初期症状
今思えば、あれが初期症状だったと思う。
ちょうど二人目が産まれたばかりだった。
上の子は二歳。
産まれたばかりの赤ちゃんにまだ戸惑いを見せる歳。
赤ちゃんの顔を覗き込みほっぺを触る長女、スヤスヤ寝ている長男を見て、きっと幸せを感じる時だったと思う。
あの時の私は、抜け殻のように何の感情もなく、ただただ見つめていた。
かわいくなかったわけではない。
夜中の授乳、日中の子供二人の世話、まだ産後一か月経っていなかったから、少しだけの家事に、体力と精神が無くなっていったからである。
夫は何もしてくれなかったわけではない。
仕事から帰ってくると、晩御飯を作ってくれ、子供たちをお風呂にいれてくれた。
私がお風呂に入っている間に、子供たちの寝かしつけまでやってくれていた。
でも、疲れて子供たちと寝落ちをしてしまう。
そりゃそうだ。
仕方のないことだった。
そう思っていても、たまには私の話を聞いてくれて、時々一緒に大好きなアイスを食べながら、夫婦の時間を過ごしてほしいのになと思っていた。
私は、完璧主義で家事は絶対自分で全部やる、几帳面で少し潔癖な所があった。
だから、産後一か月も経っていない身体で、休憩をはさみながらだが、家事はほとんどやっていた。
夜中の授乳も、一人でやり、疲れていても、次の日仕事がある夫に頼むのが申し訳なく、全部一人でやった。
でも夫が休みの日は時々だが頼むことはあった。
普段頼まないせいなのか、それとも疲れているせいなのか、夜中に起きてもらうと次の日は夫の機嫌が悪い。
それが嫌になり、いつしか頼むのも辞めた。
下の子が2,3ヵ月の時、夜中の授乳は無くなった。
朝まで寝てくれるようになったのだ。
私が、朝までしっかり眠れるようになったころだった。
上の子のトイレトレーニングが上手くいかなくなってきた。
夜はまだおむつを履いて寝ていたが、日中はパンツに変えていた。
トイレでおしっこはできるのだが、うんちができなかった。
パンツにうんちをしてしまう毎日。
上の子は、パンツにしてしまったうんちを時々触ってしまうこともあった。
お尻を拭き、一緒に手を洗い、着替えさせる。
その間に下の子は泣いたり、いたずらをしたり。
そんな毎日をしばらく過ごした。
そのころからだったと思う。
私はいつの間にか笑えなくなっていった。
その時は気づかなかったが、産後鬱になっていたのだと今は思う。
ちゃんと気づいていれば、もしかしたら強迫性障害になることはなかったのかもしれない。
夫も全く気づいていなかった。
「疲れているだけだろう。」と思っていただけなのかもしれない。
笑えなくなっていってからだった。
どんどん精神が落ちていった。
まず、家事をやる気力がなくなっていった。
洗濯機をかけるところまではできたが、洗濯物を外すのも、干すのも、やる気がなく、やるまでに時間がかかった。
乾いた洗濯物は、どんどんソファーの上に溜まっていった。
掃除は、夫が帰ってくる頃じゃないと、全くやる気はでなかった。
いくら時間がかかっても、掃除はやらないと気が済まなかった。
子育てが大変でそうなってると思ったのだろう。
夫は、「俺が洗濯物とか、掃除をするから休んでていいよ。」と言ってくれた。
でも私はいつも、「自分でやるから大丈夫だよ。」と言った。
全部自分でやらなければならない。
そう思っていたからだった。
症状は、どんどん悪くなっていった。
悲しくなって、泣くことが増えていった。
最初は、夫もそばにいてくれて、頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれたり、優しい言葉をかけてくれたりもしたが、毎日のように泣くから、いつしか夫は疲れた顔をし、見て見ぬふりをするようになった。
私が、孤独を感じるようになった時、強迫性障害の症状が出始めた。
最初は車の鍵を閉めたか心配になり、何度も確認をするようになった。
その次に、ガスがちゃんと止まっているかどうかの確認だった。
その次は、洋服に虫がついているのではないかと、何度も確認をしてからじゃないと、着替えられなかったり、たためなかったりした。
いろいろなことに対して、確認行為が出てきた。
何をするのも確認から始まる。
一分もかからないようなことに、30分~1時間かかるようになり、生活に支障が出てきた。
その頃に、やっと‘‘自分は何かおかしい。‘‘と気づき始めて、ネットで検索した。
‘‘強迫性障害‘‘
それが一番上に出てきた。




