あやつらを滅殺してやる
御庭外くんは僕のクラスメイトだ。
僕は福和内。御庭外くんの幼なじみ。
やることなすこと、人とは斜め下を転がり落ちるように過ぎ去っていく彼の扱いには、ほとほとあきれるというかなんというか。
それさえなければいい奴なんだけど。
そう、黙っていれば、だ。
「体育の授業で転んでひざをすりむくとか、おまえはどれだけドジっ子属性なのだ福和内よ。
おまえが属性持ちでも、キャラが薄くて萌えんわっ!」
「いっててて~。ちょ、いいって萌えなくても。ていうか、御庭外くんに萌えてほしくないよ」
「フーッ、ファッファッファーッ!
言うなあ、言いよるなあ福和内よ! その向こう見ずな負けん気根性、認めてやらんでもないぞ」
「別に嬉しくないって」
「いょうし、今からあやつらを滅殺してやろう!」
おもむろに後ろを向いたかと思ったら、向き直った御庭外くんのほっぺたが膨らんでいる。
「くらえいっ、毒壊の息吹きっ!
ブッシャーっ!」
うわっ、いきなりなにかを吹きかけてきた!
手にしていたのは……消毒液!
消毒液を口に含んで、僕の怪我をしたひざに吹きかけたんだ!
「どぉうだあー!」
いや、どうだじゃなくてさ、ひざどころか体操着もビショビショだよ。
だいたい消毒液は口に含んじゃダメだろ。
飲んだらダメなやつだろ。
飲み込んだら牛乳飲んですぐに内科に行くレベルだろ。
その気持ちはありがたいけど、普通でいいよ普通で。
そしてそのドヤ顔……。
しかも相変わらず効果音付き。
「もう、うるさいよ御庭外くん。ひざじゃなくて頭が痛くなってくるよ」
「フーッ、ファッファッファーッ! そんな軟弱な肉体と精神は鍛え直す必要があるなあ福和内よっ!
ようし、腕立て一〇〇回だっ!」
「ひざをすりむいているのに腕立てとか、そういうのやめてよ」
「なあにを言っている! 腕立てなのだからひざなんぞ初めから付かんぞ!
そうだあ、俺様は誰にも屈せぬ! ひざを付かぬっ! フーッ、ファッファッファーッ!」
「まったくどこの覇王だよ……。
はあ、静かにしてくれないかなあ……」
気持ちはありがたいよ、気持ちは。
それに、気にしてくれたこと自体はありがたいさ。
そう、黙っていれば、だ。