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人生最後の夏休み  作者: 鬱津 憂
4/5

出発 出会い

僕は8月10日、父親が住んでいる都会に行くため新幹線に乗っていた。


毎年夏休みに、父へ会いに行くのは恒例行事となっている。


しかし、今年は初の試みをした。


去年まで僕は、母親の付添で父親へ会いに行っていたのだ。


最近は物騒だから、ということで同伴されていた。


僕は齢十七にして、初めて一人で新幹線というものに乗る。


出発の時刻は7:00丁度、送り迎えは母にしてもらう。


送り迎えとはいっても、僕は帰ってくる気は無いので迎えは不要なのだが。




7:00、予定の時間ピッタリに「こだま」は駅に到着した。


「こだま」といっても、外観はこだまのそれではなく、


大阪~東京間を約2時間で結ぶ化け物じみた列車のものだ。


カワセミの様な先頭車両と、独特なカラーリングは僕の少年心をくすぐる。


どうやら「こだま」というのは


「東海道新幹線の東京駅~新大阪駅間、および山陽新幹線の新大阪駅~博多駅間で運転されている特別急行列車の愛称」(http://ja.wikipedia.org/wiki/こだま_(列車)より)


だそうだ。




僕の席は16両編成の16両目の通路側、幸運なことに隣の窓際の席は空いていた。


よって、僕は山ばかりとはいえ景色を楽しむことができた。


隣が空いているというのは、僕を心細くもするし、少し大人っぽくもしてくれた。



駅を二つほど過ぎ、景色にも飽きてきた僕は、


この日のために用意したライトノベル10冊のうちバックから3冊を取り出し、


前の席の背からテーブルを降ろして、2冊積んだ。


「さて、どこまで読めるか」




父のところまで後4駅、8回目に新幹線が駅に留まった時だった。


「ねぇ、そこの君」


「………」


「ちょっと」


「は、はい」


本に集中していて全く気付かなかった。


僕は慌てて声を掛けらた方向、つまり通路側に顔を向けた。


そこには、ほんの少し現実離れしたように綺麗な顔立ちの女の子が立っていた。


長い髪は腰付近まで伸ばされており、その黒曜石を思わせる艶からは、彼女の髪に対する気持ちを物語っていた。


どうしてそんな美少女が僕に話しかけてくるのか、そんな疑問は直ぐに解決した。


「あ、隣ですか?すみません、どうぞ」


そう言って、僕は足元に置いていたバックを膝の上に載せ、


その上にテーブルに積んでいた本二冊を移動させ、


それらを積んでいたテーブルを上げて奥へ進むための通路を確保する。


「すみません」


そう言って会釈とほのかに甘い香りを振りまきながら僕の前を通る少女。



死ぬ前にこんな綺麗な娘の隣に座れたのはラッキーだな。



僕はそんなことを思っていた。


だが、それが大きな間違いであることは、直ぐに発覚する。


列車が発進し、丁度駅を完全に抜けた時だ。


「君……名前は?」


「聞いてる?君、名前は?」


息がかかるくらいの耳元でそう言われた。


「あ、僕ですか」


なんなんだろう、この人。


内心そう思いながらも、僕は名乗った。


何故か自然に、躊躇いもなく名乗った。


「そう、良い名前ね。私の名前は曽根美夏そね みか


ラノベとか読んだりするのかな?


常人の少し斜め上を行く僕の疑問は、少女――曽根美夏の次の言葉によって木端微塵に砕け散った。


「突然だけどあなた、近いうちに死のうとしてるでしょ?」


「え?」


名前を訊いたのにもかかわらず、「あなた」呼ばわりとは。


何の為に名を訊いてきたのか。


ただの好奇心なのか。


そんなくだらないことを考えつつ、僕は彼女と会話することを選んだ。


「えっと…あー……」



言葉が出なかった。



「あなた、死にたいんでしょう?」


「なんd


「分かるもの、あなたには死の色が出ているもの」


「死に色なんてあるのか……」


「比喩よ」


「あぁ、そうですか」


「簡単に言うと、死ぬ人が持っている独特の雰囲気」


「は、はぁ」


「で、死ぬんでしょう?」


僕は答えることを躊躇った。


しかし、答えようと答えまいと結果は変わらないだろう。


僕は聞き手に回った。


ミステリアス?な美少女の前に、ただ単に言葉が出ないからだ。


「一つお願いがあるのだけれど」


「なんでしょう」


新手の恐喝か?僕は思った。



「私と一緒に死んでくれない?」



僕の予想は、ある意味では当たっていた。


出来れば当たってなど欲しくはなかったのだが。



「えー、あの……」



「私と一緒に死んでくれない?」


「……」


僕は自由席にすればよかったと後悔した。

こだま、毎年お世話になってます。

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