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力を使わずに日常を過ごす 2

 私達は今時計台の陰に変装して潜んでいる。


「(うおっ! あいつ今可愛いって言ったぞ!)」


「(きゃぁああ! 莉子ったらあんなに顔真っ赤にして!)」



 二人とも帽子とグラサンをかけて如何にも怪しい人だけどあの二人には気付かれる心配はないはず。


「(いや〜今日は楽しめそうだな!)」


「(そうね。こんなに楽しいのはいつぶりかしら)」


 私達はニヤニヤしながら言った。


 若干周りの人は気持ち悪くて離れていくが、二人は全く気づいている気配はない。



 こうして私達は秋と莉子の背中を追いかけていく。


 ★


 秋たちは喫茶店に少し寄ってから映画館に来た。


 日曜だけあってかなり混んでいてカウンターの前にはかなりの人が並んでいた。


 何を見るかは莉子に決めてもらおうと決めていたので並んでいるうちに決めておくとしよう。


「映画何見たい?」


「私が決めて良いの?」


「俺のみたいやつだと、植物大発見とか木の種類ってやつになっちゃうし」


「今の映画ってそういうのあるんだね……」


「俺もさすがにびっくりした」


 植物大発見とか2時間もあるし、俺以外見る人いないんじゃないのか?


 俺ならともかく普通の人がただの植物を見るだけの映画が誰も見るわけがない。


 自分の異常さは自分が一番わかっているつもりだ。


「それじゃあ……恋愛映画ってある?」


「んーっと、お! 1個だけやってるな。それにする?」


「うん! それにしよ!」


 順番が来るまでいろんな話をして、券を買い会場に入る。


「もうそろそろだな」


 この映画はあまり人気がないのか見る人が少なくて30人ぐらいしか会場にいない。


 少し話をしているとついに映画が始まった。


 映画の途中で一番後ろの席から『キスしろ!』とか『手繋いぎなさい!』とか言ってくるうるさい奴らがいた。


 聞いたことあるような声だったのは気の所為だろう。

 静かに見たいのにいい迷惑だ。


 そして映画の内容は思ったより過激だった。

 普通にキスしまくりで少し夜のベッドシーンがあった。

 度々莉子がチラチラとこっちを見てくることが何回もあって、つい莉子と目が合った時はとても気まずかった。


 そんな気まずくなった映画もあっさり終わり、秋たちはお洒落な店で昼ご飯を食べていた。


「お! これ美味いな」


「それ美味しそうだね……」


 莉子がジッと俺が食べているステーキを見ている

 そんな目で見なくても言えばあげるのにな。


「少しいる?」


「え?いいの?」


「もちろん。ほいこれ」


 ステーキを食べやすいように切って、使っていたフォークに刺して渡す。


(こ、これって……)


 莉子の顔が真っ赤になる。


 ん?もしかしてあーんするのが嫌だったのか?


 さすがに子供じゃないんだしな。


「あぁごめんごめん。自分で食うよな」


 と言って、フォークを乗せる皿を取ろうとするが……


「だ、大丈夫!」



「ん?そうか?んじゃはい」


「あーん」


 ぱくっ


「うぉおおおおおおおお」

「きゃああああああああ」


 と言う声が聞こえてくる。


 さっきからうるさいやつがいるな。


 またどっかで聞いたことあるような………ま、いっか。



(や、ややややっちゃったぁあああ! )


 莉子の顔が真っ赤になる。


 そんな恥ずかしかったならやめとけばよかったのにな。



 なんだかんだで昼ご飯を食べ終えて、次の目的地に行く。


 次は駅とつながっているデパートだ。


 また零からのアドバイスで『買い物に付き合ってあげなさい!』とか言われたのでなんでも売っているデパートにした。


 ここも、ものすごい混んでいる。人混みには慣れていないので少々辛い。


 さっそく服屋に行こうとするが途中で……


「きゃっ!」


「っと大丈夫か?」


 なんか怪しいグラサンと帽子をかぶったガタイのいい男が莉子にぶつかって、俺の方に倒れてきたので莉子が転ばないように受け止める。


 (あの男どっかで見たことがあるような………もういいや)


(あわあわあわあわどどどどうしよう! こんなに近くに!! いい匂い…… )



 こんなハプニングもあったが服屋に着いてさっそく服を見て回る。



 やっぱり目立つ。

 今日ずっと思っていたけど、本当に莉子が可愛いすぎて注目を受けているのだと思う。


 自然と莉子を密かに見ている男性の店員がいるぐらいだ。


 女性の店員は俺に『可愛い彼女さんですね』と何回も言ってくる。彼女ではないのだけど説明するのが面倒なので『あはは、本当ですね』と答えるしかない。


莉子には俺なんかが彼氏に見られて申し訳ない。あとで謝っておこう。



 そんな天使莉子は服をいろいろ試着していて、今は結構大人っぽい服を試着している最中だ。


 男性の店員さんが5人も興奮しながら見ていてかなり気持ち悪い。


 そんな莉子の服は全部似合いすぎて怖い。


 毎回褒めるたびに顔を真っ赤にするので少し反応が楽しくなってきたところで次は秋の番になる。


 男物の服も売っていたので、莉子に選んでもらい試着する。


 いつのまにか女の店員さんが3人もついてきている。


 きっと暇なんだろう。


「「「おぉお〜〜」」」


 店員が驚きの声をあげる。


 そして莉子も


「か、かっこいいよ! 」

 と言った。


「ん〜そんなもんなのか」


 正直、服はかっこいいと思う。けど俺はジャージとかでいいと思ってしまう。


 (これをセンスがないっていうんだろうな)


