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魄、落つる  作者: 高原 景
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 屯所の屋上からシンカゲは夜に浮かび上がる街を見詰めていた。夜風に撫でられて鍛練着が揺れる。カガリの屋敷に灯る明かりを探したが、光の群れの中、どれが屋敷のものかはわからなかった。

「シンカゲ、ここにいたか」

 ムラセの声に、シンカゲは振り返らなかった。シンカゲの傍らに座ったムラセが、「落ち込むといつもここに来るな、シンカゲは」と、心地良い風に目を細めながら言った。

「落ち込んではいない。自分自身に腹を立てているだけだ」

「似たようなものだろう」

「放っておいてほしいんだがな」

「そうしたいのはやまやまだが、聞きたいことがあるのでね」

 溜息をついてシンカゲはムラセを見やった。「何だ」問えば、ムラセは落ち着いた声音で言った。

「スイレンとシンカゲが昼間に話していたことだが……クジョウが逃げようとしただとか、カガリがクジョウの自由を返さないだとか。あれはどういうことだ」

 そういえばそんなことをスイレンと言い合ったな、とシンカゲは思う。半日程前のことだが、まるで遠い昔のことのようだ。

「それは言えない」言い逃れなど最早無理だと悟ったシンカゲの物言いは、簡潔であり取りつく島がなかった。ムラセは不満をあらわにしたが、こうと決めたら梃子でも動かないシンカゲの性格をよく理解している。ぶつぶつと不平を漏らしたが、それ以上問いはしなかった。暫く無言で街を眺め、ムラセは再び口を開いた。

「クジョウがだということがそんなに受け入れ難いか?」

 まるで幾度も練習した言葉のように、ムラセが澱みなく言った。シンカゲは組んだ腕に顎を埋める。目を細めると、灯火が曖昧に滲んだ。問いへの答え同様、掴み難い。

「正直に言うとね、私はクジョウのことをまるではくのようだと考えていた。無論、本当に魄だとは思いもよらなかったが」

 驚いて顔を振り向けたシンカゲに、ムラセが笑む。

「魄の魂が天上の花だというリラの言葉に、私は賛成だ。一度その美しさに気付けばどうしても目が離せなくなる。今でさえそう感じるのだから、魄となったクジョウはどれ程に美しいだろうな」

 シンカゲは不機嫌に口を曲げた。クジョウの美しさに気付いていたのは何もお前だけではない、と言いそうになり、言葉を呑み込む。一人の女性を巡っての恋の鞘当てでもあるまいし、そのようなことを言えばムラセに笑われるだけだろう。実際、笑われても仕方ない、と思う。ムラセに言われるまで、シンカゲは疑いもなくクジョウを少年だと思っていたのだから。その美しさに気付いたのもつい最近である。

「岐だからと言って、クジョウに酷い態度を取るなよ」

 低くムラセが言った。それにシンカゲは思わずかっとする。鋭い口調で返していた。

「そのようなことを俺がすると思うのか!?」

「普段のシンカゲならば、そうそう感情にのまれることはないとわかっている。だが、魄のこととなると、シンカゲは冷静さを失う。クジョウを悲しませるような態度を取るくらいなら、冷静になれるまでクジョウには会わない方がいい」

「何故ムラセにそのようなことを言われなければならない。俺はクジョウを守ると決めたんだ。クジョウが岐であろうとなかろうと、その気持ちは決して変わらない」

 ムラセは束の間シンカゲを見やる。

「ほら、既に冷静じゃない。クジョウを守る、というのは誰からだ? 北方きたかたか? 魄を狩る人間からか? それとも、カガリか?」

 シンカゲは言葉に詰まった。秘密の一旦を漏らしてしまったことに気付く。大きく息を吸い、そして一度に吐き出した。

「そうだな。俺はまだ冷静にはなれない。気持ちの整理がつかないんだ。クジョウが男ではないと知っても、さほど動揺しなかったのにな。男だろうが女だろうが、クジョウはクジョウに変わりないだろう、と……。だが、岐であると言われたらこのざまだ。自分でも情けない。クジョウにどう対すればいいのかわからない」

