力を使わずに王国を生き延びる 8
相変わらず良いタイトルが思いつきません。
1年以上の付き合いになるが、こんな秋を見るのは初めてだ。
「おい。お前全然食えてないぞ?」
俺と他の3人で晩飯を食っているところだ。
秋は今、心ここに在らずって感じでなにか考え込んでいるようだ。
いや、考えているように見えて物凄くショックを受け、俺たちに心配させないようになんとか誤魔化そうとしている。
たぶんここにいる3人はそれに気が付いているはずだ。伊達に友達やっているわけでもない。
「ん?あぁごめん」
やっぱり表情がかなり暗い。
それもそうだ。
異世界に来て、ダルそうにしながらも一番努力していたのは秋だ。
魔法は使えないからなしとして、訓練を人一倍熱心にやり、訓練が終わっても一人で剣術の練習をする。
他のクラスの奴らはこの世界の中でも最上位の存在ってだけで浮かれて最小限の練習しかしない。
俺も人のことはあまり言えないけどな。
そんな秋がクラスの中で一番近接戦闘が苦手な莉子にボコボコにされてしまったのだ。
そりゃ落ち込む。
けど、ここでスキルがある俺たちが同情しても帰って秋を傷つけるだけになるから他の3人もそのようなことはしない。
秋自身が切り抜けるしかないが、友人として最大限できるとこをしよう。
悠馬はそう決意するのであった。
★
夜の10時
王女様から話があるそうなので魔術を習う部屋に集められた。
いつも通り、3人と席に座ると、1人の男が俺たちの所へやってきた。
「やぁ莉子」
「こんばんは。拓人君」
あのイケメンくそ野郎だ。
人生で一番テンションが低い自信がある俺はこいつの顔を見るだけで腹が立つ。
「やぁ誰かと思ったら君か。莉子に負けたんだよね?」
ふぅ……落ち着け。
今はドラ◯エ5のストーリーを思い出そう。
いや〜あれはいい作品だよな。
「それでは、莉子を守る事すらできないね」
やっぱり奥さんはビ◯ンカだ。
子供は金髪が一番似合うと思んだよなぁ
けど、黒髪も捨てがたい!
フ◯ーラもいいと思う!
あの時はかなり悩んだ記憶がある。
「僕なら君を守れるよ。秋君なんて放っておいて一緒に行動を共にしよう」
「…………」
…………確かにこいつと行動を共にしたほうが莉子は強くなれる。
これから俺と組んで対人戦を練習したって差があり過ぎるから手加減をする莉子にとっては練習にならないだろう。
だからここは……
「ごめんなさい。私は秋君を放っておくことなんでできないよ」
なんでそうなる?
「……やっぱり莉子は優しすぎるね」
確かにそうだ。
俺にここまで気を遣ってくれるなんてこいつら3人しかいないだろう。
今はそれに感謝しかない。
「けど、僕ーーー「お待たせしました。皆さん席についてください」 ……また後でね」
いいタイミングで来てくれたよ王女様。
このまま話が続けばかなり面倒になってたに違いない。
「ありがとな」
「ううん。 当然だよ」
もちらん礼を言っておく。
それにしても、俺は異世界に来てから何にもできてない。
なにか戦闘で役立つかもしれないあの力を真面目に考えよう。
異世界なら特に期待ができるだろう。
「では、みなさん。1人1個受け取ってください」
騎士の4人がクラスメイト達に何かを渡していく。
パッと見た限り水晶だな。
俺も最後に並んでそれを受け取ろうとするが……
「すみません。あなたの分はありません」
「ん? 俺の分はない? 」
「はい。それも含めて説明させていただきます。もう気づいている人もいるかと思いますが。これはスキルの水晶です。少しだけ集めるのに時間がかかってしまいました」
なるほど、スキルの水晶か。
それなら俺にだけ無いのも納得できる。
たぶん凄い速度で成長していく勇者達にスキルの水晶でスキルの確認をいつでもできるようにしたいのだろう。
「貴方にも一応渡したかったのですが大臣が必要無いと言われましたので……」
この王女様はかなり優しいらしい。
こんな俺にもある程度気を使ってくれる。
「いや、それが正しい判断だと思うから問題ないよ」
「ありがとうございます。では、皆さんスキルを確認してみてください」
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ユウマ・エチゴ
称号 格闘家
スキル
無属性魔法 1→2
格闘術 2→5
超反応 1
筋肉 1→3
成長 1
魔力操作 0→1
手加減 0→1
(覚醒)
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レイ・ヤマセ
称号 剣豪
スキル
無属性魔法1→2
剣術 3→6
魔法耐性 1
成長 1
魔力操作 0→2
手加減 0→1
(空間魔法)
