第37話 女神の爆裂疾風弾
「……き、君孝…… 」
江里さんの名前呼びの破壊力にやられてしばらくの間、机に突っ伏していたら脇腹をつつかれた。
や、やめっ!? 江里さん地味にくすぐったいんですけど!?
「にゃっ! ……何ですか江里さん?」
くすぐったさ+驚き=ネコ。
すぐに何事もなかったかのように取り繕って聞き返したんだけど、江里さんは笑みを深めて……、
「……んっ♪」脇腹ツンツン
「んにゃっ!?」
「……そーくんは、ラブだったのに……ネコにも……なるの?」脇腹ツンツン
「にゃめて!? 江里さん、落ち着いて!?」
僕の反応が面白かったのか、何度も脇腹をつつかれた。……あぁ、少しサディスティックな表情で笑う江里さんも最高に美人です。……女王様かな?
ってそれよりも「そーくんは、ラブだった」ってどういうこと!? ラブって!? しかもいつの間にか僕のこと「そーくん」呼びですか!? ……最高かよ。
……もう色々ごちゃごちゃでパニックだよぉぉぉぉ!?
両手の人差し指をピンと立てて戦闘態勢になっている江里さん。
対する僕は白旗降参の両手上げ。
「私、どっちも……好き……迷う」
「は、はぁ……」
「もう……1回、だけ」脇腹ツンツン
「みきった……にゃぁぁぁ!?」江里さんの片手を真剣白刃取り→もう一方の手でつつかれる
「も、もう1回っ!!」目をキラキラさせて手をわしゃわしゃさせながら
悩まし気な表情から放たれた鋭い2本の矢。
天高くから降り注いだ1本は防ぐことができたが、低空を這うようにして接近した2本目はスルリと僕の防御を抜けて脇腹に突き刺さった。
……江里さんのダイレクトアタック! 女神の爆裂疾風弾! 効果……HP8000を削られ、僕は即死する。
……なんてふざけている場合ではない。
江里さんの茶目っ気が爆発している。このままでは僕の精神が爆発しかねないので、何とか話題を逸らさなくては……!
「えっ! ざとさん!」
「……ん?」
「……僕が来る前に、何か……言ってませんでした?」
言いたくはなかったけど潜入任務で入手した極秘情報で江里さんに揺さぶりをかける。
何にとは言わないけど、こうでもしないと僕が殺られるからだ。
「…………………………んっ!?」
たっぷり3秒ほど目線を上に向けて回想してから、江里さんがビクッと揺れた。
そしておもむろにブレザーのポケットからスマホを取り出して僕を見た。
「……ん~」ジー
「…………」
「……ん~~っ!」ジーッ
「…………?」
「……ん゛~~~っ!!」ジーッ!!
「……江里さん?」
かわいく唸りながら僕を見つめてくる江里さん。
視線は何かを伝えようとしている気がするんだけど、いかんせんコミュ障の僕がそんなものを読み取れるはずもなく、観念して声を掛けてみた。
「あ、あの……けいた――!?」
け、けいたって何!? けいたって誰!?
そのタイミングで三番乗りのクラスメイトが登校してきて、それ以降江里さんが口を開くことはなかった。
――ただたまに、下唇を噛みながら悲しそうな表情を湛えて何度かこっちを見ていた気がする……。
第34話の後書きの茶番通り戦闘態勢に移行した江里さんでしたが、自爆して交換出来ずに午前の部を終えました……江里さんはやっぱりポンコツ。
やきもきしながら授業中に相田くんをチラ見していたのは、どうやら本人にはバレていたようです……あぁ、マジでポンコツですわ……。不憫すぎるから誰か助けてあげてぇぇぇ!?