「本当に馬鹿だな、シンカゲは」

 呆れたようにムラセが言った。どういうことだ、と憮然としたシンカゲに、対する相手は複雑そうな眼を向ける。

「シンカゲがそんな風では、私もなかなか諦めがつかない」

 それとも諦めるのはまだ早いか、と、これは聞き逃しそうなほどの呟きだった。シンカゲは顔を顰める。

「何のことだ」

「わからなければいいんだよ。むしろ、その方が私には望ましい」

 意味深に言うと、ムラセは星空を仰いだ。問い詰めようとしたシンカゲだったが、戸口にあらわれたスイレンの姿に言葉を呑みこんだ。

「やはりここにいたか。落ち込むといつもここに来るな」

「どいつもこいつも」とシンカゲは独りごちる。だが、次の言葉に顔を引き締めた。

「クジョウが目を覚ましたよ」



 クジョウは目を開けると、ぼんやりと天井を見詰めた。医療所の寝台で目覚めたのは三度目になる。そのため、そこが医療所であることはすぐにわかったが、何故自分がそこで寝かされているのかがすぐにはわからなかった。

 また倒れてしまったのだろうか。そう思い、いいや違う、と思い直す。

(リュウドウから逃げた筈だ……)

 そこまで思い、クジョウは息を呑んだ。記憶が一度に蘇る。汚れた街角で北方の男達に捕われたこと、暗い地下、暴力への愉悦に歪んだ男の顔――押さえつけられた地面の冷たさ、そして振り翳された小剣。

 蘇った恐怖が悲鳴となって零れ落ちそうになり、クジョウは両手で顔を覆う。その動きに敷布が微かな音をたてた。

「クジョウ、気付いたのね」リラの声。二つの足音が重なり、一つは遠ざかり、あとの一つは駆け寄ってくる。優しい手がクジョウの頭を撫で、髪を梳いた。

「もう大丈夫よ、クジョウ。怖い男どもはどこにもいないわ」

 クジョウは手をおろすと、リラを見上げた。柔らかく灯る明かりに、夜であることがわかった。

「覚えている? シンカゲ達があなたを救い出したの」

 クジョウは小さく頷いた。戸口に立つシンカゲの姿を、その顔に浮かんでいた凄まじい怒りの形相を思い出す。容赦なく男を痛めつける姿に感じた身が縮むような恐怖も――。

「……どうして、シンカゲはあそこに……?」

 己のものとは思えぬ細い声に、クジョウは言葉を切る。そして不意に目を見開いた。いまだ中途半端に翳したままだった己の右手を見やる。記憶に生々しい痛みが、どこにもない。掌は滑らかな肌に覆われ、刺し貫かれた筈の傷が消えていた。

「傷が……」

「体のどこにも傷は残っていないわ。その掌の傷も、シンカゲ達の話ではみるみるうちに塞がっていったということだけれど、覚えていないかしら?」

 茫然とクジョウは首を振った。気を失う前のかろうじて残っている記憶は、わきあがった熱の塊に、体が燃え上がりそうな程の熱さと苦痛を感じたことだけだ。

 リラは注意深くクジョウの様子を見詰めていたが、「シンカゲ達がクジョウを見つけたのは、あなたの蠱が導いてくれたからよ。それも覚えていないの?」と、問うた。クジョウは再度首を振る。

「俺は……蠱にそのようなことは頼まなかった……」

 正確には蠱を使うということすら思いつかなかったのだが、例え蠱の存在に思いが及んでもシンカゲを呼ぶなど考えはしなかっただろう。そう思い、クジョウは戸惑う。蠱は主の思いによってしか動かない。つまり、心の底のどこかでシンカゲに助けを求めていたということだろうか。