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リコ・スズキ
称号 聖女
スキル
無属性魔法 1→3
回復魔法 1
魔力操作 1→5
付与魔法 1
成長 1
短剣術 0→2
手加減 0→1
(結界魔法)
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4日目でこの伸び代だ。
流石は勇者召喚されたエリート達と言えるだろう。
“手加減”のスキルはクラス全員が持っていた。
普段から“手加減”スキルが発動していて、戦闘以外の時は元の力で生活を送れる素晴らしいスキルだと王女様が説明していた。
なかなか便利なスキルだな。
俺の場合は自分で力の調節している。
みんなもそうしているとばかり思ってた。
ちなみに俺も悠馬に貸してもらって自分のスキルを見てみた
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アキ・タサカ
称号 植物博士
スキル
剣術 1→3
スキル獲得不可能 10
()
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剣術が3まで上がってる。
成長のスキルを持ってい無いにしてはかなり早いと思う。
けど、零と戦った暁には死んでるいるはずだ。
莉子でさえボコボコにされたのに、剣術6は頭おかしい。
今度から怒らせ無いようにしよう………
★
「本当に大丈夫か?」
「だいぶ落ち着いたから問題ない。俺のメンタルの強さは知ってるだろ?」
今は悠馬の部屋にいる。
俺を心配して話そうと言ってきたのだ。
「まぁそうだな。あの幼女事件の時もよく正気を保ったもんだ」
「おい! その話はやめろ!」
幼女事件。
悠馬と出会って間もない頃に起こった、俺の人生ベスト5に入る黒歴史の一つだ。
それは一年生の春の授業中。
疲れてしまうと授業で話している内容は起きた時に頭の中に入っているが、深く寝てしまい少し悪戯されたぐらいでは起きなくなってしまう。
ということを悠馬に何気なく話してしまったのだ。
それを知った悠馬は体育後の授業中に俺の耳元で永遠と『幼女が大好きだー!!』という謎の音声を耳元で流し続けた。
それを30分近く聞いていた後に、寝ていることに気がついた先生は俺を叩き起こすと……
「幼女が大好きだ!!」
と大声で叫んでしまった。
俺は永遠と音声を聞いていたため、頭の中が幼女が大好きという言葉で一杯になってしまっていたのだ。
当然教室の空気は凍り、静寂が訪れる。
10秒ほどすると、ようやく意識がはっきりして自分の言った内容がどれだけ恐ろしいことかを理解した。
「あはは、冗談ですよ」
時すでに遅し。
1年間そのクラスで俺のあだ名は『幼女』または『ロリコン』となった。
学校に行くと「おはようロリコン」とクラスメイトに言われて、授業中も先生に「次は幼女の番だぞ! 寝るな幼女!」と言われる始末。
莉子に俺のあだ名を聞かれて「秋君ってロリコンなの?」と言われた時には悠馬をぶん殴ると決心したものだ。
自分でもよく普通に学校生活を送れたと思う。
「ま、その様子なら大丈夫だな」
「明日には元に戻ってるから安心しろ」
「………本当に俺たちは何もしなくていいのか?」
悠馬は悔しそうに言った。
俺がスキルを習得できないことが判明したときに3人には、何も心配いらないから何もするなと言ってあった。
クラスメイトに3人がとやかく言っても状況が悪くなるだけかもしれないからだ。
現に俺はクラスメイトの視線など全く気にしていない。
一つだけあげるとイケメン野郎が気持ち悪いぐらいだ。
「しなくていい。お前はアホなんだから何も考えるなよ」
「言うじゃねーか! なんなら明日は俺と模擬戦やるか?」
「莉子に負けてもお前には負けないぞ?」
「その自信どっから来るんだ!」
「……ん? 俺もう眠いから寝ていいか?」
「お前マイペースすぎるだろ……」
悠馬が呆れたように言った。
「それじゃあまた明日な。おやすみ」
「おやすみ」
俺は自分の部屋に戻り、眠りについた。
○おまけ
【秋vs悠馬】
「2人とも準備はいい? それでは………始め!」
「ま、まさか! あそこにいるのは猫耳娘か!?」
「なんだとっ!!!」
「隙あり」
「おっふ」
「ふっ、身体は鍛えられても股間までは鍛えられないか………」
「秋君かっこいい………」
「いやいや、カッコ悪いでしょ」
この先のストーリーを考えているとハーレムになってしまいそうなんですが、皆さんはどうですかね?
なにか意見や感想などありましたら気軽にどうぞ!
今回は内容が薄めなので明日に1話投稿します。