今日の収入1
街から離れた人が誰もいない草原にやってきた。
ここならどれだけ動いても「人」に迷惑かける事は無いだろうと彼女は言う。
俺の迷惑について聞いてみたら、「人じゃないから問題ない」と…これ以上ない理不尽だが致し方ない。
「手加減したら許さないわよ」
彼女から少し距離をとるために背を向けた時に不意に投げられた
「勿論、そもそも『戦い』で手加減できるほど俺は器用じゃないんだから…」
振り向こうとしたときすでに自分の意志はそこになかった。
多分いうタイミングはここじゃないと思うが、ここで言わないと多分もうタイミングがないから言わせてもらう。
自分の能力は死んでもリスポーンするという何とも便利な能力だ。しかしまぁ、デメリットもあるもんでリスポーンする場所はこの世界のどこかにランダムで甦るというクソ仕様。もはやバグだろこれ。
もう一つ、何でも作れるというチート能力がある。詳しいことは今度話そう。
とにかく今は元の場所に戻ることが優先だ。
常に自分の背中にはチャックをつけているのだが、これは自分の能力で作り出した物で、チャックとチャックを繋げてくれる物…要するにポータルチャックなのだ。これでいつでも自分の死体のもとに戻れる優れものだ。
手元に2つ作り、次死んだ時用に先に背中につけておいてもう一つは地面に敷く。
多分相手は殺したからと言って油断するような奴じゃないだろう…さっき躊躇いなく殺してきたし…試しに偵察用のドローンでも飛ばしてみるか。
チャックを開け、ドローンを2台飛ばしてみた。
都合よく自分はうつ伏せになっててくれたのかチャックの中には空が見える。
ドローンの音はならない様にしてるはずなのだがチャックをくぐってすぐにメキッとプラスチックの折れる音がした。
あぁ、これ出待ちしてやがる。こっちに来ない当たり相当警戒してるし……厄介だなこれ。
だったらやることは一つ。
地面のチャックに手榴弾を2個叩きつける。え?そんなのどこにあったのかって?今作ったんだよ。
少ししてから地面にやっとあったてくれたらしく、轟音と共にものすごい量の煙がチャックから湧いてきた。
それを合図に自分はチャックに入り込んだ。
チャックの向こう側は煙でまともに前すら見えない。
とにかくここから一度離れなければまた瞬殺される。
自分の足元の肉塊の上のほうはドローンだったものと裂け方が酷似していた。
足に外側にタイヤのついたブーツを作り滑るようにしてその場を離れた。
煙を抜けて数秒した後、煙が花が開くように中心から晴れていった。
その中心に彼女はおり、
自分の服の脇ポケットのチャックを開き、明らかに大きさを無視した銃を取り出す。
後ろも見ずに横に移動しながら彼女に向けて銃を連射する。
彼女の目が俺を追うより早く彼女に弾丸が達する。
銃弾は彼女を確かに突き抜けていくが、血は出ない。
そういう作りにしているので何も驚くことはない。
当たるとともに彼女はそこに留まりあたりを見渡そうとするばかりだ。
それを勝機と見込んで彼女に近づいた。
しかし失敗した。
タイヤの音のせいだろう、手元に剣を作り突き立てるために近づこうと距離を縮めあと数メートルに達した瞬間彼女の黒に染まった瞳がこちらを向き、足が何かに引っ張られ転んでしまった。
目の前には彼女の足が見え、見上げようとした時には既に知らない場所にいた。
次はすぐにチャックを作り最初の自分の死体のほうから飛び出し、ホバーブーツを作り距離をとった。
彼女はこちらに気が付いたのかこちらを向く。
直ぐにタイヤに切り替え横移動しながら様子を見る。
2つ目の肉塊は頭が何か強い力でつぶれているようだった。
彼女能力は分からないがどうにかして殺さずに決着を付けなければ……
「はい、20%OFFね」
「は?30じゃないの?あんた馬鹿なの?自分の死んだ数も覚えてないの?」
「店は行ってくると同時にやったあれを入れる訳ねーだろ、馬鹿か」
「自分の死を割引に使うアンタのほうが馬鹿だと思うけどね」
そう、うちの店は1度だけとはなるが俺を殺した数だけ割引するというシステムを導入している。
勿論客なので相手を殺すことは出来ない為、油断できないし可能な限り手を尽くさないと簡単に殺されてしまうので手を抜くということは出来ない。
「じゃ、これとこれと…あと戸棚の上から2番目左から3つ目の便4つお願い」
「はいはい、2割減で銀貨24枚ね」
「こんな美少女なんだからもっと割引してくれてもいいじゃない!」
「ゆうて中身おっさんじゃん」
「もう二度とこないわ!」
「はいはい毎度あり」