「ねえ、クジョウ。あなたが岐だということを、シンカゲとスイレンとムラセに伝えたの」

 リラの言葉はあまりにさりげなく、あまりに唐突だった。咄嗟に何を言われたのかがわからなかった。じわじわと言葉の意味を理解し、クジョウは弾かれたように身を起こした。力の入らない体がくず折れそうになるのを肘をついて支え、クジョウは茫然とリラを見詰めた。リラが手を伸ばそうとするのを、反射的に後ずさって避ける。リラは束の間悲し気な表情を浮かべたが、変わらぬ穏やかな口調で言った。

「あなたが岐だということを、私は大分前から気付いていたのよ。本来ならあなたに無断で人に明かすようなことはしたくなかったけれど、今はそうも言っていられないの。シンカゲ達はあなたの傷が消えるのを目の前で見てしまった。それに、あなたに酷いことをした北方の男も。男はいまだに捕えられてはいないわ。有力商人のクマガヤのところに逃げ込んで東方ひがしかたでは手出しが出来ないの。男が見たことを人に言えば、あなたが魄であると考える人間が出てくるかもしれない」

 クジョウは吐き気を覚えて手を握り締めた。動悸が激しくなる。わき起こったのは紛れもなく恐怖だった。リラが差し出した手を、今度は避けなかった。避けることが出来なかったのだ。体が小刻みに震える。あやすようにリラがクジョウの背中を撫でた。

「落ち着いてちょうだい、クジョウ。怖がらそうとしているわけではないの。あなたはこれまでのように一人でいてはだめだと、そう言いたいだけなの。誰もがあなたを脅かすわけではないわ。あなたを守ろうとする人間もいるの」

 ねえ、そうでしょう? と、これはクジョウに向けられた言葉ではなかった。クジョウは医療所の戸口に目をやった。そこに、スイレンとシンカゲ、そしてムラセの姿があった。何時からそこにいたのか、クジョウにはわからなかった。

「なんてこった……そのことをすっかり忘れていた。あの男も傷が塞がったところを見ていたんだ。クマガヤがまともに取り合わなければいいが……」スイレンが呟く。それにリラは首を振った。

「クマガヤが男を匿ったのが単にカガリへの当てつけならばいいけれど、クマガヤは欲深いだけの愚かな人間ではないと思うの。男を匿ったのは、何がしかの利があると考えたからに違いないわ。男の話を聞いて、例えクジョウのことを魄とは思わなくても、傷を癒す能力を有する人間と知れば、興味を抱くでしょうね」

 シンカゲ達の表情がみるみる険しくなる。一方のクジョウは、リラの思考に驚きを感じていた。僅かに恐怖が遠ざかったくらいである。どうやらリラが優れているのは、癒す方面だけではないらしい。

「ねえ、シンカゲ。クジョウを屯所で預かることは出来ないかしら?」

 え、とクジョウは目を見開く。シンカゲも驚きに目を瞠っていた。

「だって、カガリの屋敷ではやはり不安じゃない? クジョウの体調も不安定だし、ここにいた方が何時でも診察が出来るもの。それに、クマガヤが万が一クジョウに興味を持っても、東方の屯所にいれば手出し出来ないわ」

「……それもそうだな」沈黙の後、ぼそりとシンカゲが言った。

「クジョウも、それでいいでしょう?」顔を振り向けられてクジョウは言葉に詰まる。まだ頭がリラの言葉に追いつかない。一体眠っている間に、何があったのだろう。起きてみれば、頑なに秘していた秘密は暴かれ――おまけにリラは随分と前からクジョウが岐であることに気付いていたと言う。そしていつの間にかリュウドウに留まることが定められつつある。漸くクジョウは言った。

