理不尽な幻滅
ーーーどうして、こんなことに
窓が割られる事件から数週間、園川さんの周りでは”何故か”私が一緒にいる時よくトラブルが起き、その度に治療をするのだった。
私は考えごとをしながら生徒会室へ続く廊下を歩いていた。
(なんでこんなにトラブルが起きるのかしら、海里さんたちと対策を考えた方が良さそうね)
ガチャッと、そう思いながら生徒会室の扉を開く。
「失礼します」
しかし入ると何故かその場にいる全員から冷たい目を向けられる。
(⋯え、なに?)
「どうかしましたか?」
「どうかしましたか、じゃない」
一段と低い声で言ってくるのは婚約者で生徒会長でもある海里さん。その後ろには守られるようにして園川さんが泣きそうな目で見ている。
「園川さん、どうしたんです⋯」
「貴女、自分が何をやったかわかっているのですか」
「⋯え?」
「とぼけるんじゃねーよ、お前梨沙虐めたんだってな」
「玲香様、お慕いしてましたのに、残念です」
口々に冷たい口調で責めてくるのは海里さんの従者である3人、北條真樹、西條竜二、南條陸斗だ。
(⋯っ!?⋯私が園川さんを虐めた!?)
なんでそんなことになってるんだと思い急いで取り繕う。
「私はそんなことしておりません!」
「じゃあなんでお前がいる時ばっかトラブルが起こるんだよ」
それは私もわからない、むしろこっちが聞きたいくらいだ。
「それでも私はそんなこと⋯っ」
早く誤解を解こうと焦りながらも言い返していたが次の瞬間、海里さんがたった一言呟くのだった。
「そんな卑劣な人間だったとはな、幻滅したよ」
その言葉を聞き、私は急激に熱が冷めた。
もう言い返す気力も、ない。そんな私には構わず彼らは園川さんに声をかける。
「もう大丈夫ですよ」
「俺達がついてるからな」
「安心してください、梨沙さん」
「皆さん、ありがとうございます、⋯私は大丈夫です」
「⋯玲香」
急に名前を呼ばれた私はあからさまにビクッとしながら恐る恐る顔をあげると明らかに怒っている海里さんの姿。
「お前は今後生徒会室に来なくていい、副会長も、やめてもらう」
(⋯違う、何もしてない)
「副会長は梨沙にやってもらう、お前は二度と梨沙に近づくな」
(⋯本当にやってないのに)
「表向きは本人の諸事情でやめるってことにしておくが、次梨沙になにかしてみろ、学校にも入れなくしてやるからな」
「言い返さないってことは図星なんですかねぇ」
真樹さんが冷たい言葉を放つ。
何か言い返すべきなのはわかっているが、今の彼らには私の言葉は届かない。だから。
私は深く頭を下げ言葉を返す。
「⋯わかりました、その処分お受けします、ーーーただ、」
そこで言葉を切り、頭を上げ、涙を流す寸前の顔で笑みを貼り付け言う。
「私は本当に何もやっていない、ということを覚えておいてください、ーーー失礼します」
彼らに何か言われる前に私は部屋を飛び出し逃げた。迎えの車を待たず、学校からずっと走り、家に飛び込むようにして帰ってきた。メイド達が驚いていたがそんなことも気にせず、自分の部屋に勢いよく入り扉を閉めた瞬間、今まで我慢していた涙が溢れてきた。
「うぅっ⋯、」
どうしてこんなことになったんだろう、そんなことを考えていれば、いつ着替えたのかも覚えていないが、部屋着の姿でベッドで寝ていた。
そして今に至るという訳だ。
(なんで、誰も信じてくれないの)
悲しみに暮れながら私は泣きすぎてズキズキする頭をおさえながら、ベッドで深く眠るのだった。
ーーーそして不思議な『夢』を見るのだ。