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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編前半

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第31話 商店街のVENUS

 江里さんに連れられてきたのは僕も知っている、この辺りでは有名な大型商店街だった。

 夕方ということもあってかアーケードの下を多くの人が行き交い、活気に満ち溢れている。

 晩ごはんの食材やお惣菜を買いに来た奥さま、ママ友と談笑する奥さま、日用品を自転車のカゴに入れて駆ける奥さま。……うん、この時間は奥さまの戦場だ。

 そんな奥さま方の人混みを物ともせず、江里さんは僕を引っ張りながら縫うように進んでいった。


「おぉ! 美奈ちゃん、らっしゃい! 今日の豆腐は上出来だよ!」

「あらぁ、美奈ちゃん! 今日は豚コマ安くしとくよ~! おまけもう~んと付けちゃう!」

「魚! 美奈ちゃんみたいな美人さんにはやっぱり魚でしょ! 今日は良い初鰹が入ってるよ!」

「美奈ちゃん! こっちも見てって! 今日の春野菜の天ぷらはお買い得だよ~!」

「新しいブランドのイチゴ仕入れたから後で寄ってってなぁ~! 試食待っとるね!」


 歩いているとあちらこちらから「美奈ちゃん!」「美奈ちゃん!」と声が掛かかり、その度に江里さんはこくこくと頷いたり、手を小さく上げて反応していた。

 見ると声を掛けてくるのは皆お店の人で、どうやら江里さんはこの商店街の常連さんのようだ。


「…… (おかず、) (何好き?)……」


 商店街の中程の邪魔にならない場所で歩みを止めた江里さんは、振り返って何か言っているが、この人混みの中では聞き取れなかった。


「……なんですか?」

「……おかずっ! 何、好きっ?」


 手を口元に当ててメガホンの形を作った江里さんが、やや大きめの声で若干恥ずかしそうにしながら言った。


 ……ここに来たのはそういうことだったのか!


 江里さんの真意がようやく分かった……と言っても推測だけど、明日のお弁当に僕の好きなおかずを入れようとしてくれているみたいだ。


「お弁当?」(明日のお弁当のおかずってことですか!?)

「……ん。お弁当」


 今度は手でお弁当箱の形を作って頷く江里さん。


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ! 女神過ぎて、その江里さんが、微笑みで、眩しくて、直視でき……ないッ!

 ……自分でも何が言いたいのか分からない程の喜びに、僕は混乱していた。

 女神さまが平民の僕のために好物を用意して下さる……最後の晩餐かな?


「た、卵焼き! ……江里さんの」


 いの一番に出たのは江里さんお手製の卵焼きだった。

 甘くて、ふわふわで、あることが当たり前というか、ないのがありえないとでも言えばいいのか、とにかくあの卵焼きがないとお弁当とは呼べない程の、なくてはならない存在なのだ。毎日いや、毎食食べたって飽きる気がしない!


「…………」

「え、江里さん?」

「…………」


 江里さんの返答はない。

 完全に俯いてしまって、お腹の前で指組された手が頻りに組み替えられている。


「江里さん?」

「……卵焼き……一番……好き?」


 再度呼びかけたところで江里さんがゆっくりと顔を上げた。

 ただ、目線は僕を捉えておらず、右に左にと泳いでから「好き?」と言ったところで、ちらりと盗み見るようにこっちに視線を向けてきた。


 ……好きぃぃぃぃぃぃぃ!

 ……ゴホン、落ち着け僕。少し冷静になれ。舞い上がり過ぎてるぞ!







 ……大好きでぇぇぇぇぇぇぇぇぇす!


「……はい、一番……す、すす……す好きです」


 なんでか分からないけどすっごい恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい。

 あまりの恥ずかしさに上手く言えず、聞こえようによっては「ススキです」になってる気がする。……おかしい。卵焼きの話しをしていたのになんでイネ科の植物の話しになってるんだ……?


「私も……その、相田くん……一番…………好き………………ん? ん゛~~~~~っ!?」


 ……。

 …………。

 ………………え?

 ……………………えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

 あばばばばばばばばばばば!! ちょっと江里さんその答え方は色々ヤバいですって! 反則ですって!! 誤解しますよ!? いいですか!?


 自分で言ったことを思い返してみて気が付いたのか、江里さんが顔をカァァァ! と深紅に染め上げて、それを隠すように両手で覆い、しゃがみこんでかわいらしく唸っている。……なんだこのかわいい女神さま。


 僕はどうすれば、と考えて辺りを見回していたら店先に貼ってる1枚のポスターが目についた。

 上部に商店街の名前が大きく印字され、下部には『商店街のVENUS(ヴィーナス)御用達店舗』の文字が。

 真ん中には、純白の総レースマキシ丈ワンピースに黒いリボンの付いたカンカン帽子(ボーター)を被った長い黒髪の女性が、丁度ポスターが貼ってあるお店の前で買い物をしている様子を斜め横から撮った画像がプリントされていた。宣伝なのだからお店がメインだろうに、モデルさんのようなプロポーションの女性が圧倒的な存在感を放っており、目はそちらに惹きつけられてしまう。

 斜め横からで顔は一切映ってないし、店全体を映している構図なので遠くて分かりにくいけど……、


 ――これ、江里さん……だよね?

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cool

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