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第3話 いざ尋常に勝負!

 ……今回のフリーズは短かった。


 先んずれば人を制す。


 僕が先にもう一度挨拶をしてしまえばいいと気付いたからだ。

 別に勝負事ではないけど、先手必勝精神でいこう。「おはよう」と先に言った者勝ちだ。


 いざ尋常に勝負!


「お、おはよう……ございます」

「お、おはよう……」


 ――ま、負けた!! 江里さんの方が早かった! しかも僕よりも丁寧な挨拶だと!?


 結果は僕の完敗だった。

 言い始めも僅かに江里さんのが早かった上に、挨拶も僕より洗練されていた。

 気分的には完敗と言うよりかは惨敗に近いものだった。


 ……まぁいいや。勝負事じゃないし。


 なんて心中で自己弁護を展開しながら席順が書かれている黒板を眺めた。

 窓際の先頭から1、2、3と続き、廊下側の最後尾が38番となっている。

 人数の関係から席順は少し変則的で、7と14番の席だけが前から7列目に存在していた。

 僕みたいなコミュ障からすると、このクラスで最高の席は窓際7番で、次いで隣の14番だと思う。


 そして僕――相田(そうだ)君孝(きみたか)の出席番号は14番。

 何たる幸運。何たる巡り合わせ。

 コミュ障の僕に神様が救いを与えてくれたのかもしれない、なんて考えながら歩みを自席に向けて一旦停止。

 右を見て、左を見て、もう一度席順を確認してから、現実へと向き直る。


 ……おかしいな。どう見ても江里さんが座っている席が7番にしか見えない。


 往生際が悪い僕は瞬きを何度もして、目を幾度となく擦って、これは夢だ! と自分に言い聞かせながら再度現実を直視した。


 ――すると江里さんとバッチリ目が合ってしまった。


 考えてみれば当然のことだった。

 僕が不審な行動をとっているのが気になったんだと思う。僕が江里さんの立場だったとしても同じことをするはずだ。


 やっぱり江里さんは美人だな~、なんて呑気なことを考えている場合ではなかった。

 見つめあった目線を逸らすこともできないコミュ障の僕らは、今日何度目になるか分からない完全停止を行っていた……。

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