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神の力を使って森を生き抜く 1

「き、消えた?」


 と悠馬が呟く。


 周りの人は今の一瞬の出来事に唖然としている。


「ふっふっふ、あんな死に損ないは邪魔だったのでね。“あの森”に向かって転移魔法を使わせててもらいましたよ」


 闘技場の入り口から聞いたことのない声が聞こえた。


「誰だ!!!」


 と騎士団長が大きな声を上げる。


「私は魔王様となられる方の配下、ディルトと申します。以後お見知り置きを」


 と言って礼をする。


 全身黒い服を着ており、顔はローブで隠れていてあまり見えない。



「なぜここにいる? 」


「答える義務はありませんね」


「そうか。なら!」


 ザベスがディルトに向かい走る。


 そのスピードは拓人が身体強化魔法を使った時と同じぐらいだろう。


 伊達に騎士団長をやってるわけではないということだ。


「甘いですねぇ」


 と言って簡単に避ける。


 だが、その先には……


「はっ!」


 拓人がいた。


 完全に油断していたディルトは拓人の剣が少し擦る。


 服が少し破れて、肌が見える。


 見た感じ人間の肌と変わらない。



「ほう。なかなかやりますね。しかし……この人数では少し部が悪いですねぇ。ここは一旦引きましょう」


「させるか!」


 ザベスは再度、ディルトに向かい剣を振るう。


 が、ディルトはザベスの剣を容易に避ける。


「ではまた会いましょう」


 と言い残して、闘技場の天井を壊し外へ飛んで行った。



「なんだったんだあいつ………」



「………そんなとこより秋君は?」


 と、今にでも泣き崩れそうな莉子が騎士団長へ向けて言った。


「あいつは『あの森に向かって転移魔法を使った』と言っていた。この世界で“あの森”と言うのは一つしかない」


「その場所はーーーーー」


 その場所と説明を聞いた時には莉子の頭は真っ白になってその場に倒れこんでしまった。



 ★


「まじかぁ」


 気付いたら森の中に俺はいた。


 まさか予想してたとはいえ、こんなに早く実行されるとは思ってもいなかった。


 誰でも少し考えれば大臣が考えそうなこともわかる。

 どうせ勇者達に俺が死ぬところを見してしまっては“死”に恐怖して、魔王と戦わなくなるとか思って俺を転移させたのだろう。


 念のためにできることは昨日までにしておいたので

 あまり心残りはない。


 唯一の心配事はあの3人だ。

 特に莉子。

 ここ1年間ほど行動を共にしてきた友達がいなくなったとなれば、莉子は泣いてしまうかもしれない。


 さすがにあそこまでの美少女に泣かれていると考えると困る。


 でも、これで泣いてなかったらどうしよう。

 いやそんなひどい子ではないはず。

 うん、そう信じよう。


 悠馬と零は俺の残したものを見れば大丈夫だ。


 けどはっきり言って他人のことを心配する余裕はなさそうだ。


 今現在俺は森の中にいる。


 この森のことは何も知らない状況だ。


 もしかしたらここは、魔王城の庭かもしれないし、世界最強のバケモノみたいな強さの魔物とかいるかもしれな…………


「グルルゥ」


 いました

 体長は3メートルほど、狼だ。

 少なくとも上級以上であることは間違いないだろう。


 普通に戦っては・・・・・・勝てない。

 はっきりそうわかる。


 現にこいつは格下だと思って完全に油断している。

まさかこの油断が自分の死につながるなんてことは思ってないだろう。



 狼の魔物と俺の距離は10メートルほどだ。

 一瞬でケリをつけたいのならばもうついているはずだ。


 けどこいつは油断していて、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


 やっぱり魔物は知能が低い。


 ここまで近づいて俺が余裕そうに振舞っているのに全く警戒しようともしない。


「やれ」


 と俺が短い言葉を言ったと同時に、狼の魔物に直径90センチほどの木が一瞬で倒れる。


 俺でもほとんど見えなかった。


 完全に油断していた狼の魔物はそれに反応できずに、木の下敷きになっている。

 何が起こった? という驚きの表情がわかるため非常に面白い。


 だがこのまま終わる狼の魔物ではなく、木をどけようとするが、衝撃により骨が何本も折れているようでなかなか立ち上がるのが遅い。


 そんなことをさせるわけもなく、俺がさらに攻撃を仕掛ける。


 最初に倒れた木と同じぐらいの木が一気に2本も狼の魔物に向かって倒れる。


「キュン!」


 まだ最初の木から向け出せていなかった狼の魔物は可愛い声を上げる。


 その瞬間。


 俺の中に大きな力が入ってきた。


「あ、ミスった」


 と言葉を残して俺の意識が途絶えた。


 ★


「う、うぅ」


 頭が少し痛いだけで、頭に手を当ててみたけど、血は出ていなかった。

 倒れた時に少し頭をぶつけたのかもしれない。


 ……結局どうなったんだっけ?