「でも、俺はリュウドウを出るつもりなんだ」

 シンカゲとスイレンはとうにクジョウが逃げようとしたことに気付いているだろう。後ろめたさに、クジョウは顔を伏せた。

「だめよ、クジョウ。医療者としてそれは認められません。体の不調のこと、私が気付かないわけがないでしょう? そんなに不安定な状態で出て行って、途中で覚醒でもしたらどうするつもりなの? 無関係な人を巻き込んでもいいの?」

 益々クジョウは答えに詰まる。一体リラはどれ程のことに気付いているのだろうか。

 体の奥に生まれた熱が、魄の力であることはもはや疑いはないが、耳飾りがあれば覚醒が抑えられると、クジョウはいまだ縋るように信じていた。それでも危険であることには変わりない。確かに旅の途中で覚醒することは避けたいが、そもそもリュウドウにいても等分に覚醒の危険はある。むしろこのような街で覚醒した方が被害は大きい――そう思ったが、リラの厳しい眼差しに思いは言葉になる前に縮こまってしまう。

 何とか言葉を押し出すが、自分でもまるで叱られた子どものように情けない口調に思えた。

「大丈夫だよ。俺は覚醒はしない」

「どうしてそう言い切れるの?」クジョウは緩く頭を振った。その拒絶に、リラは柔らかく笑むと、クジョウの腕をさするようにして撫でた。

「今日は休んで、そして明日また話しましょう。体のこと、クジョウもきっとわからないことが多い筈よ。そういう時は本職の者に任せなさい」

 リラは寝台から離れると、戸口の三人を振り返った。

「何か話したいことはある? ただし、あまりクジョウに負担をかけては駄目よ」

 言われた三人は戸惑ったように顔を見合わせた。スイレンが煮え切らない男達を睨みつけると、寝台に近付く。己を見上げるクジョウに仏頂面で告げた。

「逃げようとしたことだが、カガリには伝えていないよ。クジョウにも色々と事情がありそうだしね。ただし、今後逃げようとしたら承知しないからね」言いながら、きらりと眼が光る。どこか可笑しそうに笑みを浮かべて続けた。

「明日から兵士達がクジョウにどう接するか見物だね。クジョウが女だということが、取り調べの過程で屯所の連中にも広まってしまったからね。まあ、心しておきな」

「そんな……」思わず声を上げるクジョウを尻目に、スイレンは素知らぬ風で医療所を出て行ってしまう。ムラセがそんなスイレンに苦笑し、クジョウへと近付いて来た。柔らかな眼差しにクジョウは目を瞬く。

「クジョウ、男だろうが女だろうが、クジョウはクジョウだからね。今までどおりでいいんだよ」

 包み込むように穏やかなムラセの言葉だった。ムラセの背後で何やらシンカゲが毒づいたようだったが、生憎とクジョウには聞こえなかった。

「ゆっくり休むんだよ」そう言うと、ムラセもまた医療所の戸口へと向かう。どこか憮然とした表情のシンカゲの肩を一つ叩き、ムラセは廊下へと出て行った。

 残されたシンカゲは、躊躇うようにクジョウを見詰めている。クジョウはもぞもぞと体を動かして、寝台に寄り掛かるように座りなおした。中途半端な姿勢が、力の抜けた体に辛く感じ始めていたのだ。シンカゲは不意にがしがしと頭をかき――それが困った時のシンカゲの癖であることにクジョウは気付いていた――椅子を掴み寝台の傍らに置くと、腰をおろした。クジョウの目を見詰めて言う。

「今度リュウドウから逃げたいと思ったら、俺にちゃんと言ってほしい。今回のように突然いなくならないでくれ。俺はクジョウに自由を返す。この気持ちに嘘はない。俺をもう少し信じてくれ」

 無理かもしれんが、と小声で付け加える。それに、クジョウは俯き頭を振った。唇を噛み締める。涙が零れそうだった。

「それから、昨日の夜、俺の家族が魄に殺されたと言ったが、それはあくまでも俺個人の問題だ。もしかしてリュウドウを去ろうとしたのが俺の言葉のせいもあるなら、俺の家族のことはクジョウには何の関わりも責任もないことだ」

