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指一本で止めてやる

 御庭外おにわそとくんは僕のクラスメイト。


 身長もそれなりにあって細マッチョな感じだから、歩いていてもそれなりに様になる。

 でも彼は歩いているだけで、俺様になるっていう特殊な性格をしているんだ。


 それさえなければ、いい奴なんだけどね。


 そう、黙っていれば、だ。


 僕は御庭外くんの幼なじみの福和内ふくわうち。切っても切れない腐れ縁。


「相変わらず、雲霞うんかの如くやってくるな」


 御庭外くんは次々と過ぎ去っていく車を見る。

 幹線道路だからね、交通量はハンパないよ。

 特に朝は通勤とか運搬とか、まあいろんな車が通るよね。


 一応歩道と車道はガードレールで分けられているから大丈夫だと思うけど、それでもすぐ隣を大型トラックとかが猛スピードで通り過ぎる時にはヒヤッとするな。


 御庭外くんの家は隣だから毎朝こうして一緒に通学しているんだけど、それでも御庭外くんは常に新しい驚きを提供してくれるよね。


「だが案ずるな福和内よ。この俺様が行き交う有象無象どもを能力で止めてやろう」

「だ、だめだよ御庭外くん! 車の前に出ちゃ危ないよ」

「なあにが危ないことがあろうか。どんな凶悪な物体でも、俺様の行く手を遮ることは許されないのだっ!」

「だめだって、かれちゃうよ、交通事故だよ、明日にはここに花束が置かれちゃうよ、来年には立て看板で死亡事故発生現場って書かれちゃうよ!」


 僕が慌てて引き留めようとしても、御庭外くんは自信ありげな顔をしてこっちを見ているだけだ。


「そこまで言われたら俺様も引くわけにはいかないな。轢かれる前に引くなどとは天が許してもこの俺様が許さない!

 いいだろう!」


 御庭外くんは僕に向かって人差し指を立てる。


「指一本、指一本でこの鉄の塊どもを止めてやろう!」


 そりゃあ、交通事故にでもなったら周りの車は止まっちゃうだろうけど。

 なにも自分から飛び込むことはないし、人間と車の対決なんて結果は見えているし。


 ていうか、そのニヤニヤ顔がイラッとする。


「ぬぬぬ……」


 御庭外くんが立てた人差し指に念を込め始める。

 超能力? いやまさか。


制止リストレイント人差し指(インデックス)っ!」


 御庭外くんが指を振り下ろし、ある一点に向かって突き伸ばす。


「フーッ、ファッファッファーッ! 見たかっ、俺様の意思で世界を動かすっ!

 これぞまさに奇跡の力っ!

 来いっ、海を割って進む者が如く、この鉄の波が止まっている間に対岸へ渡るぞっ」


「なんだい御庭外くん、モーゼが海を渡った時の奇跡でも言っているのかい」

「ふん、所詮奴は十回しかできなかったのだろうが、俺様は百回でも千回でもこの奇跡を起こせるのだぞ」


 いや、その十回じゃなくて、十戒なんだけど。まあいいか。


 青になった手押しボタン信号が変わる前に、横断歩道を渡っちゃおうか。

 何も言わないでただボタンを押せば普通だったのにね。


 そう、黙っていれば、だ。

この話の後、押しボタン式信号を見たら、つい……。

なんてことになりますやらどうやら。

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