 莉子は特によかった服を3着買い、俺は1着買って服の買い物は無事終了した。


 今は午後の3時。


 服を買うのに結構時間がかかってしまった。

 けどこれからは特に予定はないのでぶらりぶらりとデパートの中を見て回る。


「あ、ちょっとトイレいってくるわ」


「わかった。ここで待ってるね」


 危ない危ない。結構我慢してたからいいタイミングでトイレがあったな。


 トイレを済ませて、莉子の待つところに向かう。

 すると……


「ねぇ君、これから俺と遊ばないかい?」


「俺たちと遊ぶのは楽しいぜ?」


「可愛がってやるよ!ギャハハッ!!」


 なんとチャラい3人組が莉子をナンパしていた。


 このシチュエーションはさっき見た映画にもあった気がする。


 莉子も苦笑いを浮かべているのでさっきの映画を思い出したのだろう。


 (何はともあれ、救出しますか)


「あ〜ちょっといい?その子俺の連れだからーー「あぁん?ギャハハ!こんな弱っちい奴が彼氏かよ!!ギャハハ!!」 ……」


 (はぁ……こいつらは話の通じないタイプだな

 ここは……)


「よし!逃げるぞ!」


 こいつらは逃げるのが一番いいと思う。


「え?あ、うん」


 と言い莉子の手を引っ張り走る。

 デパートの中なのに走るのはマナー違反だけどこの際仕様がない。


 人混みに紛れてしまえばこっちもんなのである程度走ったら止まる。


「すまん。足大丈夫か?」


「う、うん。大丈夫だよ」


 莉子は少し走りにくい靴だったので捻ったりしていないか心配だったけど大丈夫そうだ。


 ん?なぜか莉子の顔は真っ赤だ


「あ、ごめん」


 手をしばらく握ったままだった

 急いで手を離す。


「だ、大丈夫だよ!」


「またあいつらが来るかもしれないからこのデパート出ようか」


「う、うん」


 出口に向かおうとすると出口の近くの店にネックレスが売っていた。


 莉子を見てみると店ををずっと見ていたのでなにか買いたいものがあるのだと思う。



 莉子と店へ行き、ネックレスを見る。


 いくつもあるうちに2つだけなぜか惹かれるものがあった。


 偶然莉子もそのネックレスが気になるらしくてずっと見ていた。


 ここは男として……


「買ってあげるか?」


「ふぇっ!? い、いいの?」


「よくなきゃ言わないって」


 趣味が少ないから実際金にはかなり余裕がある。


 何に使おうか迷うぐらいだ。


「じゃあお言葉に甘えて……」


(えへへっ、やっぱり優しいなぁ)


 ネックレスを店員さんにとってもらい会計すると、莉子に渡した。


「ほい」


「ありがとう……はい、これ」


「ん?なに?」


「会計してる時に店員さんに言って、こっそり買ったの。これで、おそろいだね……なんて、えへへ」


 と言い少し赤くなって満面の笑みを浮かべる。


 ぐはっ!! さすがに今のはやばかった……なんと言う破壊力!



「お、俺なんかでいいのか?」


 正直、もっと似合う人がいいと思う


「うん!! 当然だよ!」


 と言って渡してくる。


 うん、嬉しい。


 袋から出てきたから出てきた莉子と色違いのネックレスを出して首につける。


 そこまでかわいいネックレスでもない、元々おそろいで買う用の物だと思う。


「あ、あの………」


 莉子が下を向きながら言った、


「ん?なに?」


「ね、ねっくれしゅ!!つつつつ、つけてぇ!!!」


 ものすごい噛んだけど、ネックレスつけて欲しいのかな?


「あぁそんぐらいならいいよ」


 莉子の正面から首に手を回し、ネックレスをかける。

 最初は全く気にしていなかったが、結構顔が近い。


(………………)



「うぉおおおおおおお」

「きゃあああああああ」


 と言う声が聞こえる。


 やっぱり今日は変な奴が近くにいるな……しかし


 うわぁ本当のなんか恋人みたいだなぁ


 ようやく付け終わり、離れる。


 莉子からプシューッと音が聞こえる。


「似合ってるな。よし、行こうか」


「…………」


莉子は言葉を発しないで頷くだけだった。



 そう言って公園に向う。


 ★


 少し離れた散歩した後にベンチに座って休憩していた。

 すでに太陽は沈みかかっていていた。


「今日は楽しかったね」


「初めてこんなに遊んだよ」


 なんか忘れているような気がするけど今は気にしない。

 最初で最後だろうけどこんな美少女と遊べる日が来るなんてなぁ。


「また遊ぼうね!」


「俺は暇だからいつでも誘ってくれよ」


「うん!」


(今日で多少のことはあってもまともに話せるようになってよかったぁ。

 しかも、また遊んでくれるって!! アドバイスしてくれた零ちゃんに感謝しないと!)


「そろそろ夜になるから帰ろうか」


「そうだね……」


 莉子がしょんぼりする。


「送ってったほうがいい?」


 これも零から受けたアドバイスのうちの一つ。

『なるべく送って行きなさい!』だ。


 細かい理由は知らん。


「大丈夫! 一人で帰れるよ! 」


「わかった。気をつけて帰れよ。じゃあな!」


 と言って、俺は自分の家の方向に向かう。


「秋君!!!」



「うぉ!! な、なんだ?」


 かなり大きい声だったので少しびっくりしてしまった。



「え、えーっと、秋君……私は!! あ、秋君のこーーーーえ?」


「なっ!?」


 莉子が最後まで言葉を言う前に足元が光る。


 そして、二人はその場に倒れて意識を失った。


次でようやく異世界に行きます。


誤字や日本語がおかしいところなどありましたら教えてくれると有難いです。


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