 クジョウは何も言うことが出来なかった。地下で男への怒りをあらわにしたシンカゲの顔が、再び脳裏に浮かぶ。あの時何故あれ程恐怖を感じたのか、クジョウは漸く理解していた。魄を憎むシンカゲが、クジョウが岐であると知った時、あのような表情を向けるのではないかと――それがただひたすらに怖かったのだ。今も、まだ恐れている。クジョウにはシンカゲが魄への憎しみを依然として抱いていることがわかった。抑えた口調に、秘めた気持ちが滲んでいた。

 シンカゲの声音が低くなった。

「今回の一件は、全て俺のせいだ。北方の連中が俺を狙っていることを知りながら、例え奴らが何か仕掛けてきてもどうにかなると高を括っていた。事前に対処をしなかった俺の落ち度だ。巻き込んで、本当にすまない」

 言うや、シンカゲは頭を下げた。膝の上でシンカゲの拳に力が込められるのを、クジョウは見詰める。

「シンカゲのせいじゃないよ。俺が迂闊だったんだ。あの時、他に気を取られて、男達に気付くことが出来なかった」

 声が震えないよう、注意深く言う。シンカゲは頭を上げると、強い眼差しを向けた。

「それから、この先、このようなことが万が一あったら、自分を守ることを最優先にしてくれ。俺のために自分を犠牲にするような真似はやめてくれ」

「別に犠牲になんか……」

「捕えた男達から聞いた話では、クジョウは挑発的な言葉を相手に言っていたらしいな。敢えて相手を怒らせて、奴らの俺への怒りを自分に向けようとしたんじゃないのか?」

「……」

「今回は蠱を送ってくれたから良かったが、間に合わなければどうなっていたか」

 蠱は送っていないと、クジョウは言えなかった。深い意識の底でシンカゲに助けを求めたかもしれないなどと、言えよう筈もないではないか。こうしてシンカゲと対しているだけで、涙が零れそうになる――その気持ちを気取られたくなかった。

 五人の男達をあっという間にのしたシンカゲの姿を思い出し、クジョウは肩を落とした。ただシンカゲを呼び出させてはいけないという、その一心だったが、結局シンカゲに救われることになった。シンカゲの厳しい表情に、唇を噛み締める。地下で感じた無力感が、またも込み上げてきた。

「そうだよな。結局、俺には何も出来なかった」

「クジョウ、そういうことを言っているんじゃない。今回のようなことがまたあったら、俺の心臓がもたない」

「うん、ごめん。迷惑をかけて」

「だからだな……そういうことではないんだ」

 シンカゲの声音に混じる困ったような響きに、ではどういうことだろう、とクジョウは顔を上げた。シンカゲは言葉を探しあぐねるように視線を彷徨わせ、小さく溜息をついた。

「とにかく、あんな思いは二度としたくない」

 それだけを言うと、シンカゲは立ち上がった。クジョウの眼差しに僅かに気まずそうな様子を見せ、シンカゲは足早に医療所を出て行った。その背中を見詰めていたクジョウは、傍らから響いた笑い声に視線を転じた。何が可笑しいのか、リラが楽し気に笑っている。

「どうしたんですか?」

 きょとんとして問うたクジョウに、「何でもないわ」と一言、いまだ笑みを滲ませながら続けた。

「さ、もう寝なさい。私は隣りの寝台で寝るから、何か辛く感じたら呼んでちょうだいね」

 気にかかることがあまりに多過ぎてこのまま眠る気にはなれなかったが、クジョウはおとなしく頷いた。そして横になって暫くすると、体の欲求に抗えず、混乱の渦の中から夢も見ぬ深い眠りに落ちて行った。

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