アクなんぞは殲滅してやる
久しぶりの御庭外くん。
今回はどんな振る舞いなのでしょうか。
御庭外くんは僕のクラスメイト。
その言動がずば抜けて飛び抜けているんだ。
それがなければいい奴なんだけど。
そう、黙っていれば、だ。
「フーッ、ファッファッファーッ!
見よっ。生き物の死体をバラバラにし、その肉を鋭い刃物でそぎ落としていく。
しかもだ、それを自分ではやらず、自分の手は汚さず。俺様はその結果だけを受け取る。
なんとも卑怯で素晴らしいシステムではないか。
そして既に薄く削ぎ落とされた肉片を俺様が更に切り刻んでいくのだ!
かつて生きていた物の死骸を、これでもかと切り刻むのだ!」
また始まった。
僕の名前は福和内。御庭外くんの幼なじみだ。
鋭利な刃物、うん。確かにね。
動物の死骸。まあ、そうも言えるよね。
まったく、御庭外くんは豚の細切れ肉を一口サイズに切り分けていくけど、なにか気持ち悪いことを言っているんだよなあ。
食欲なくすなあ。
「次だっ! 地の底に埋まる命の繋ぎ手を引きずり出し、皮を引き剥がすのだ。
口がきけない相手にも容赦はしない。
俺様の左手がお前を押さえる。お前は抵抗もできずにこれから起こることに怯えているのかもしれんなあ!
んん~、なんだそのメは。そのメが気に食わぬな。まずはそのメを抉り取ってやる。
そのままにしては、俺様に仇なすことになるかもしれないからなあ!」
いようし、メの次は皮だ。俺様の右手に持った鋭利な刃物がお前の生皮をゆっくりと引き剥がしていくのだ。それ、一枚一枚、生きながらにして皮を剥ぎ取られる気分はどうだあ!」
御庭外くん、なにかジャガイモに向かってつぶやいているけど、包丁を上手に使ってジャガイモの芽を取って、皮を剥いていっている。
でも、言葉のアレ加減とは違って、手先はなかなか細やかな動きをするし、御庭外くんが剥くジャガイモの皮は、向こうが透けて見えるくらいの薄さっていうのがすごい。
「そしてだ! 俺様の目の前にアクは存在してはならないっ!
アクは葬り去ってやるのだ!
フーッ、ファッファッファーッ!」
そうだね、煮込んでいるところの灰汁は取ろうね。
いっぱい浮いてくるからね。丁寧にね。
「見たかっ! アクは殲滅された!」
うんお疲れ様、御庭外くん。
感動に打ち震えているね。
目にはうっすら涙が光ってるね
あとは味噌を入れてひと煮立ちしたら豚汁の出来上がりだね。
きちんと面取りしているから、ジャガイモも均一に煮上がっているし、アクがないからスッキリした仕上がり。
それでいてニンジンやゴボウとかの素材の風味を生かしつつ、ダシの旨味も効いている。
調理実習でもきちんとやる。それが御庭外くんのいいところなんだよね。
そう、黙っていれば、だ。
一度完結としましたが、このところ続けてご感想をいただくことがあり、再度扉を開けた次第です。
お楽しみいただけたら幸いです。




