃ち込んだ魔力の弾は全てスライムに食われ、順調に成長させる糧となってくれた。
いつの間にやらその身長は天井に届く程度になっており、撃ち止める事にした。
こうまで大きくなると育てた甲斐があったと少し満足感を覚えてくる。
次に、適当な剣を作っては切りかかり、剣を食わせたら離れてを50回は繰り返した。
マジで剣を作ることに体力をもってかれてクッソ怠いのに、加えて普段動かす事のない身体を引きずり型も何もないヘロヘロとした攻撃がどれだけ無様な事か想像するのに時間はかからない。ヨタヨタと下手なポーズで切りかかっては剣を食われ逃げる様はあまりにも滑稽だったようで、アイツは腹を抱えて笑っていやがる。あとでぶっ殺してやる。
一見無駄な事をしているように見えるが、体に金属片を取り込ませる事で核が研磨され美しい球体になるとの話だ。文句はあるが金をもらっている以上仕方ないと割り切っている。
それらの作業が終わるや否や、自分は早急に岩陰に隠れる。自分の今できる仕事はここまでだし下手に死にたくなんかない。
それをみたアイツはようやく自分の番が来たかと腰を上げる。
その様は年のいったおっさんにそっくりで録画しておけば後で馬鹿にできたのにと少し後悔した。
アイツはスライムに向かって走り突っ込んでいく。
懐に入り込み勢いよく薙ぎ払おうとするも、そこにスライムは変化させた手から弾を撃ち出してくる。
それが分かっていたと言わんばかりに剣身を傾け奇麗に受け流していく。
人の理を超えた化物が集まる世界では弾丸を受け流すなんてのは当たり前にできる技とされるが…出来る訳ねぇだろ、お前ら人間じゃねぇ!なんなら稀に手のひらで受け止めたりするバカもいるぐらいだ。こういった理由で世界の飛び道具の値段が著しく上がらないのに加え、新しいのを開発しようという技術者がめったに生まれないことが実に嘆かわしい。
スライムは段々と撃ち出す速度を上げ、終いには雨のような散弾となってソイツに襲い掛かる。
それに対し、ソイツは一振りだけ剣を振り下ろす。
振り下ろした瞬間、世界が静止したかのように音が消え動きが息を潜めた。
ソイツが構えなおすと同時にその場にとどまっていた弾達はサラサラとその場から崩れ落ちていく。
いつ見ても気持ち悪い能力だな。
スライムは銃が効かないと判断したのか手の形を変え、ソイツの持つ剣にそっくりな形を模し切りかかった。その姿は5メートルを超える岩の津波が襲い掛かってくるようである。
十数メートルも離れてる自分に所にまで雪崩てきそうで少しちびりそうになるほどである。
それに怯む事無く立ち向かうソイツに少し尊敬の念を抱いてしまう。
ソイツは腰を低くして剣を構え、大きく切り上げる。
剣同士がぶつかり合う瞬間辺りには火花が飛び散り、甲高い金属音が何重奏にもなってこの狭い世界に披露せんと主張している。
スライム側の剣が大きく弾かれ体勢を崩すもその体を大きくしならせ、もう一度振り下ろす。
何度も何度も繰り返し塊のような腕を速度を上げながら振り落とし何度も連続して叩き付ける。
その連撃に対しアイツは弾き返すことなく何度もいなしながら剣をスライムの身体に打ち込んでいく。
「はっはっはっ!実に生ぬるい、軽い、まだまだ成長の余地があるが成長させ過ぎては困るからな!剣を身体に切り込めないことも実に憎ましい!お前が人になれるのであればどれだけよかったか!惜しい、実に惜しい!…そろそろいいぞ!終わらせてしまおう!」
逝きたくないなぁ…行きたくないなぁ…面倒だし死にたくないし…仕事だから行くけどさ…
後日続き書こう(いつになるかはわからない)