魂収集活動
小さな暗い部屋で、私は一人、膝を抱えて座っている。
まわりには、白く、ふわふわしたものが、たくさん、たくさん舞っている。
私にしか見えないというわけではないらしいのだけど、見える人はかなり少ない。
私は、これが見えるせいで、この部屋に閉じ込められている。
足には鎖が巻きつけられて、この部屋から出ることを防いでいた。
今日も独りきりだと思ったけど、今日からは違うようだ。
男の子が、一人、私の横に座っていた。
「こんにちは」
笑いかけながら、私に言った。
「こ、こんにち…は」
あまり話すことをしないので、声がかすれてうまくでない。
それでも、この子のことが知りたくて、聞いてみた。
「きみは誰?」
「僕は、アイードだよ。君もあれが見えるのかい」
アイードは、白くふわふわしたものを指さしながら言った。
私はうなづく。
「そっか、やっぱりね」
「やっぱりって、どういうこと」
「君は、いつからここにいるの」
「わかんない。覚えている限りでは、ずっと昔から」
「そっか」
それから彼は近くに漂ってきていたそれを手に取って、私に見せた。
「これは、魂なんだ。僕たちは、この魂を見ることができる、特別な力を持った子供たちなんだよ」
「タマシイ?」
私はアイードに聞き返す。
「そう、魂。人は死んでも、この世界にとどまったりすることがある。僕たちは、その魂を見つけて、回収して、ある人へ送ることもできるんだ」
「ある人?」
私は聞いたことがない話ばかりを、一気に聞かされて、何を言っているのかさっぱりだった。
「神様さ。明日には、一緒にここを出て、新しい建物へ移ることになる。そこで、その人と出会うことになっているんだ」
「私そんな話、聞かされてないよ」
「そりゃ、トップシークレットだからさ。訓練次第で、こんな感じに相手の考えを読み取ることもできるようになるんだ」
そうやって、自慢げに私に話しているアイードは、とてもよく見えた。
翌日、白衣を着た人たちが私の鎖をほどいて言った。
「お前たちには、別のところへ移ってもらう。そこで、最終的な決定がなされる」
言いたいことはそれだけらしく、それきり何も言わなかった。
「ついてこい」
それだけ言うと、私たちなど気にもしていないように、速足でいかなければ追いつけないようなスピードで歩いた。
「サイン神、お連れしました」
「下がれ」
サイン神と言われた人は、普通のスーツに身を包んで、私たちを出迎えてくれた。
私とアイードとサイン神だけになると、微笑みかけながら、私たちに言い切った。
「君たちには力があるようだ。その力を、この世界、いや全ての宇宙のために使ってくれ」
「どういうことですか」
「君たちに拒否権はないが、一応説明をしておこう。君たちの魂が見えるという能力は、私にとって非常に重要なものだ。この世界に残っている魂を、すべて回収することが最も適切な方法ではあるが、私一人では、到底手が足りない。そのため、君たちのような魂が見える人たちを集め、私の代わりに魂を集めてほしいというわけだ」
「…俺たちに何かあるんですか」
「ああ、もちろん。君たちには、この世界すべて、どこへでも行くことができる権限が与えられる。さらに、好きな人と、おそらく君たちは二人で行動するだろうが、共にすることができる」
「…拒否権がないのであれば、なぜおれたちに聞くんです」
「手続き上の問題だ。さて、これが君たちのIDだ。これさえあれば、どこへでも、最優先で輸送してくれる」
手のひらに収まるような少し厚い硬い板を、私たちにサイン神は渡した。
「では、健闘を祈る」
私たちは一瞬で外にいた。
こうして、私たちは、私たちがいる宇宙全土に散らばっている魂を集める旅に、二人で出かけることになった。
いつまでも、二人で。