 え〜と、俺の力を使って……木で魔物を倒したんだよな


 そしたら……気を失ったわけか。


 これは完全に俺のミスだ。

 ちゃんと能力の実験をしてからにするべきだった。


 狼の魔物が動けなくなった時点で、逃げるのが正解だったか。


 もちろんこの症状は経験値を得た時によるものだ。


 俺は自分の力を使って魔物を倒した。


 俺の力……それは元の世界にいる時に何故か得てしまった力だ。


 一言で言うとーーーー俺は植物を自由自在にできる能力だ。


 力の名前とかは知らないけど、【植物の王アムルタート】という名前にした。


 このアホみたいな名前の由来は後にして、主な能力はこれらだ。




 一つ、植物を操ることができる。

 二つ、一度触った植物を生み出せたり、自分にしまうことができる。

 三つ、植物の変形、または合成。

 四つ、植物の情報が見ただけでわかる。

 五つ、植物とある程度意思疎通が可能。


 このぐらいだと思う。


 一つ目は、言葉の通りに植物を操ることができる。

 さっきの狼もこの能力で倒した。

 俺の思った通りに植物が動いてくれるとても便利な能力だ。

 植物自体も俺に尽くしてくれて、危険を察知したら勝手に攻撃から守ってくれる。


 前の世界では森で寝ている時に熊によって襲われそうになったことがあったけど、その時は勝手に倒してくれた。


 とても便利な能力だ。



 二つ目は、一度触った植物を生み出せる能力と、植物のみの収納ってやつだ。


 前の世界で、触ったことのある植物ならなんでも生み出すことが可能だ。


 食べ物に関しては日本にあった野菜類をほぼ全て生み出すことが確認済みなので、問題ないと思う。


 スーパーに行っては珍しい野菜を買って、触りまくってたことがあったな……


 それは兎も角、生み出すと言っても草の部分だけではない。もちろん果実や、種など植物の一部のものならなんでも生み出せる。


 なので、イチゴやジャガイモだけを生み出すことが可能ってことだ。



 そして、植物のみの収納。

 この能力は自分の身体に植物を入れたり、出したりできる。


 ここで自分の身体に入ってきた植物は異空間とかに収納されるのではなく、本当に俺の中に入っているという感じがしてなんとも不思議な感覚がする。


 そのおかげで、自分にどれだけの植物が収納されているか瞬時にわかる。



 三つ目、植物の変形や合成だ。


 植物の変形は、植物の形をできる範囲で変えることができる。


 前の世界では、普通の木を木刀に凝縮するように変えたり、ジャガイモを犬の形に変形したことがあった。


 俺は剣術を始めるきっかけになったのはこの能力で簡単に木刀が手に入ったからである。


 そして、合成。

 簡単に言えば品種改良みたいなものだ。


 相性というものがあるが、それさえあれば何個でも合成することができる。


 例えば、ジャガイモと人参は相性がいい。

 何故かというとどちらも土に埋まっているという共通点があるからだ。


 共通点があると相性が良くなり、合成した時にとてもよくできる。


 この場合はジャガイモと人参が合わさった謎の食べ物ができる。


 まぁ相性は俺が合成してみようとした時にわかるからそこまで考える必要もない。



 四つ目、植物の情報が見ただけでわかるというものだ。植物鑑定と言ってもいいだろう。


 これは昨日俺が薬草だってすぐわかった理由だ。

 前の世界では直接頭の中に情報が入ってきたけど、こちらの世界では


 ーーーーーーーーーーーーー

【薬草(低級)】


 適温 −15度〜50度

 世界のどこにでも生えている草。

 比較的魔素が多い場所に生えている。


 効果


 食べる→傷が少し回復

 塗る→傷が少し回復


 薬草は回復ポーションに使われることが多い。


 以下略


 ーーーーーーーーーーーーー


 こんな感じで視界に映るようになった。


 略さなければ目がチカチカするような大量の文がある。

 邪魔だなぁと思ったら必要な部分だけになったから問題はなくなった。


 ちなみに植物には低級〜高級が存在する。

 上になればなるほど味が美味しくなったり、効果が発揮されやすくなる。


 《適温》はその植物が生きてられる気温だ。



 最後は、植物と意思疎通が可能というものだ。


 植物にも知能がある。

 その植物によって頭の良さは違うが、生きている年数が比例していると思う。


 前の世界の時にかなり古い木があるところに行ったことがあった。


 その時の木は俺と普通に会話することができたのだ。


 その時に、『なんとっ! 我が神、アムルタート様ではありませんか!』とか意味不明なことを言ったため、【植物の王アムルタート】という名前にした。


 アムルタートという名前は元の世界で、とある神話に出てくる7人の神の内の1人だ。

 他の6人はこの世界にいる善神で、なぜか俺だけ違う世界にいたみたいだ。


 【植物の神アムルタート】でもいいのだが、そこまで大それた能力ではないと思うし、自分で神と名乗るなんて恥ずかしいので植物の王だ。



 ちなみに、そこら辺に生えている草は全く意思疎通ができない。


 木は俺の言葉は通じるけど、木からの言葉はわからない。


 だから木を揺らして答えてもらうことが多い。




 俺の能力に関してはこのぐらいだ。


植物の王アムルタート】を使えば、さっきの狼みたく勇者と同じ立場で戦えるのでは?


 と思うかもしれない。


 確かに木をいっぱい生み出して操れば、ある程度戦うことは可能だったかもしれない。


 だが、この森に来るまで俺が生み出せたのは前の世界での木か、一回だけ魔物狩りに行った時のしょぼい木だ。


 俺がさっきの操った木とは全くの別物だ。


 狼の魔物を倒す事ができたのはここにあった木が


 ーーーーーーーーーーーー

【魔木(高級)】


 魔素が多く集まるところにしかない。


 魔素を取り込んで成長することによって、普通の木とは考えられないほどの強度を持つ。



 ーーーーーーーーーーーー


 このような異世界でしかあり得ない木だったからだ。


 もしもこの木じゃなくて、普通の木でさっきの事をやっていたら狼に当たった瞬間砕け散ったことだろう。




 この5つの能力は今まで実験を繰り返した結果だ。


 もしかしたら、俺がまだ知らない力がまだあるかもしれない。


 これからそれも調べていくようにしよう。







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