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力を使わずに王国を生き延びる 1

 意識が戻ったのはすぐだったと思う。


 気がつくとそこは日本とは全く違う造りの部屋の中にいた。


 どこかと言われると……ヨーロッパ辺りの造りだと思う。

 そして、その部屋の床には……クラスメイトが倒れて

 いた。

 もちろん友達3人とイケメン野郎もいて、すでに目を覚ましているようだ。



 あっ!! そういえばイケメン野郎のこと完全に放置してたな……ま、いっか。


 というかあいつの名前ってなんだっけ?


 そろそろ名前を覚える癖をつけなきゃダメだ。

 担任の名前も知らんし、あの3人の名前しか知らない気がする。



 閑話休題。


 改めて周りを見る。


 隣には莉子がポカンとして目を丸めていて、その隣にも変な格好をした2人がいる。


 俺も服装は数分前と変わらない。

 変わってあるのは場所と持ち物も少しだけ変わっていた。

 さっき買ったネックレスはあったが、ポケットに入ってた携帯はなかった。


 もしかしたら通話などの手段を奪われている可能性が高い。



「莉子」


「え!ここどこ!?」

 やっと思考が追いついたのか、大きな声を出す。


「落ち着いてくれ、ここはわからん。気づいたらここにいた。」

 そして


「そこの変質者2人」


 ビクッと肩を震わせゆっくりとこちらを見る。


「やっぱりお前達か………というかお前莉子にぶつかってこなかったか? 度々聞こえてた気持ち悪い奇声もお前達か」


「いや〜そんなわけないじゃん! 俺たちはただ2人で遊んでただけだぞ? なぁ零!」


「そうよ! 当たり前じゃない!」


 頑張って言い訳しているように見えるがはっきり言ってバレバレだ。


「そんなことよりこの状況だ」


「ん、あぁそのことについてだけどーーーー」


 その先から言われたことは馬鹿げていた


 クラス全員を拉致してどっかに運んだってのが一番有力候補だったけど、さすがに難しい。


 全員を拉致するのに何日間もかかると警戒されて家に引きこもったりされて拉致するのが難しくなり、ほぼ同時に全員を拉致しなければいけないことになる。


 しかもほぼ同時だとしても、人の多いところにいた人もいれば家にいた人もいる。


 完全に見つからずに意識を奪い拉致することなんて不可能に近いだろう。

 よって集団拉致はなし。


 そしてもう一つの可能性は悠馬が話したーーー異世界転移である。


 悠馬がここに来る前に足元に現れた魔法陣らしきものを見たらしい。

 悠馬は怖い見た目によらず、結構ラノベやら小説やらを読み更けていたのでこういうことにはかなり詳しいようだった。

 俺も悠馬からオススメされて何回か読んだことがあるので理解はできる。


 けどそれが自分の身に起きるなんてな。


 けど俺は自分の力・・・のこともあるし、十分納得がいく。


 悠馬の言うことが正しければもう少ししたら人が来るらしい。


 その時を待とう。


「そういえば莉子。ここに来る前なんか言いそびれなかったか?」


「い、いや! そんなことないよ!」


(うぅ……せっかく勇気出したのに………)


