第10話 スポーツテスト
今日も今日とて早朝に学校へと辿り着く僕。
小学生から続く無遅刻記録は今日も無事継続された……悲しいことにコミュ障だからなんだけどね。
「おはようござ……あれ?」
引き戸を開けていつもの挨拶を口にしようとしたが、首を傾げて辺りを見回してしまった。
言うまでもなく、江里さんの姿がないからだ。
いつも僕より早く学校に来ていた江里さん。
もしかして遅刻だろうか? それとも体調不良だろうか?
そんなことを考えながら席に着き、窓の外の初夏を思わせる澄み渡った空を見上げながらボンヤリと思考する。
思い返せば新学期初日からふと始まったこのやりとりは既に2週間以上も続いていた。
振り返れば長かったようで短い、濃密で新発見の連続だった。
繰り返される挨拶は僕の中ではいつの間にか当たり前になっていたようだ。
……つまり何が言いたいかと言うと、江里さんと挨拶ができないことに寂しさを感じてい……、
「おはようございます相田くん」
突如引き戸が開き、そこには普段とは違った江里さんが立っていた。
長い黒髪を結って髪型がポニーテールになっただけだというのに、江里さんの小顔が最大限に強調されていていつも以上に絵になっていた。
服装は制服ではなく長袖長ズボンの体操着姿。普通ならばダサい格好なのかもしれないけど、殊に今の髪型とマッチしていて良いイメージしか感じない……そもそも江里さんな時点で何をやっても好印象なんだけど。
あれ? そもそもなんで体操着を着てるんだ?
「おはようございます江里さん」
一先ず挨拶をしてから尋ねるべきかと思案する。
もしかして登校中に制服が汚れたとか? けど今日は晴天だしなぁ……。
「相田くんは……まだ着替えないんですか?」
「はい?」
どういうことだ? 今日は別に1限目は体育じゃないけど?
僕の返事に不思議そうに首を傾げた江里さんが口を開いた。
「スポーツテスト……今日」
……完全に忘れてた。そういえば今日はスポーツテストだったんだっけ。
普通なら友達との会話とかで気付くんだろうけど、コミュ障は周りの話題に疎い。休み時間は机に突っ伏して寝ているから……悲しくなんてないやい!
ちなみに江里さんは必ず読書をしている。これは僕とは別パターンのコミュニケーション拒否方法だったりする。
……さて、どうしようか。
僕はある事態に頭を抱えた。
お昼ごはんが…………ない!