第30話 駄々っ子GODDESS
「……住みます」
「……ん?」
……あれ? 僕なんか間違ったこと言った?
イヤイヤと顔を振っていた江里さんはその動きをパタリと止めて、僕の発言の意図を探るようにキリッとした凛々しい表情を湛えて首を傾げていた。
かわい過ぎて忘れかけていたけど、やっぱり江里さんは美人だった。表情ひとつで美人になったりかわいくなったりする江里さんには、女優さんが向いている気がする。……コミュ障だし嘘がつけないからやっぱり無理かもしれないけど。
「……帰ります」
「……やだぁーっ!」
僕の一言にクールビューティー江里さんは一瞬で崩壊し、代わりに、駄々っ子GODDESSが降臨した。
僕の手を両手で掴んで横にブンブンと振る江里さん。イヤイヤと左右に振る顔と動きがシンクロしてて、かわいさよりもなんだかちょっと面白かった。
さて、真面目に考えよう。
江里さんに帰ってはダメと言われたので、ここを永住地とする! と覚悟を決めたのに、何故だかそれに首を傾げられてしまった。
なので確認のためにもう一回「帰ります」と言ったら、やっぱりダメだと言われてしまった。……別に駄々っ子江里さんが見たくてもう一回言った訳じゃないからね?
僕に与えられた選択肢は、
①帰る×
②永住×
③選択肢が思い浮かばない……だと……?
何も残っていなかった。
なので素直に江里さんに聞いてみることにした。コミュ障じゃなければ始めからこうしていたんだろうなと考えたら、少し悲しくなった。
「どうすれば?」(江里さん、僕はどうすればいいんですか?)
「……おかず」
……おかずぅーっ!?
おかずってなに!?
どういうことですか江里さん!?
「おかず……」(おかずってどういうことですか!?)
「……おかず」
おかしいな。僕らおかずしか言ってないぞ?
「帰るのは……」(すみません。帰るのはダメなんですよね?)
「だっ……めっ!」(指で×を作りながら)
「永住は……」(ならここの道端に住むのは?)
「……ん?」(首を傾げながら)
「おかずは……」(意味が解らないんですけど、おかずはいいんですか?)
「……んっ♪」(ニコニコして頷き、右手でOKマークを作りながら)
わけわかめぇぇぇぇぇぇぇぇ!? ホントどういうこと!? 誰か僕に答えを教えて下さい!
「きてっ?」
「は……はい!」
僕が内心で叫んでいたら、答えの代わりに江里さんから手を引っ張られた。僕を帰らせないためなのか、江里さんは両手で僕の手を前後から挟み撃ちするように恋人繋ぎで掴んでいる。……何が言いたいかというと両手で掴むためにこっちに接近してきてて、常に肩が接触してるんです!! ゼロ距離に江里さんがいるんです!?
――僕は横にいる江里さんを見ることもできずに、歩みを進めていくのだった……。
~レビューへのお礼~
うわぁぁぁぁぁぁ!(椅子から転げ落ちる)
な、ななななんとこの作品についにレビューが!
ひー@緋月様ありがとうございます!(土下座)
いつも感想もくださって、その上レビューも!
「……ひーくん……あの、えーっと……その……ありがとう…… ……」(……んっ♪ ちゃんとお礼言えました!)
これからも頑張っていきます!
~解説~
両手の恋人繋ぎというのが分かりにくいかと思うので解説。
相田くんは左手を江里さんと繋いでいます。
なので
進行方向前↑
江里さんの左手
相田くんの左手
江里さんの右手
といった感じです。すみません分かりにくくて。
さて、江里さんは相田くんをどこに連れていくつもりなのでしょうか?