 しばらく4人で状況を整理していると唯一の出入り口であるドアから5人ほど入ってきた。


 1人は女性。高そうな服に身を包み、黄金に輝く背中まで伸びた髪、恐ろしく整った容姿。きっとこの国の王女様だろう。


 たが、莉子には敵わないと秋は思う。


 俺には莉子のほうが可愛く見えたので周りの見惚れいる男達とは違い、他の4人に目を向けた。


 一言でいえば騎士だろう。


 顔は隠していないが、純白の鎧に腰にある剣。

 どう見ても騎士だ。


 俺が5人を観察していると女性が口を開いた。


「ようこそ勇者様。私はレイリー・アーカディス。この国の第一王女でございます。」


 と挨拶する。


 その妖艶な姿には数人を除いた全員が惚れているに違いない。


 やっぱり悠馬の言う通り、さっそく王女様のご登場ときたか


 ここで1人のクラスメイトが……


「ここどこよ!! 早く家に返しなさい!」


「そうだ!! 」


「これは拉致じゃないのか?」


 と騒ぎ出す。


「みんなやめんだ! 困っているじゃないか!」


 とイケメン野郎がこの場をまとめ始める。


「ありがとうございます勇者様。この自体の説明は私の父、国王様がご説明されます。もうしばらくお待ちを」


「こちらこそすみません。もう迷惑をかけるようなことはしませんので安心してください」


 ニコッ


 王女様はイケメン野郎を見て顔を赤くする。


 ま、王女様の恋愛はどうでもいいとして。


 ここまで悠馬の言う通りだと少し怖いな。


 悠馬を見ると予想通りすぎて苦笑いしてる。


 4人で状況の整理をしていて本当に良かった。


 俺だけだったらこの状況にとり残られていたかもしれない。


「では、勇者様方。これから謁見の間までご案内します」


 と言って全員が立ち上がり、王女様についていく。


 謁見の間までの道のりはそこまで遠くはなかったがそれまでの道がとにかく物凄い。


 今にでも動き出しそうな銅像や高そうな絵などがあり、どっかの美術館かなんかだと思ってしまった。


 暫く歩いていると王女様が大きな扉の前で止まった。


 いろんな物に目移りしている間に謁見の間に着いたようだ。


 ドアのそばに立っていた兵士2人に開けてもらい、クラス全員が謁見の間に入る。




 王様の前に止まるとクラス全員が膝をつく。


 これは謁見の間に行く前に王女様に言われたからだ。


「よく来た勇者殿。このアーカディス王国、国王ブロスタム・アーカディスが歓迎しよう。表を上げて良いぞ。」


「ありがとうございます!」


 代表してイケメン野郎が言った。


 顔を上げると、とても厳格そうな40代くらいのおっさんがいて、その横には王妃らしき人物と太った大臣らしき人がいる。


「ではお前らがこの世界に呼ばれた理由を説明しよう。

 このハルバート大陸には元から人善神ディーオ人悪神テオスと呼ばれる善神と悪神から神の力を持った者がおる。それぞれ6人ずつ存在して、善神は我ら人族の味方で悪神は我らと敵対している魔族の味方をしている。そして一週間前、その忌わしき人悪神共が魔王となってこの大陸を征服することが判明したのでお前達を召喚することに決まったわけだ。」


 これは嫌な予感がする。



「なるほど、その魔王となる悪神の力を持つ人悪神テオスを僕達に倒して欲しいということですね?」


「その通りだ。理解が早くて助かる」


 さすがにいきなり悪神を倒せって言われても困る。

 秋たちは戦いなんて皆無の所から来た上に、そもそもこの国や他の大陸のために戦えなんて自分勝手すぎる。

 うん、俺は平和に暮らしたい。


 この異世界でゆっくりしながら旅をするのもいいかもしれないな。


 時が来たら自分の世界に帰ればいい。


「やってくれるか?」


 だが、こいつは例外だった


「もちろん!! 僕達・・はこの世界のために戦います!」


 勝手に俺たちの意見をまとめてるんじゃねーよ。


 事前に話し合っていた3人は秋と同じ事を考えていたのか苦笑いを浮かべている。


 近くにいた王女様は


「あぁ、勇者様……」


 と言いながら金髪野郎を見ている。


 これはかなり悪い方向に進んだかもしれない。


 金髪野郎が言ったことによって、クラスの大部分の人が金髪野郎の意見に賛成してる。


 ここで『僕は怖いので戦いたくありません』なんて言える鋼のメンタルを持ったやつはそうそういないだろう。


 あと悠馬にも聞いたが、この国王が良き王かどうかなんてわからない。


 ここで反抗すると殺されるかもしれないし、よくて王城からの追放だと悠馬は言っていた。


 俺の読んでいた小説も王城から追放されてたような気がする。


 小説のの国王は優しい人だったが、この国王は腹黒いかもしれない、気をつけよう。



「おぉ! そうか! 頼むぞ!! 今日の所は疲れているだろう、スキルの確認をしてゆっくり休むといい」


 やっぱりスキルやら魔法やらが存在するのか。


 今の言葉にクラスの大半は目をキラキラさせている。

 そりゃそうだ。


 夢にまで見た魔法が使えるとなったら誰もが興奮するだろう。


 けど、まだ国王は1番大事な事を話していない。


「1ついいですか?」


 本当は悠馬が言うって事になってたけど、悠馬は以外とチキンで発言する気配がなかったので俺が言う事にした。


「なんだ、言ってみろ」


「はい。 単刀直入に言いますと、僕達は元の世界に帰る方法はあるのでしょうか?」


「ある。悪神アンラの人悪神テオスが住んでいる城に帰還する方法が残されている」


「なるほど、わかりました。ありがとうございます」


 あまり信用できないな。


 もし、あったとしてもそれが簡単に帰れるものかはわからない。


 人の命を1万人ほど犠牲にするかもしれない。

 もしかしたら自分たちの命を削らなきゃいけないかもしれない。


 そう考えると勇者召喚はどんな方法でやったんだ?


 まぁそれについては後々調べて、スキルの確認だな。






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