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人生最後の夏休み  作者: 鬱津 憂
2/5

決心 旅の死おり

別に「自殺はいいよ」と言っているのではありません

よし、死のう。



そう思ったのは、その日の授業の一発目。


シャーペン片手に居眠り中のバカを視界に入れた時だった。



口に出していたら、新任の先生を含む教室の全員が僕を凝視したことだろう。


*****


生きていればいいことだってあるさ。



死んだら何も残らない。



人は皆何時か死ぬもの、焦る必要なんてない。



どうせ何時か死ぬんだし、別に今すぐに死んだってかわりゃしない。



生きていられる時まで精一杯生きよう?



精一杯生きたって、死ぬときゃあっさり死ぬもんだ。


志半ばで悔やみながら死ぬよりか、踏ん切り付けてさっさと死んだ方が賢くないか?



身も蓋もない。平行線だ、自分でもそう思った。


だが、僕にはもう迷いは無かった。




まず、いつ死ぬのか。


これは直ぐに決まった。


高2の夏休み、死のう。


多分、僕が輝ける最後の時だろうから。


日付は8月の15日にしよう。そんな歌もあったし、丁度曾祖父の命日だ。


別に運動部に所属しているわけではない。


パソコンをいじる程度の、同好会の様な文化部に所属している。


無論、長期休暇も部活に殆ど行く日は無い。


思い立ったが吉日、とは言うが、その日は高2の4月中頃である。


時間が、ない。



家に帰ってカレンダーを確認した。


死ぬべき日まであと114日。


計画を、立てなければ。



まず、死ぬまでにやっておきたいことを書き出した。


・実況プレイ動画の作成

・腹違いの妹がいることを親友に話す

・ネットカフェでオンラインゲーム(SPF)をする

・作っていないプラモデルの消化


・遺書っぽいものを書く

・父親と話をする

・一人でカラオケボックスに行く

・PCの中の、見られたらヤバいものを始末する


こんなところか。


それにしても、



「う~ん、パッとしねぇな」


完全にオタクのそれである。



それからの僕は実によく生きた。



したいことを書き出し、絞ったからだ。


だが、一番は、自分の命に明確な期限を設けたことだろう。


僕はいつも、追い込まれないと本気が出せない。


死ぬ日を自分で決める。


それは僕にとって、究極の最終手段だった。


勉強は相変わらずだったが、自殺を悟られないように、


いつものように、楽しげに学校生活を消費していった。


その裏で何をどの順番で何日にするのか、細かなスケジュールを創った。


言わば、「旅の死おり」だ。


これを作っている時が、人生で一番楽しかった。


そして死を決心した日から何日も経った、台風が僕の住んでいる地域を逸れ、そのまま北上していった日本晴れのある日。


「できた」


死おりが完成したのは、期末テストの直前。夏休みの2週間ほど前だった。

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